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0 プロローグ、「無頼漢/ニンキョー」

 気づいたときにはいつも手遅れ……


 もう、ほとんど死んでいる、らしいや……

仰向けに倒れたまま、頭の後ろが濡れていて、

なんだか固い物を、かすかに感じる。

頭が、ボンヤリしてきた……思い出すのは……そう、

電チャリで走っていたんだ、俺は――


……平日の真昼間だというのに、

あれこれと日用品を買いに行かされている、

“お使い”の途中だ。同居してる両親に頼まれて、な。

もうそろそろオッサンに差しかかる歳なのに、

定職にも就かないでブラブラしているからだ。

仕方がない。


 買ってきたのは、

トイレ用洗剤、バス用洗剤、日曜大工で使うノコギリ、それと

台所用の〈着火(マン)()〉。


 まだ自宅へと戻る途中、近所にある中学校の辺りで、信号待ち。

その間に、上を向いて“目薬”を差した。最近よく乾くからなぁ。

目に染みるのは最初だけで、その後はスカッと朗らか。

天気もピーカン日和で、気・分・爽・快。


 煉瓦舗装の歩道を行く帰宅途中のコドモたちを、

ちらちらと横目にしながら、アスファルトの車道で、

電チャリを走らせる俺。


 後輪の〈ハイドロ・ホイール〉を加速させると、

低音でブゥゥンと唸り始める。

 後ろから追いかけてくるノイズ。

その単調なリズムに耳を傾けていると……

なんだか……

目の前の景色だけが鮮烈で……

周りは消えてなくなってゆく――


……そんなときだ。

前方からアリん子どもの行列が、急速接近ッ! 

仲良く楽しそうに行進(マーチ)してこっちへやってきやがったっ。


 突っ込んださ、そりゃ、何のためらいもなく。

三、四匹は潰したか~、プチプチッとなっ。

しかし勢い余って着地に失敗した俺は、

もんどり打って転げまわってしまう――


……それから、どうしたんだっけ……


 周りを、取り囲むようして聞こえてくる、

金切り音が……うるさい。

 おちおち……走馬灯に浸ることもできや、しない。

それまで重かった瞼が、少しずつ、動かせるように、

なってきた……。


 ボンヤリとだが辺りの様子が、見え始める。


 雲ひとつない満月の夜空、冷んやりとして澄んだ空気。

 横たわる自分の手の平に感じるのは、乾き切った土。

 身に着けているのは、革のブーツに革のレギングス、革の……

チュニック?


 んあ!?

何だこの駄目ダメな【ロビン・フッド】みたいな格好(コスプレ)はァ~

なんて些細な疑問は、次の驚きによってたちまち押し流された。


 一体全体どうしたことか、体がっ、縮んでしまっているッ! 

170センチ()はあったはずの28歳(独身・バツ0)の身長が、

中二並みの体格に、って、ぇぇぇ……


 全身に走る打ち身の痛みを堪えながら、

もぞもぞと立ち上がろうとした、

そのとき、

何本もの手が一斉に襲い掛かると俺を掴み上げ、

乱暴に立たせようとする。


 驚きビビッた俺の手が腰へ伸びたかと思うと、

勢いよく振り上がった。

 手に納まっていたのは、一振りの“剣”――


……そう、《ホビッ子族》の長老が手渡してくれた、あの秘剣、


ギコギコ丸(JawSawd)〉だ。


 その刀身に妖しく濡れて光る、

いくつものサメ歯を見て怯んだのは、

三匹の〈多喰(オーク)〉ども。

豚ヅラで好色、群れの中で力だけを頼りに、

何匹ものメスを独占する、そんなことしか

考えていない、知能は原始ヒューマンにも劣る。


 中でも特にオツムが足りてなさそうなヤツが

一匹、怒号を上げて突進してきやがった。

 来ると判っているからピュンと軽い一振りで、

その腕を撫で払ってやる。

 ヤツは恐れおののいて飛び退いた。


 痛がりなのがコイツらの習性だ。

 来ないのならこっちから向かってやろう。

鮫剣をビュンビュン振るうその度ごとに、

忘れていた自分を思い出し、取り戻す。


 そう、俺の天職/天分は、【救世主】(セィヴァー)


 この、心底下らないが満更でもない猥雑多な世界を、

究極の邪悪から開放する、その一歩手前まで

上り詰めていたのだ、あの時までは――


……うかつにも油断した俺は、

確定し難き邪神の〈源泉徴収〉(ドレイン)攻撃をモロに受けてしまい、

ヤツの居城から遥か彼方にまでフッ飛ばされた。

 肉体的にも精神的にも若造に戻されてしまい、気がついたら

無様にも、木の枝にぶら下がっていたんだった、

コビトの国《オーラィーン》の林の中で。


 ドレインによって大量のエントロピーを浴びせられ、

装備も、能力までも奪われてしまったが、

なぜか記憶だけはそのまま。

 持ち前の桁外れな〈過大評価〉(カリスマ)によって

ホビッ子に助けられた俺は、

この“お使い”(クエスト)を引き受けた。


攫われたエルフの姫君を

眼前のオーク城から救い出すのだ。だぁ!


 三匹のオスどもはようやく静かになって地面の上に突っ伏した。

(フンッ、次に生まれ変わって来るときは、ミミズにでも転生するがいい)


 それを傍らで見ていた〈淫腐〉(インプ)どもが金切り声を上げ始める。


 腐った獣肉が大好物。野蛮なコイツら、

腐オークが普段考えていることといえば、

どの腐肉と腐肉を混ぜ合わせたら

美味くなるのか、ただそれだけ。

概して非力だが、先が二つに割れた槍(ピッチフォーク)

応戦してくるから油断ならない。


 城門の前にわらわらと群がって来る、大勢の原始(プリミティブ)オークや野蛮(ワイルド)インプども。


 〈ギコギコ丸〉はホビッ子の集落に伝わる

両手持ちのブロード・ソード。俺が持つと

それは片手持ちの諸刃ダガーにすぎない。

 多勢に無勢。何か他に武器はないものか……


 腰に回した手の感触は、ざらつく大麻布。そうだ、

〈四次元巾着〉(4Dポーチ)だ。

どんな重さも大きさもイイ感じに帳消しに(ディフォールト)してくれる、

この魔法の小袋には何が入っていたのだったか。

 中から出てきたのは、大瓶に容れられた

ィエロゥ・ポーション。思い出した、

〈エルフの残り湯〉だ。


 ワ・インプどもに向けて大瓶を振ってポーションを撒き散らす。

 黄色く透き通った液体をまともに被ることになった、

メスどもがフォークを投げ出し悲鳴を上げて逃走する。


 感じやすいのがコイツらの習性だ。

醜いアバタァ面のくせに、

色の付いた液体をひどく恐れる。

 そして、中年エルフ♂が沐浴した泉の水は

ヤツらに対して聖水と同じ効き目があるのだ。


 同じようにして、ポーチから取り出した、

大瓶グリィン・ポーションで

プ・オークどもを撃退した。

 清涼ポーションの効き目は絶大。


さながら海が割れるようにして、城門まで道が拓かれてゆく。


 しかし運悪く、

城門の傍で一部始終を目撃していた〈愚用務〉(グノーム)がいた。

PオークやWインプからも見下され邪険にされてきた、

年老いたグノーム。ヤツは戦う意志を持たず、

ニヤニヤ笑って観戦していたが、

自分の番だと悟ったのか、

門扉の向うへと走って逃げ込む。

 そして、徐々に閉じられていく城門。


 マズイッ、ここからでは走っても間に合わない。


 そのとき、「ぶひひん」と情けない鳴き声。

 後ろを振り返ると、一頭のロバ(Jackass)が倒れている。

なぜ忘れていたのか、おぉあれは、愛馬シヴァリー(驢馬だけど)。

 全身が切り傷だらけなのは、

Pオークどもの待ち伏せに遭ったときのもの。

落馬した俺もろとも、その場に倒れたのだった。


 ブーツで地面を蹴り、駆け寄ってみると、

その傷は浅く蹄は健在と見える。

 シヴァリーで駆け抜けさえすれば、

扉が閉じるよりも先に、侵入を果たせることだろう。


 俺は愛馬に向かって懇願して叫ぶ、立て、立ってくれ、と。


 救世主のインチキスキル〈大衆扇動〉(アジテーション)が発動する――


……以前のような最高レベル「有頂天」(カンスト)なら、

一敗地に塗れた一国一軍をも

たちまちにして奮い立たせるほどの、

これは救世主だけが起こしうる“奇跡”だ。


 今の俺は最低レベル「無頼漢」(ニンキョー)属性は(アラインメント)「日和見」。

だが、よく飼い慣ら(テイム)された家畜や知性体ならば

巧いこと口車に乗せることができるのだ。


 シヴァリーが歯を食いしばり、後ろ足で踏ん張り立ち上がる。

 それを見て俺も勇気バリバリ、革鞍にひらり飛び乗って叫ぶ。


「ハイヨ~!」


 前のめりのまま、後ろ足で大地を蹴り風を切るシヴァリー、

それでこそ♪お前ぇだぜ~♪


 巨大な丸太と滑車で雑に造られた門扉が重々しく

横へ横へと動き続け、残された入口はますます狭くなる。

 だが、すでにアジられたシヴァリーは臆したりせず、ただ

突っ切るのみ。


 迫り来る門扉に木葉一枚ほどの間隙だけを残して、見事! 

走り抜けてくれた。

 御加護に感謝いたします、【サイ゠コ・ダイス】よ、

ぉぉ、公平中立にしてスピン丁半の神よ。


 城壁の中には風車塔を醜く改築したオークの根城。

あの最上階に、姫君は囚われているはずだ。


 エルフ姫を救出した暁には、

長の旅路に連れ添うパーティの一員となってくれる。

 平民職能よりも三倍以上も成長の遅い【救世主】には

欠かすことのできない同行者だ。


“でんチャリ”とは何のことだったのか、もう思い出せない。

落馬して頭を打った際の後遺症か、一時的な混乱だったようだ。

あるいは邪神のドレイン攻撃、その残り火が

前世の記憶まで呼び起こすのか。


 と、ここで、速度を落としていた

シヴァリーが急に歩みを止めてしまう。

オーク城を眺めていたその隙に、

立ちはだかった〈体躯狂牛〉(タウロス)によって、

馬銜(bit/はみ)ごと掴まれてしまったのだ。


 半牛半人のタウロスは、以前は

ホビッ子の仲間であり家族同然だった。

だが【魔道士】(ウィザード)級の何者かによって

〈肉骨粉〉(ニュクォプー)を嗅がされて、今では

半豚どもの手下と成り下がったのだった。


 その重い体躯を活かし、指毛だらけの両手で

がっしりと掴んで放さないタウロス。

 俺は意を決して手綱を放すと、

立ち上がってシヴァリーの頭を踏みつける。

眼下で唸る牛顔に向けて、

二つのポーションを同時にシャワーしてやった。


 ヱログリ顔シャを両手で掻き毟るようにして

苦しみ出すタウロス。

 そして今度こそ華麗な着地に成功する俺。

 舌打ちして睨み付けるシヴァリー。


「ブモッブモッモッモッ~~~!」

(意訳:熱いんだか冷たいんだかよくわかんない!)


 そう叫び苦しみ悶えるツユだく鈍牛から、

蒸気のような煙がもくもくと湧き上がる。

 聖なるポーションの〈相乗効果〉(コンボ)だ。



 すでに思い出していた最後の装備品を、

すかさず魔ポーチから取り出す。

コドモへと逆行し小さくなった、

その手に握られているのは、


〈熱っい鉄槌〉(スパーク・ハンマー)――


……昔々《ドワーフ族》から

《ホビッ子族》に贈られたとかいう記念品。

名工が精魂込めて鍛え上げたその業物は、

振るう度に火花が飛び散り、

鉄製武具をその場で修復できるのだ。

 僅かだが〈共同幻想〉(エンチャント)効果を秘めている。


 二本足で立ったまま身悶えるタウロス。

 その隙だらけの背中めがけて、

ハンマーでメッタ殴打する。

 茶褐色のその全身が、即座に

灼熱のファイヤーウォールと化した(物理)。


「ウェルダン!」

コンボ×3 BBQステーキのぉ~デッキ上っがりっ~。


 ジュージューと弾ける音を立てて燃え盛る、

歩くビフテキを背にして振り返り、

あの風車を見上げると、

四ツ羽根が音もなく静かに、

だが重々しく回っている。


 根城の中は三階層。機械仕掛けの罠が

誰であろうと見境なく無差別に起動し、

積年の逆恨みから奪うことしか考えていない、

性悪なクリーチャーどもが群れをなして襲い掛かる。

最上階の拷問部屋で待ち受けるのは諸悪の根源、

【武器商人】(war-monger)


 この土地はホビッ子ら《五体満族》が調和して、

繁栄を続けてきた《オーラィーン》の国境い。隣国

《ギルディワルド゠ネ》の侵食地帯ともいえる。

あの機械化商工業国を縦断して、さらにその先、

耽美徳と清潔癖そして邪神の巣食(すく)う国、

《ヴァーチュレム》まで辿り着かなくてはならない。


 そのためには小クエストをいくつも消化して、

コツコツと地道にレベル上げに励むのだ。

生真面目な一般庶民なら気が遠くなるほどの行程。

 だが俺には豊富な知識と培った経験があり、

邪神の居城までの地理に明るく、行く手を阻む

クリーチャーどもの攻略にも長けている。

最小ステップで最短コースを駆け抜ける、

タイム・アタックも無茶ではない。


 タウロステーキの香ばしい煙が辺り一面に漂い、

鼻腔をくすぐる。

……懐かしい。

今ではもう絶えて久しいビフテキのシズルとは……

これほどまでに食欲をそそるものであったか。

 そう、BBQとはその昔、

《アメリカ》合衆国で定着した

原始的で野蛮な野営調理……ん? 


 根城の正面で立ちはだかるのは、月明りに照らされた銀狼(ライカンスロープ)……

いや、狼の仔……口を開けたり閉じたりしている……

いやいや、あれは白い犬……かすかに鳴き声が聞こえて……

犬、あれは、豆柴……わんわんワンワンとしきりに……

…………



「――やっと起きたか」渋いバリトン声が耳元で囁く。

「ぅぁ……なんだ夢、かょ」


 顔のすぐ横でくしゃくしゃに丸められた、

手拭〈ウィスパー〉に向かって、呟く俺。

昨夜うっかり零してしまい、拭いたはずの

青汁豆乳が臭う。[1]


「1分以上も吼えて(アラーム)いたんだが――

すこぶる良い夢だったようだな。厳密には62・8秒」

「ぅぅ……どうせなら、

“ドキッ!~女だらけの~”パーティ組んで……

チート・ハーレムでウハウハ色ェロしてっから……

起こしてくれれば、よかったのにょっ……」


 ベッドの上で寝返りを打つと後頭部がじんわりと痛む。

パルプ本を何冊も枕にして寝ていたらしい。


トルコ語(ターコィッシュ)を口にするとは珍しい。ちなみに、その用法には

歴史的に不幸な誤解があったようだぞ」

「せめて……ビフテキ

喰ってから覚めたかったぜ。

そっちのほうが、不幸だぁ」

「朝だぞ。さぁ、さっさと目を開けて、見せてくれ」

「ぉぅ……ほらょ」


 仰向けのまま、枕元の麦藁帽子を

引き寄せ、額に乗せる。[2]

 つば裏の〈ヴァイザー〉画面を見ると、

犬小屋から豆芝が顔を出している。[3]


「声紋認証は既に完了。虹彩、捕捉。認証……完了。

正規ユーザー:椿三郎、本人と認める。確度、99・9%」

「毎度まいど、

メンドくせぇなぁ」

「ヲマエのサイフの紐だって握ってるんだ。

少しは有難がってもらってもバチは当たらないと思うがね」

「はぃはぃ、

“バディAI”様サマで

ごぜーますよっと」[4]


「ビフテキのことは解らないし、

識り得る見込みは全くない。

AIだからな。いま判ることは……

ヲマエがいつものサブローだってことだ」[5]

「そりゃどーも。そぅさ、いつもの俺、

万年“ニンキョー”のサブローだょ」


 もちろん、夢の中の【ドンキー&ホーテ】なんかじゃないさ。

もう醒めた。[6]


 いつもと違うことだったら、これだ。

昨日たまたまどっさり手に入った、古いパルプ本。

コドモ時分に流行った“らのべ”を昨夜読みすぎて、

そのまま寝入ってしまったのだ。

 題名/タイトルは、


『無宿天晴 ヴァーチュレム(Virtrealm)/ギルディワルド(Guildwld)(=)(Nay)/オーラィーン(Aulorayeen)


「らのべ文化末期を代表する有名駄作で、

VRMMORPG(死語)プレイ日記風、

異世界トリップ/転生チー(トハ)レム系の、

中二病的軽薄短小説(挿絵、少)」

 と、ネット検索結果を圧縮/要約してくれる豆芝。[7]


 肝心の情報が抜けているな。

ま、無理もないが。似たり寄ったりの類似品が多数。

何度も楽しめるものはごく少数。悪貨が良貨を駆逐して、

ただでさえ衰退していた“らのべ”文化にトドメを刺した。

 長すぎるし舌を噛みそうなタイトルだってんで、皆は縮めて

こう呼んでたっけ、


ヴァギィナ』(VrGwNA)、と。[8][9]



--

[作者註1]マイク兼スピーカーのウィスパー(Whispers)セットは脱着式。外した後、青汁豆乳で汚れた手拭は、もちろん丸洗いOK。


[作者註2]カメラ兼モニターのヴァイザー(Visor)は脱着式。眼鏡型を好まないサブローは薄膜シート型を帽子に両面テープで固定している。


[作者註3]ヒトがヴァイザーを見るとき、ヴァイザー(を経由してAI)もまたヒトを見ている(深淵という意味でなく)。


[作者註4]バディAIはユーザーの生体認証機能を持つ。ヒトの社会的自己同一性は、このAIによって担保されている。確度が100%に満たないのは、寝ぼけているサブローの声・語尾が不明瞭で、声紋認識段階で不足が生じたため。


[作者註5]味覚や嗅覚をデータ化して処理することはAIにも可能だが、それはヒトと同じように感じ認識できることを意味しない。また、その見込みはない、当面の間は。


[作者註6]“ノベル/小説”の草分け『ドン・キホーテ』のモジり。眠りから目が“覚めた”だけでなく、夢・幻に没入していた意識が現実を認識・帰還、興が“醒めた”という意味。


[作者註7]【設定】“らのべ”は現代の「ラノベ」に相当し、当代日本語として海外でも浸透した。『ヴァギィナ』登場と軌を一にして“らのべ”文化が急速に衰退。以後はより劣悪な別の何かに取って代わられた。以降の作品群が“ラノベ”というカタカナ・ワードで表記されるに至る。「字だらけの薄くない同人誌」などと揶揄されることが多い。


[作者註8]【設定】“ヴァギィナ”は造語で元は頭文字「Virtual, Reality, Guild, World/War, Net(work), Online」の順。読みとしては「ヴァグィノー」のほうがより正確ではあるが、語尾の「ノー」が「ナ」へと転訛した。云うまでもなく、卑猥語を連想させる蔑称(「ヴァギィナ系」、「ヴァギィナ属性」、「そんなヴァギィナ!」等、用法は様々)。ちなみに、用途がゲームに限らない「MM」は含まれておらず、また、廃れてもいない。

[作者註9]【裏設定】強引な商業主義によって強力にメディア・ミックス展開された『無宿天晴 ヴァギィナ』であったが、短期間とはいえ社会問題化した。PorkオークやForkインプの撃退に手間取ると、まず〈色淫室〉で中年エルフ♀が輪されてしまう。タウロスにも手間取ると、武器商人による〈きっつい詰問〉が始まってしまう。大半の読者/プレイヤーは言語に絶する凄惨極まりない場面に遭遇することとなった(いわゆる“初見殺し”)。とんがり耳を除けばヒューマン児童にしか見えない非実在青少年に起こる悲劇を必要以上にリアルに描写した結果、それを追体験するコドモたち・実在青少年への悪影響が大であるとして、問題作『やどなしあっぱれ ヴァギィナ』は“らのべ”批判の矢面に立たされることとなった。ちなみに、武器商人を倒し白状させると手に入る極上のヒーリング・ポーションと記憶操作の外法スクロールが全てを元通りにしてくれるという、ファンタジーすぎるご都合展開には特に批判はなかった。メディアの送り手と受け手の双方、共に末期症状である。

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