表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/15

Lv02 人生に躓いた出来事

以前は太郎にも恋日や友達がいた。

しかし、20代後半になってもアルバイトで食いつないでいる太郎と、正社員として働いている友人とでは話も合わず疎遠になっていった。

中には気を使って飲み会等がある時に、声をかけてくれる者もいたが、毎回太郎が断るのでその内声もかからなくなった。


太郎が30歳になろうかという歳になってもアルバイト生活をし、人生を諦めてしまっているのには、理由がある。


話は大学卒業の頃に遡る。


太郎の行っていた大学は、一流大学と評されるような学校ではなかったが、それでも卒業時には何とか内定を得ることができていた。

学内でできた彼女もいて、幸せな時期だった。


しかし太郎が入社した会社はブラック企業だった。

毎日終電近くまで残業があり、休日出勤もザラだった。

その為、彼女からは太郎と会えない不満が溜まっていた。

たまの休みに会っても、疲れやストレス、不満からケンカばかりするようになった。

それでも太郎は彼女のことが好きだった。

劣悪な労働環境で頑張れたのも、彼女との将来のことを考えていたからだった。


就職して2年目の秋、少ない給料の中から貯金し、指輪を買ってプロポーズしようとしていた矢先、彼女の方から別れを告げられた。

休みが少ない、給料も安い、昇給も望めない、そんな将来性の無さではこのまま付き合うことは出来ないということだった。

頑張る理由が無くなった太郎は、溜まっていた疲れとストレスが一気に噴出したのか、倒れて入院することになってしまった。

医者からは極度の疲労と鬱病の一歩手前だと診断された。


数週間の休養を余儀なくされた太郎は会社から解雇を言い渡された。

働けない人間を雇い続ける余裕は無いという理由だった。

精神的にも肉体的にも会社と争う余裕の無かった太郎は素直に会社の言い分を受け入れた。


退院後、体が回復してからも、何かをする気力がなく、ずっと自宅にこもっていた。

皮肉なことに貯めてあった貯金で入院費用と無職期間の生活費は賄うことができた。


引きこもり生活期間はずっとゲームをしてた。

大学に入ってからはやっていなかったが元々ゲームが好きだったのだ。

アクションやシューティングではなく太郎がプレイするのはRPGだ。

自分だけの世界で、敵を倒せば経験値と金が貯まる。

装備を整え、レベルを上げることでどんな敵でも倒すことができる。

非常にシンプルで分かりやすい上に、自分の行動の結果がすぐに数字に現れる。

現実世界とは大きな違いだ。

現実がままならない分、ゲームの世界に没頭するようになった。


数カ月後、生活費が底を尽きかけ、働く必要に迫られた。

最低限の生活費だけ稼げればいいと考えた。

残業もしたくない、人と接することもない仕事を条件とし、自宅の近くで募集していた配送センターのアルバイトに応募した。


それからはずっと同じ配送センターで決められた時間働き、自宅に戻ってからはゲームをするという生活をするようになった。


就職や結婚等という世間一般が言う、幸せな生活なんかは求めようとは思わなくなった。

どうせ求めても手に入らないのだから。

そもそも手に入れ方が分からないし、誰も教えてくれなかった。

これがゲームだったらクソゲーだ。

だったら最初からそんなものは求めず、ゲームだけやる生活で良い。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ