慣れてきた異世界生活④
区切りの関係で少し短めです。
「へっ、口ほどにもねえ」
大した練度も無く、ただ各々勝手に襲ってくるだけのチンピラ崩れに遅れを取るはずもなく、全員を叩きのめした。
適当に武器を奪おうか、とも思ったが、俺は下手すれば素手の方が強い説があるので、そのまま叩きのめした盗賊連中は転がしておく。
その中でも、リーダー格っぽい男の胸倉を掴み、前後に揺する。
例によって一撃で伸びていたので、とりあえず意識を取り戻させたい。
「おい、起きろ! テメーにゃ聞きたい事があんだよ!」
後から来る部隊がいるのか、アジトはあるのか、この2点を確認したら用済みなのだが、どうしたものだろうか。
適当に盗賊団連中の持ち物を漁ると、何人かがロープを持っていたので、伸びている盗賊連中の両手を数珠繋ぎに縛っていく。
何組かの塊になったものの、とりあえず全員を縛る事ができた。
多分、こいつらがロープを持っていたのは、街へ侵入する際か、人質を取った時なんかに使うためだろう。
引き続き持ち物を漁っていると、水筒があったので、それを持って再度リーダー格っぽい男の所へ。
まだ伸びている男に向かって水筒の中身をぶっかける。
「冷たッ!?」
これにはたまらず、といった様相でリーダー格っぽい男は飛び起きた。
「おい、お前らの他にこの街に来るヤツはいるか?」
意識を覚醒させた男に、後続の戦力があるかを問いかけるが、ただ反抗的な目で睨み返された。
「へっ、お前にそれを教える必要があるかよ」
なるほど、仲間を売る気は無い、と。
盗賊にしちゃあ見上げた根性だ。
けど、それならこっちにも考えがあるぞ。
「死にたくなきゃ素直に答えるんだな。お前がリーダーっぽいからお前を選んだだけで、答えてくれりゃあ誰だっていいんだ」
適当に拝借した盗賊の短剣の腹で、男のデコをぺしぺしと軽く叩く。
こっちがその気になれば、お前のデコにそのままこの短剣を突き立ててもいいんだぞ、と脅してみれば、男はわかりやすく顔色を青ざめさせる。
しかし、俺の問いに答える気は無いらしい。
ふむ、思ったよりも根性あるじゃねえの。
「じゃあ素直になってくれるまで、他の連中を1人ずつ殺すか。早く話せば、お仲間が死なずに済むぞ?」
男に声をかけながら、気絶したままの下っ端一人の首に短剣を突き付ける。
切っ先を少しだけ首に当ててちょっとだけ出血させておき、より脅しに真実味を帯びさせておく。
ちなみに、これで警備兵に身柄を拘束された場合、結局は死罪か終身刑で鉱山労働などに従事させられるので、ここで死なずともただ死ぬまでの時間が延びるだけなのだが。
「わかった! 話す! 話すからその武器を下ろしてくれ!」
どうやら脅しが効いたようで、男は慌てて下っ端の助命を嘆願してきた。
絵面だけで見るとどっちが悪党かわかったもんじゃないが、これも盗賊団の大本を断つためだ。
正義のためには時として非情になる必要もある。
「この後、俺たちがある程度街の警備兵を混乱させたら、お頭が率いる本隊が手薄な所を突く予定だったんだ。俺たちが知らせの狼煙を上げたら、お頭たちはアジトからこっちに向かって移動を開始する」
男の話す内容を聞き取りながら、俺は下っ端に突き付けた短剣をまだ下げない。
部分的に嘘を吐かれている可能性も考慮しているからだ。
「アジトの場所はどこだ?」
「南の森の中だ。そこに洞窟があって、その中をねぐらにしてる」
南の森ね。
まあ、森の中の洞窟ともなれば、隠れる場所もたくさんあるし、犯罪者が潜むには理想的か。
獣や魔物がどうこうという問題もあるにはあるが、それを逆に狩れるのなら、食料にできるわけだし。
信憑性は無くもないか。
「間違い無いか?」
「誓って嘘は吐いてねえ! だから仲間の事は……」
「ふんっ」
「へぼぁ!?」
とりあえずの情報を得たので、リーダー格の男をぶん殴って再度気絶させておく。
情報の確度を確かめるため、他の下っ端を何人が叩き起こしてから同じ質問をすると、全員から同じ返答を得たので、間違いは無さそうだと判断。
とりあえず全員改めて気絶させてから、俺は南の森の方へと向かう。
連携して街を攻めようとしてた辺り、そこまで距離は離れていないはず。
となれば、森の中でも比較的浅い場所のはずだ。
「あとはアジトをぶっ潰したら、警備兵に連絡して終わりだな」
『本拠地を叩くという事は、敵の戦力が整っているという事だ。油断しないようにね』
「わーってるよ」
移動中、シオンからお小言が飛んできたが、こちとら百も承知だという話である。
一応、見張りがいないとも限らないので、適当に身を隠せるような場所を移動しながら、南に向かっていくと、30分くらいで森が見えてきた。
パッと見える所には人の気配は無いし、見える範囲には人間は見当たらない。
けど、よくよく観察してみると、人がいるであろう痕跡が見て取れる。
何度も踏まれて微妙に形の変わっている草や、無造作に転がっている骨といった痕跡だ。
形の変わっている草の痕を辿れれば、すぐに見つかりそうだな。
もしかすると、アジトにしているという洞窟の近くになったら、痕跡を消しているかもしれないが、そうなったらなったで不自然さがあるだろう。
最悪、直感に任せたっていい。
とりあえず、変に大きな音を立てて敵を警戒させるのだけは無いな、と考えて、足元に注意を払いながら先へ進んでいくのだった。




