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その時、神殿では

ユーミリア王国の王都中央にある壮麗な建物。

創世神で全能の女神であるアルティナ神を祀る『アルティナ神殿』である。

広大な敷地には、大きく分けて3つの建物がある。

一般の民が参拝するための『拝殿』

神官達が生活するための『中殿』

アルティナ神像がある『奥殿』である。


中でもアルティナ神像が祀られている奥殿には代々の神官長のみ立ち入る事が許されている、いわば聖域である。


現在の神官長は15年前に若干30歳にしてその地位に就いた。

名を『イズミール・ライディ』という。


14年前、奥殿にて祈りを奉げていたイズミールは女神像が持つ杖が強く光り輝くのを見た。

正しく『奇跡』だった。

神官長にのみ代々伝えられている口伝がある。

それは国王も貴族も神官達も知らない。


『女神の杖が輝く時、全能の女神が降誕する』


神官長は密かに降誕した女神を探し始める。


『淡い金の髪に2色の瞳』という特徴のみでの探索は困難を極めた。

特に不可侵を貫くため、王侯貴族の情報は殆ど手に入らなかった。


奇跡から7年経ったある日、とある伯爵家の使用人達が参拝に訪れた際にある噂話をしているのを小耳にはさんだ。


『ハーバリー公爵令嬢が王太子妃候補から外されたみたいよ』


『そうなの?確か公爵令嬢って凄い美少女で女神様と同じ色彩を持つって聞いたことがあるけど・・・』


(っ!?アルティナ女神と同じ色彩を持つ令嬢?一度確かめてみるか・・・)


イズミール神官長は公爵令嬢の事を調べ始めるが、中々情報が集まらなかった。

王太子妃候補であった頃なら王宮を訪れる際に偶然を装い接触できた可能性があったが、候補から外れた事により公爵邸から令嬢が出てこなくなってしまったのだ。

ハーバリー公爵が令嬢を屋敷から出さないのだ。

しかも、令嬢への面会の申し入れも全て断っているという。


(打つ手がないな・・・公爵令嬢の属性だけでも知る事ができれば・・・)


ある日、街中でとある噂話が流れているのを耳にする。


『魔法を使えない公爵令嬢がいるらしい』


『その令嬢は父公爵が屋敷から出さないらしい』

というものだった。


(まさか魔法を使えない令嬢とはハーバリー公爵家の令嬢か?)


単なる噂話とはいえ、伯爵家の使用人達の話しと街中で流れる噂話を併せて考えるとそうとしか思えなかった。


《『全能の女神』を神殿へお迎えする》

それは代々の神官長の夢である。

その夢が叶い、王家よりも強い権力を手に入れるチャンスだったが、女神と同じ色彩を持つと言われている公爵令嬢が、まさか魔法が使えないとは・・・

イズミールはがっくりと肩を落とした。


さらに月日が流れ、イズミールも『奇跡』について諦めかけていたある日、7年前のあの日と同じように奥殿で祈りを奉げていた。

すると7年前の再現のように女神像が持つ杖が光り輝いた。


「っ!?な・・・なんだ?何故また杖が光り輝いている?」


再度起こった『奇跡』に驚いた。

前回の奇跡では全くといっていいほど情報を得られなかった。

神殿が建造されてから、7年前のあの日まで『奇跡』は起こった事がなかった。

しかし、イズミールが神官長の地位に就いてから2度目の奇跡が起きた。


(何が起きる?前回得たのは、公爵令嬢が降誕した女神の可能性があったと言う事・・・そして魔法が使えないという事だけ・・・何か変化があったのか?)


イズミールはハーバリー公爵令嬢について再度、情報を集めようと決意する。

もし、公爵令嬢の状況が7年前から変化がない場合には、新たに女神探索を始めなければならない。

今回は王侯貴族を中心に情報を集めるよう手配をした。

特にハーバリー公爵令嬢の情報を念入りに集めるよう手配をする。

その中でも、魔法が使えないままなのかを・・・


(もし、公爵令嬢が魔法を使えるようになったとしたら・・・口伝通りに『全能の女神』が降誕したという事・・・)




代々の神官長に伝えられる口伝は完全なものではなかったのをイズミールは知らない。

永い年月で重要な部分が欠けてしまっていたのだ。


『女神が持つ杖が光り輝く時、淡い金の髪と2色の瞳を持って全能の女神が降誕する。

1度目の輝きは誕生を祝うため

2度目の輝きは全ての能力を得た時に』


そう・・・後半部分が欠けてしまっていたのだ。

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