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『やがて神の使いは目的地へと辿りつく』

 ライトで照らされた水面はまるで泉のようにキラキラとした玉色の光で照らされている。

 

 そしてその水面と地面のふちをまるで飾り立てる装飾のように人々が立ち、身使いが神の国へと帰るのを最前列で見送る。


 湖とは言うけれど正直に言えば池と言っても差しさわりの無い大きさであるそこは小さく、祭りの参加者全員が集まるのは到底不可能なので一部の人間だけがそこに居られていた。


 かたやそれにあぶれた自分のような人間は広場に特設された大きなテレビジョンの映像越しからその儀式を見ていた。


 液晶画面に切り取られた映像はまるで目の前で見ているかのように現実的で信じられないくらい幻想的だった。


 やがてぎっしりと詰め込まれた『願い』に神職がそれを昇華させる。


 つまり点火だ。


 パチパチという『願い』がゆっくりと煙へ変わっていく音と破片が吸い込まれるように夜空へと上がっていく。


 間接的に見ている光景を声も上げずにただただ見続ける。 


 別段信心深いほうでもないが、驚くほどに使命感を持って身じろぎもせずにそうしている。   


 会社の朝礼でも『社長からのありがたいお言葉』を聞くときでさえ、外面はともかく内面の部分では比べようも無い。 


 というか〇と100くらいの差がある。


 単純に言えば決して追いつくことなどありえない無限の差だ。


 それは生活していくために仕方なくやっていることと無職にならないためのおべっかが故の追従に他ならない。


 無味乾燥ですらない、煮えた鉛を流し込みながらも固めた笑顔をみせるような場所では『愛社精神』とやらも『尊敬』すら生まれるはずが無い。 


 そんなものは『看板』や文字通りの『映像器の向こう側』と同じの『空想物』と変わらない。


 いかん、小難しいことを考えても何の意味も無い。 

 

 つまりは湧き上がってくる自然な感情には適わないということだ。


 もう一つ付け加えれば強制された思いでは勝つことなどできない。


 小火が空へと還っていき、真っ黒な夜空に星を付け加えているような遠景を見上げながらそう思えた。


 

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