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異世界に渡りてヒーローとなる  作者: 黒白鍵


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12/15

慣れてきた異世界生活⑤

「口ほどにもねえとはこの事だな」


 あれから、割とすんなり盗賊団のアジトを発見し、入口の見張りが1人しかいなかったのですぐに気絶させ、そのまま洞窟の中に入り込んだ。

 時折歩哨を立ててはいたものの、1人ずつだったので見つけ次第無力化し、そのまま先に進んでいる。

 見つかって騒がれると面倒なので、ゆっくりと進んでいる分踏破は緩やかだが、確実に奥へと進んでいた。

 一本道で脇道も無いので、これといって迷う事も無い。

 また、入口自体は存在を隠すためか真っ暗だったが、ある程度中に入ると等間隔に壁にランタンを設置していたので、光源には困らず、容易に忍び込めている。

 まあ、チンピラ崩れの盗賊ならこんなこんなものだろう。


『ふむ、残る敵勢力は30人。うち実力のありそうな人物は5名といった所だね』


 最奥部は、丸い小部屋のような形になっており、ここに盗賊団が暮らしているようだ。

 隠れながら中の様子を伺ってみれば、今は食事の真っ最中、といった様子であり、とても街を襲いに行く準備をしているようには見えない。

 シオンの言うように、中には下っ端もリーダー格も含めて30人の盗賊たちがいるが、果たしてどう攻略するか。

 下っ端ならこのまま突入して蹴散らせばいいが、さすがにリーダー格の5人と下っ端を同時に相手取れると思うほど、俺は自惚れちゃいない。

 装鎧(そうがい)を最初から使うという手も無くはないが、実際の所、まだデメリット等の検証が完全には済んでないし、あれをやるとなんだかんだすごく疲れる。

 万が一、途中で解除されるような状態になれば、俺は抵抗できずに殺されるだろう。

 そんなデメリットを考えれば、最初から装鎧を使うという選択肢は無しだ。

 せめて、最低でも下っ端を半分くらいは減らしておきたいか。


「しかしアイツら、本当に街攻めの起点を作れやすかね?」


「どっちだって構わん。どのみち拠点に収まりきらない切らない人員をどうにかする必要はあった。奴らが成功するのなら、新たな拠点を得ればいい話だし、失敗するのなら口減らしになる。どちらに転んでも損はしない」


「しかし、もしもこの場所をバラされたら……」


「その時は返り討ちにすればいい。地の利は我々にあるし、どうせ大した数の兵士は差し向けてこないだろう」


 話し声から、今回の街を襲撃する計画の内容が把握できた。

 さっき街の外でしばいた連中は、ただの捨て石って事か。

 となれば、最悪ここから撤退して、街の兵士にここの情報をタレ込んでおけばいい。

 とはいえ、リーダーっぽい男の口調からして、ここを攻められてもどうにかする算段はありそうだ。

 やはり、ここは俺がどうにかヤツらの戦力を削った方がいいだろう。

 どうにか陽動で下っ端を釣り出して数を減らすべきだろうか、と思案していると、唐突に後ろから殺気を感じ、俺はすぐに背後を振り返った。

 この感じ、チンピラ崩れの盗賊が出せるようなものじゃない。

 相当な強者だ、と身構えるも、首元に冷たい刃を突き付けられる。


「動くな」


 決して大きな声ではなかったが、俺の首元に刃を突き付けてきた人間に、俺は見覚えがあった。

 街で会った、黒髪の少女だ。

 首元に突き付けられた刀は、ランタンの光で鈍く輝いており、その斬れ味が本物だと知らせてくる。


「昨日ぶりだな」


 俺が動くよりも先に、少女が刀で俺の首を斬る方が間違い無く早いので、俺は両手を挙げて軽口を叩く。

 少女の方も、俺の顔を見て冷徹な狩人のような表情から、怪訝な表情へと変わる。


「……君は何のためにここへ?」


 刀を持つ手は微動だにさせず、少女は俺に問う。

 あくまで余計な事をすれば首を掻っ捌いてやる、という殺気はそのままだ。


「どうやってこの盗賊連中をしばき回そうかと思ってな。道中に伸した下っ端連中がいただろ?」


 ここまで少女が辿り着いているという事は、すなわち下っ端連中から情報を得たという事。

 こうしてここに乗り込んで来た辺り、この正義感の強そうな少女は、街で盗賊が攻めて来る話を聞いて、戦う決意をしたのだろう。


「目的は同じというわけか……ならば、共闘するのも吝かではない」


 共闘もアリ、という割には、少女から叩き付けられる殺気は全く変わらず、首元に添えられた刃も微動だにしない。

 まあ、そりゃあポッと出の一般人を信用できるかと言われれば、難しいだろうけども。


「だが、名も知らぬ一般人に背中を預けるのは些か不安が残る。せめて名を名乗れ」


 名を名乗れ、と来たか。

 さて、ここで本名を明かすかどうかは考えた方がいいな。

 とはいえ、この感じだと、生半可な嘘は看破してきそうだし、仮に今後も関係が続く可能性を考えるなら、こういった人物相手に禍根を残すべきではないだろう。


「俺の名前はカイト。カイト・エツオだ」


 あまり悩むのも良くないと思い、覚悟を決めて名乗ってみれば、少女は俺の顔を見て目を細めた。

 まあ、人探しの段階で名乗ってないから、目的の探し人がこんな所にいるとは思っていなかったのだろう。


「なぜ、街で会った時に名乗らなかった?」


 少女から叩き付けられる殺気が増し、首元の刃が前に押し出される。

 俺の首を軽く切った刀に、俺の血が少しばかり付着し、刀身に一筋の血痕を刻む。


「そりゃ、初対面の相手に自分を探してるって言われて、ホイホイついて行くほど危機管理能力は衰えちゃいないぜ?」


 両手を挙げていた状態から、やれやれと肩を竦めて見せると、少女からの殺気が弱まった。

 続いて、俺の首元から刀を引くと、彼女はもう一度だけこちらを一瞥してから、懐から布を取り出して刀に付着した血を拭う。


「なるほど。道理だな。ならば、この場は共闘する事としよう。私はユイ・イサハラだ。だが、心しておけ。君が何か悪事を働くような事があれば、私が斬る」


 どうやら、一応はこちらを味方と認識してくれたらしい。

 そして、少女の名前はユイ・イサハラ、という日本人っぽいもの。

 もしかすると、この世界にも日本っぽい国とかがあるのかもしれないな。


「そりゃおっかねえな。ま、心配しなくても俺は正義の味方だ。悪役よりもヒーローの方が性に合ってるんでね」


 少なくとも、彼女がとんでもなく強い存在なのはさっきまでのやり取りでわかっているので、俺は軽口を叩いてから踵を返し、盗賊たちの屯する部屋の中へと突入。

 俺が先陣を切って注意を引けば、いい感じに便乗してくれるだろう。


「さあ、見つけたぜ! 盗賊共! 今日が年貢の納め時だから覚悟しな!」


 声を張り上げ、全力で俺に注意が向くようにしつつ、リーダー格の男目掛けて突貫していく。


「1人だと? ナメやがって……やっちまえ!」


 正に、盗賊たちの視線は俺に釘付けだ。

 この隙にリーダー格を襲うも良し、俺と一緒に正面から下っ端をしばくも良しといった状況である。

 お手並み拝見といこうかね。

 そんな事を考えながら、俺は手近な下っ端を殴り飛ばすのだった。

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