三つ巴
「んで、俺的には『バツ男』見たいんだけど?」
「んーパス。私は『SOBA』見たい」
結局、タケオミの強引な引っ張りに抵抗しきれずに、一緒に映画を観ることになった。
そういえば映画なんて一人で見に行けないし、ミカは彼氏出来てから付き合ってくれないし、もちろん彼氏なんていないし、まぁいいか。
なんて自分に納得させることにした。
映画は良かった。長野にソバを食べに行きたくなった。
一人、余韻に浸っていると、タケオミが話しかけてくる。
「んあー、腹へった。なんか食べにいくかー?」
ウザイ。やっぱ一人で観に来た方が良かった。
「いや、いい。じゃねー、タケオミ」
私はタケオミを置いてさっさと家に帰る。
はずだったのに、なぜか! なーぜーか!
タケオミとファミレスに入っていた。
「なぜだ?」
私は率直にタケオミに尋ねる。
「はぁ? 何? それより何食べるよ?」
この強引さは何なんだろう?
「あんたは、なんでいっつもそうなのさ?」
「俺、彼女とこのファミレスで待ち合わせしてる訳。んでトモミにはそれまで暇だから付き合って欲しいと、そういう訳だ」
は、はい? それってなんかマズクない? いやそれよりも……。
「ちょ、あんた。私の立場は? アイデンティティーは? 人権は? 動物保護は? 自然環境うんぬんは? 政治的、経済的、インセンティブは?」
「お前、何言ってるかワカランぞ」
とか言ってる間に、タケオミの彼女到着。
大学の中で何度か会ってるけど、なんか大人しそうで、清楚? って感じで、一昔前の女の子ってイメージの人。
「あら、コンバンワ。トモミさん」
彼女が笑って挨拶してくれた。二人で居たことに何の疑問も疑惑もないのか?
「こ、コンバンワ、えっと……サキさん」
「何してたの?」
サキさんがタケオミに尋ねる。
「んー、トモミとデートしてた」
あっけらかんと答えるタケオミ。おーまーえーなー!
「違う、違う。ただお互い暇だったから、映画見に行っただけ……」
なんで私がこんなに慌ててフォローしてあげなきゃいけないんだろう。怒りの感情が渦巻いてくる。
「私、帰るから」
私はその場から去ろうとすると、
「お、またなー。俺、まだトモミが好きだから、また暇なときにでも付き合ってよ」
この男は、彼女がいる前でそういう冗談言うか?
私が硬直していると、彼女が、
「トモミさん、私からもお願いね。タケオミのこと」
とか真顔で言ってくる。こいつら……普通じゃない……。
「あ、え? えーっと……」
私は言葉を探した。こんな時、なんて言えばいいかなんて分からない。
分からないから私は全力でこの場から走って逃げた。
読んでくれてありがとう。
そして、次をお楽しみに。
感想頂けたら、がんばっちゃうぞー!