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弟の決意

僕には2歳年上の姉がいるんだ。

父様と母様の見目の特徴を半分づつ受け継いでいるとっても綺麗な姉様なんだ。

ただ、僕や兄様と違って何故か姉様だけ魔法が使えないんだ。

姉様は普段はとっても明るく振舞っているけれど、僕や兄様が魔法の練習をしている所をとても寂しそうな眼差しで見ているのを公爵家にいる人間はみんな知ってる。

だから僕は姉様の笑顔を守れるようになろうって誓ったんだ。


僕が5歳で姉様が7歳だった7年前のある日、泣きそうな顔で王宮から姉様が帰ってきたんだ。

朝はとっても嬉しそうな、キラキラした笑顔で出かけていったのに。


当時の僕は知らなかったんだ。姉様が王太子妃候補の筆頭だった事も、魔法が使えないから候補から外された事も・・・


一昨日、姉様が侍女のミーナだけを連れて湖畔の別邸に避暑に出かけたら、森の中で盗賊と遭遇した。

御者のアレスが盗賊達を振り切って王都の公爵邸まで戻ってきた。

屋敷は騒然とした。父様はまだ王宮から戻ってきていなかったから、兄様が使用人達に指示を出していた。僕はただ、気を失った姉様を見てオロオロするだけだった。

母様の顔色は蒼白で今にも倒れそうだった。


連絡を受けて父様が王宮から帰ってきた。

姉様が気づいたとミーナが報告してきたのでみんなで姉様の私室へ向かう。

ベッドの中でウンウン唸っていた姉様を見て、父様と母様は血相を変えて姉様に駆け寄った。


全速で走る馬車の中で頭をぶつけたため、気を失っていたみたいだ。

他に怪我がなくて良かった。

みんなホッと胸をなでおろした。


翌日、訓練場に来るよう言われたので、兄様と一緒に訓練場へ向かう。

すると、昨日まで使えなかった魔法を姉様が使った。しかも全部で5属性もの魔法を・・・


「兄様・・・姉様、魔法使えるよ・・・しかも5属性も」


「あぁ・・・しかし、なんで急に使えるようになったんだ?詠唱もすごく短いし・・・」


「兄様・・・父様はこの事をどう思っているのでしょうか?」


「う~ん。とりあえずこれから父様の書斎に行ってお考えを聞いてみよう。ジェラルも一緒に来るか?」


「・・・いえ。僕はこれから剣の修練の時間なのです。兄様、後で父様とお話しした内容を教えていただけますか?」


「わかった。後で教えよう。」


「ありがとうございます。では兄様お願いします。」


「あぁ。修練頑張れよ。」


「はい。では失礼します。」


剣の修練が終わったので兄様の私室へ急いで向かう。

扉をノックするとすぐに返事があったので、部屋に入ると兄様が待っていた。


「兄様、お待たせしました。」


「ジェラル、早速だが父様と話した内容を教えよう。」


「はい。お願いします。」


「ジェラル・・・お前7年前にユーリが酷く落ち込んだ様子で帰ってきた時の事を覚えているか?」


「はい。覚えています。見ていて痛々しかったので・・・」


「では、父様がユーリに魔法教育を全く行っていないのは知っていたか?」


「そうなのですか?魔法が使えなくても座学くらいは行っていると思っていたのですが・・・それすらも行っていなかったですか?」


「そうだ・・・なのにユーリは魔法を行使した。それに詠唱が短かったのに気づいたか?」


「あ・・・言われてみれば確かに・・・」


「急に魔法が使えるようになった原因は不明だ。ユーリが7年前酷く落ち込んで帰ってきた原因もな。だが、その直後から王宮へ行かなくなったのと、王太子妃候補から外された理由はわかっている・・・ユーリが魔法を使えず、属性も魔力の有無も分からないからだった。」


「そ・・・うだったんですか・・・」


「だが、今回ユーリは魔法を使えるようになった。しかも、多属性持ちだ。再度ユーリを王太子妃候補にと申し入れがあるかも知れないと父様は言っていた。」


「可能性は高いと思いますが・・・父様が了承するでしょうか?」


「そればかりはな・・・」


「兄様・・・僕は姉様にいつも笑っていて欲しいんです。そのためならどんな努力も惜しまないって7年前のあの日に誓ったんだ。」


「そうか・・・これからユーリの周りは騒がしくなるかもしれない。ジェラル、俺と一緒にユーリを守ってくれるか?」


「もちろんです兄様」


「とりあえず明日、陛下にユーリの属性について報告すると父様は言っていた」


「そうですか・・・では全ては明日、父様が戻ってからですね。」


「あぁ・・・そうだな。」



翌日、晩餐後にサロンで父様から色々と衝撃の告白があったのには本当に驚いた。

姉様に内緒で縁談を全て断っていたって・・・


(父様・・・何やってるんですか?縁談が全くこないって姉様凄く悩んでたの知らなかったのかな?)


僕の隣で兄様も遠い目をしていたから、きっと僕と同じように感じているのかな・・・


僕は姉様の様子を横目で伺った。


(あ・・・姉様も遠い目してる・・・明日、どの属性が使えるのか再確認か・・・姉様の属性数は一体いくつなんだろうな・・・)


もし、王太子妃候補にって言われたら姉様どうするんだろう?

また、あの日みたいに泣きそうな顔で王宮から帰ってくるかもしれないし・・・

父様が王家からの縁談も断る気なのかが僕はちょっとだけ気になった。

僕としては断って欲しいなって思うけど・・・

ただ、王妃様が姉様とエド兄様を結婚させたがっているって、むかし父様が愚痴っていたような・・・

姉様の気持ちも気になるけど、エド兄様は姉様の事をどう思ってるんだろう?


姉様には絶対に幸せになってもらいたい。

いつも笑顔でいてもらいたい。

僕は兄様と違って公爵家の後継じゃないから、剣の腕を磨いて姉様を側で守るんだ。

姉様の笑顔を・・・その心を・・・


昨日、兄様と交わした約束・・・


『一緒に姉様を守る』


この国の筆頭貴族として姉様を守るのは父様と兄様。

姉様の相談にのって、女性として見守り導くのは母様。

だから僕は姉様がいつも笑顔でいられるようにする。

幼い頃から大好きな姉様の綺麗な笑顔を守る。


僕は決意を新たにする。


そんな僕の様子を父様と母様は笑顔を浮かべて見ていたんだ。

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