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Lv13 人生は自業自得。自分の行為が自分に返ってくる。他人が責任を取ってくれないからっていじけてるヒマはない。

仕事が終わっての帰り道。

太郎はスーパーで買い物をするのが習慣になっていた。

以前はコンビニやラーメンで済ませていた食事を自分で作るようになった為だ。


自分でも驚くほど自炊にハマっている。

まだ難しい手の込んだものは作れないが、少しずつレパートリーも増やしている。

先日はネットでレシピを見ながら初めて親子丼なるものを作ってみた。

それまでお店で食べるだけで、どうやって作っているのか想像もできなかったが、作ってみると案外簡単なことが分かった。

鶏肉が固くならずジューシーなまま、卵もふわふわにするのにはまだまだ練習が必要だが、それでもとりあえず「親子丼」になっているものは作ることができた。

自分で作ると細かい味付けを、好みに調整できるのが良い。


しかし実際の所、味付けよりも「新しいこと」を身に付けていると実感できるのが自炊にハマった理由だ。

親子丼もそうだが、自分にはできないと思っていたことができるようになる達成感はこれまで感じたことのないものだ。

新しい料理に挑戦する度に、その達成感を得られるのだ。

しかも一度作ったからと言って、その料理は完成ではない。

毎回作る度に、『ああ、ここはこうしておけば良かった』と思うことがあるのだ。

野菜の切り方だったり、調味料の量、焼いたり煮たりする時間などだ。

上手く出来たと思った時でも、ネットでレシピのバリエーションを見つけると、次回はそれに挑戦してやろうと思う気持ちになる。

明日を楽しみに思うことなんて、この数年無かったことだ。

それが自炊を始めたことで、毎日明日は何を作ろうかと楽しみにするようになったのだ。

これではハマらない方が無理というものだろう。


自炊にハマったのにはまだ他にも理由がある。

経済的な面だ。

これまで太郎は毎日の食事をコンビニや外食で済ませていた。

近年は安いチェーン店も増えてきてはいるが、それでも毎日となると食費はかなりのものになる。

それが自炊にしたことで驚くほど食費が減った。

確かに包丁や鍋などの調理器具の購入という初期費用はかかったが、2~3ヶ月でペイできるレベルだ。

むしろ今後ずっと自炊をすると考えると十分にプラスだと言える。


次の理由の方が経済的なものよりも大きい。

痩せてきた上に、体の調子が目に見えて以前より良いのだ。


以前は82kgあった体重が、自炊を初めてから1ヶ月ほどで75kg近くまで減った。

スクワットも続けているし、食事量も記録を付けていて以前ほど量を食べなくなったというのもあるだろう。


しかし恐らく一番大きい理由は野菜を食べる量が増えたことだと思う。

コンビニや外食だとほとんど野菜を摂ることは無い。

野菜は付け合せに申し訳程度に添えられているぐらいだ。

基本的には、米と多少の肉で満腹感を得ていた。


自炊にすると米と肉の量が減り野菜が増える。

特にアリスから指示を受けて作っていたのは、カレーや鍋といった野菜を多く使う料理だ。

恐らくアリスは栄養バランスも考えた上で作る料理を指定したのだろう。

そしてそれは実際効果があったと言える。

野菜が多く入っているので、それだけで満足できご飯を食べる量が少なくて済むのだ。

外食だと肉などの味付けが濃く、ついついご飯を食べてしまうが、自分で作ったものは味も薄めなので、味付け的にもご飯の量が少なくなる。


さらに、栄養バランスが良くなったからなのか、体調も良い。

朝も気持ちよく起きられるようになった。

常に感じていた気だるさも、意識しなくて済む程度に軽くなってきた。

頭も靄がかかっていたようだったのが、クリアになってきた気がする。


全体的に体が軽くなって、精神的にも物事を前向きに捉えられるように変わってきた。


醜く太っていた自分の体のことが嫌いだった。

しかし、運動して食生活を変えることで、体型が変わったのを見た。

自分の行動で体をコントロールできるのだということを実感した。


そもそも太っていたのも、運動しない、カロリーが高いものを食べるという自分の行動の結果によるものだったのだ。

今更ながらそんな当たり前のことに気がついた。


人生もきっと同じなのだ。

自分の行動が全て自分に返ってくるのだ。


自業自得という言葉がある。

仏教の用語で、悪いことをしたらそれが返ってくるという意味で使われることが多いが、実際には善悪問わず行為の結果が自分に返ってくるという意味だ。


前の彼女に捨てられたのは、仕事にかまけて相手をできなかった自分のせいなのだ。

仕事が忙しかったのは、そういう会社に入った自分の責任だ。

もっと事前に情報収集をするとか、入った後も失敗だと思ったらすぐに辞めることもできたはずだ。

実際同期入社の連中はすぐに辞めていった。

仕事をもっと高速でこなす努力や、会社を変える為に何かアクションしたりすることもできた。

不満を抱えているのに、問題を解決しようとせず同じ環境に居続けるのは美徳でもなんでもなかった。

そんなのはただの思考放棄だ。


今思えば自分から何か行動したことは無かった。

部活も学校も就職も全て周りがそうだからという理由で流されてきた。

用意されたレールに乗っていただけだ。

ちょっと躓いてレールから外れてしまったら、全てが終わったような気がしてた。


自分の人生は、自分しか責任を負うことができない。

他人はレールを用意してくれてはいても、責任は取ってくれない。

そんなことも分からず、いじけて数年を無駄にしてしまった。

他人が用意したレールの上を走るんじゃなく、自分で道を切り開くべきだった。

いや、他人のレールを走っても良いけれど、それを走る判断をしたのは結局は自分だ。

その結果がどうなろうと、他人のせいにするのではなく、自分の責任として受け入れるべきだった。


自業自得。

自分の行為の結果が自分に返ってくるのだ。


たかが食事を自炊に変えただけで、体が変わったのだ。

他の行動を変えれば、人生ももっと変わるに違いない。


自分の行動の責任を自分で取るということは、とても怖いけど興奮することでもある。

だって何をするのも自分の自由なんだから。

初めてで上手くできることなんてない。

料理と同じだ。

もし失敗したとしても、次回上手くやればいいのだ。


太郎は買い物を終えて、スーパーの袋を下げ家への道を辿る。

今晩のメニューは、前回上手くできなかった親子丼だ。

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