悠遠な君に惚れる花。
そんな君が私には遠く輝いて見えた。
初めて補習になった。
補習というか、テストの日に風邪で休んだだけだけど
あまり、放課後に活動はしない派だからドキドキする
体育館の近くは部活動の声が廊下にまで響いていた
教室には誰もいなくて、魂が抜けているみたいだった。
窓を開けている場所からは、吹奏楽部の演奏が聞こえて
私はただ、歩いた事のない廊下を歩いて、教室にむかってて。
普段他のクラスなんていかないから緊張する
一つだけ電気のついてる教室、あそこが補習を受ける場所。
ガラリとドアを開けると数人の生徒がもう席に座っていた。
もしかして最後についたんだろうか。
まだ若い先生と目があった。
「こんにちは、好きな所に座って。…あと三人きてないな。」
「あ、はい。」
窓側の少し後ろの席に座った。
知らない人ばっかりだ。
高校は入ってまだ間もないから怖い。
「清水〜はやく帰りたいんですけど。」
一人の生徒がかったるそうに言う。
「ユウト、お前補習何回目だよ!進学出来ないぞ!そして先生をつけろ!」
ユウト、ユウトくん。
見たことない。
遠いクラスの一つだけなのかな。
親しげに先生と話している。
補習を何回も受けてるのか…。
「周りを見ろ!お前と長澤と相島以外見知らぬ生徒だ!お前と長澤と相島はいつになったら補習のある日俺と対面しない放課後がくるんだ!」
「三年後…くらいっすかね」
「そりゃ卒業してるからね!!!」
少しやりとりに笑ってしまった。
「清水、あと一人レギュラー増えたら補習の四天王にしようぜ」
「ちょっとかっこいいなそれ。」
あれ?これテストの補習…なんだよね?
「先生、テストはじめませんか。」
真面目そうな人が手をあげて言う。
もう少しやりとりを聞きたかった気もしないわけではない。
「あー、いいよはじめて。」
え、はじめていいの。
何人かテストをはじめる。
問題用紙が見当たらない。
「清水〜もうちょい話してようぜ。」
「ユウトはさっさとはじめろ!」
少し後ろを向いたユウトと目があう。
とても鋭い目つきだ。
すぐに、前を向いた。
「清水、お前後ろの女子にプリント配ってないぞ。」
え?
「嘘!マジで!?ごめんね!!今くばる……ってない!予備がない!ちょっと印刷してくる!ユウト一枚かせ!」
そう言ってユウトのテスト用紙を奪って去っていった。
あんな先生いて大丈夫なのか。
「あー!!俺のテスト時間減るだろ!!!」
これ、私のせいじゃん。
どうしよう、怒られる。
ウザがられる。
ユウトはこっちを向いた。
声をだせない。
怖い。
何も起こさずユウトは前を向いた。
こっちを向いた理由はわからなかった。
結局、私とユウトだけ遅く帰る事になった。
テストが終わった。
魂が抜けたような顔をしたユウト。
「ユウト、お前ほぼ空欄じゃねえか…」
「覚えてたのに清水のせいで抜けたんだよ!!!」
「はぁ〜???いい加減点数伸ばせよな!」
お礼を言いたい、のに言えない。
「帰りは気をつけて〜さよなら〜」
清水先生はそう言うと教室をでていった。
二人だけだ。
ユウトが振り向く。
「帰るの遅くなっちまったな。」
「そ、そうですね…」
はじめて話した。
緊張で手が震える。
言わなきゃ。
「あの、ありがとう、プリント言ってくれて…」
ユウトは少し微笑んだ。
「困ってたら、助けるに決まってんじゃん。」
その笑顔は、夕日にてらされて輝いて見えた。
「じゃ、気をつけて。」
そう言うとユウトは教室から出て行った。
補習をして、プリント配られてなくて良かった。
時間を代償に私は恋をもらった気がした。
優しくて、眩しくて、遠い存在の君に私は惚れる。