Lv08 人生はゲームと同じ?
「さて、幸せになる方法だけど、要は5つの要素の質を上げていけば良いのよ。
太郎。まず、貴方の現在の状況を5つの要素に当てはめて考えるわよ。
健康面に関しては、今のところ目に見える問題は無いわ。
でも太り過ぎだし、食生活も褒められたものではない。運動の習慣もない。
これだと近い将来きっと問題が出てくる。
その辺を改善する必要があるわね。
次に生活。
部屋が汚いわね。もう少し片付けた方がいいわ。
健康とも関連するけど、食事にも気を配るべき。
全体的に質が低い。
別に金額の話じゃなくて、時分が生活する空間なんだからもっと手入れをしたりして、気持ち良く過ごせるよう工夫できる余地はまだまだあるわ。
仕事に関しても、今のアルバイトから抜け出せるようにしなきゃね。
余暇も、毎日お酒飲んでゲームばっかりじゃダメよね。
分かってるとは思うけどね。
人との関係も、自分から極力絶ってきてるものね。
仕事以外で他人と会話することもほぼないレベル。
貴方の現状は大体こんなものね」
改めて見てみると、『酷い』の一言である。
それは太郎自身が他の誰よりも理解している。
また暗い顔で俯いてしまう。
「うう。分かってるけど、自分のダメさを改めて指摘されるのはやっぱり精神的にキツイな」
「そうでしょうね。私には理解できないけど。
でも現状を正しく認識しないと、どう改善すべきか判断できないからね。
これまでのツケだと思ってガマンしなさい。
まあでも、後は5つの要素のレベルを上げていくだけだからね。
ゲームと同じで、経験値を上げてクエストをクリアすると思えばいいのよ」
「ゲーム?」
「そう。貴方RPG好きでしょ。
人生なんてゲームと同じように考えればいいのよ。
進学とか就職とかクエストと同じでしょ。
経験を積んでレベルを上げて、必要な装備を整える。
パーティで協力し合えば、経験値を早くためることができる。
ね、ゲームと大して変わらないでしょ?」
「でもゲームだとしたらクソゲーだよ。こんなの。
個人ごとに初期能力や資金に差がありすぎるし、成長率だって全然違う。
僕がミ◯アで苦戦してる間に、他の人はアリ◯ナみたいにサクサクとレベルアップしてるじゃないか」
「確かに貴方の言う通りよ。
人生というゲームは決して公平では無いわ。
そういう意味ではクソゲーよ。
でもだからといって止める訳にはいかないでしょ。
極端な話、終了はいつでもできる。
生まれてきた以上プレイし続けなければいけないのよ。
例の有名な犬だって言ってるでしょ『配られたカードで勝負するしかないのさ』って。
でもこのゲームも捨てたもんでもないわよ。
ハッピーエンドは1通りじゃなくて、プレイする人数分用意されてるんだから。
っと、ちょっと話がずれたわね。
要は人生もゲームと同じように考えれば良いって話よ。
目標というクエストを設定して、少しずつ経験値をためてレベルを上げてクリアしていけば良いのよ。
それを分かりやすくする為に要素を細かく5つに分けたんだから。
だからこの話は話数をレベルで表してるのよ」
太郎はよく分からないといった顔をする。
「何の話?」
「いいのよ、こっちの話だから。
ようやく次から実践よ。
さあレベル上げをするわよ」
実は太郎はRPGで一番好きな作業はレベル上げだ。
それまで勝てなかったボス敵を倒せるようになることを想像しながらプレイするのが好きなのだ。
どういうスキルを身につけようかとか、どの装備を選ぼうか等考えるとワクワクする。
しかもゲームは経験値が数値で分かる。
リアルとは違い自分の努力が数字として表されてるのだ。
プレイしたらした分だけ、経験値やレベル、所持金、装備に反映されていく。
しかもそれで主人公として物語を進めることができるのだ。
それが太郎が他のジャンルではなく、RPGを好む理由だった。
アリスの話だと現実もゲームと同じようにプレイすれば良いということだ。
そのように考えると、これまで難しく考えていた人生も楽しく捉えることができる。
何よりこれから行うのは自分が一番好きなレベル上げだ。
これまで倒せなかったボスを倒せるようになるかも知れない。
その可能性を想像するだけで、これまで人生を諦めていた太郎の胸は踊る。
先ほどまで暗い顔をしていた太郎は勢い良くアリスに返事する。