六面体
放課後。ミカと私は、どこのサークルに入るか相談していた。
「やっぱイイオトコ比率が高そうなとこに入らないとね」
私はやけにウキウキな気分だったのだが、ミカはそんな私を見て気難しそうに溜息をついていた。
「私としては、軽音とかテニスとかいいと思うんだけど、ミカは? どうせならさ、二人で一緒のとこに入ろうよ」
「えー、私も巻き込むつもりなの?」
「だって、だって、やっぱり一人だけで知らない世界に足突っ込むのは怖いしさ。ミカが一緒ならなんでもできる気がする♪」
「何でもできるって……じゃあ、こうしよう。トモミと私で三つずつ希望のサークル書いて、サイコロで決めるってのは?」
「いいじゃん、それ。そうしよ。私は、じゃあさっき言った軽音とテニスと、そうだなぁあと一つ。サッカー部のマネージャーとか、とか」
ミカはノートを取りだして、メモをする。
1 軽音
2 テニス
3 マネージャー
そして、無言でその下に自分の希望を書いていく。
4 文芸
5 文芸
6 文芸
ちょ、ちょっとまてーーーー。
「何それ! ずっる。三つ一緒だし! しかもぶんげー? 何それ、それ何?」
「えー、本とか読んだり、自分で書いたり」
「そりゃ、なんとなく分かるけど。そんなとこイイオトコなんている訳ない! 絶対ない! ないないないぃぃぃぃ!!」
「なんかさぁ、運動とか苦手だし、時間的に束縛されるのも嫌だし。てきとーに在籍してるだけで楽そうなとこって言ったらさぁ、それしか思い浮かばなかった」
文句ある? って顔してるよ、ミカ……。
「いや、楽そうだけど、楽しそうではないよ。やめよう、そんな動機で入ったら失礼だし!」
私は必死になって説得した。
「動機って言ったらトモミの男目当てって動機もどうかと思うけどなー」
う。図星。
いや、ここで負けたら私の野望が、世界最強の片思いという野望が……。
「え、え、えっと、私は文章なんて書けないし、作文だって誉められた事なかったし、読書だって漫画読んだぐらいで、無理無理無理ぃ!」
「さっき、私と一緒なら何でもできるって言ったよね? よね?」
再び、ズボボボ図星。
「そんな念を押して二回も聞かなくても、言いましたよ。言いましたとも、言ってやったさ。うぅ。」
「まぁまぁ、要はサイコロ振って、自分が行きたいトコ出せば済む話なんだし」
「そうだ。それだ。よぉーし、私の全ての運をここにつぎこむ! サイコロ出して!」
「いや、こんなんで全ての運つぎ込んだら駄目でしょ。っと、サイコロなんてないよ。何か変わりになるものぉっと……」
そう言って回りをキョロキョロ。鞄をゴソゴソ。
「よし、この鉛筆でいいや。投げる役はトモミに譲ってあげるよ。その意気込みに免じて」
マジックで数字を書き込む。その後私はそれを、うやうやしく受け取る。
「よ。よぉぉっし! いっくぞぉ」
私はその鉛筆を堅く握りしめ、そしてサイコロの神様、小堺さんに祈りを込める。
(なにがでるかな、なにがでるかな、なにがでるかな、チャチャチャチャン)
そして運命のサイは投げられた。
The die is cast.
英語はてんで駄目駄目なんですが、
なんかカッコイイんで覚えてる諺。
be+過去分詞で〜される、されてる
っていう受動態だっけ?
たぶん。
ためになる後書きだなぁ(笑