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エピローグ『地獄はこれからだ』 

 朝日がまぶしい。 朝もやの繁華街を硬直した関節をほぐしながら歩く。


 どこの都市にもカラスはいて、繁華街で出た生ゴミを漁り、その横を朝帰りの酔っ払いがゆっくりと帰路へと向かう。


 そんな彼らと同じようにぎこちなく足を動かして僕は駅へと向かっている。


 ギシギシと軋む身体を引きずりながらも晴れ晴れとした気持ちだ。


 旅行というには少々準備不足で不必要に疲れたことは確かだったが、昨日のあの日あの時あの場所に確かに僕は立っていて、そして確実に一部になれたことが妙にうれしかった。


 その気持ちこそが作品への最大限の賛辞だ。 

 金をかけ、時間をかけ、疲れきって未だ湿っているズボンのすそを引きずりながら帰路に向かう。 


 帰ってからの妻子への言い訳、明日からの憂鬱な仕事、そしてこの不快な生乾きの服とズボン。 


 それら全ての不快要素など蹴散らして駅へと歩みを進める。


 来年、いやさ来年もまたこよう。


 今度は家族も連れて? いやそれとも一人で?


 クスリとした笑いがこみ上げるのを我慢しながら、晴れ晴れとした天気の下にいる。


 だがら軽やかに進む僕の携帯にはとあるメールが受信されていた。


 内容は全ての真実を知った妻からの怒りメールだ。  


 楽しい旅行は家に帰るまで……。


 そして苦しい地獄は家についてから……そう、地獄はこれからなのだ。



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