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3杯め 初めての収入を得なさい

ゴブリンたちに祈りを捧げた後、俺はステータス画面を開いた。


眷属欄からゴブリンたちが消えていた。


「命を奪うと自動的にテイムが解除されるということか」


ゴブリンAが不思議そうにステータス画面を見ていた。ゴブリンAは、有能で、しかも俺よりも気高い魂の持ち主だ。これからも俺を助けてくれるだろう。殺すつもりはなかった。街に連れていきたい。


アイテムボックスを開き、「所持品や生き物を収納可能」という説明が書かれているのを確かめた。アイテムボックスに入れても死ぬことはないのだろうが、実験しておこう。


俺はゴブリンAに「小さな獣を生きたまま一匹捕まえてきてくれ」と命令した。ゴブリンAはすぐに走って森に入り、ウサギのような獣の後ろ脚を掴んで戻ってきた。


「テイム」


俺はウサギのような獣をテイムし、アイテムボックスに収納した。「ホーンラビットの雄。哺乳類。肉は美味」という説明が表示された。そのアイコンをタップすると、ホーンラビットが地面に表れた。ホーンラビットのテイムを解除すると、森に戻っていった。実験は成功だ。


俺はゴブリンAを見ながら「収納」と言った。ゴブリンAはアイテムボックスに収納され、ゴブリンAのアイコンが表れた。


街の門に戻った。


「お、戻ってきたな」と門番が言った。


俺は門番にナイフを返し、血で汚してしまったお詫びとして、ゴブリンの耳を一つ渡した。


こんな気味の悪いプレゼントはイヤかな、と思ったら、「ほんとにいいのかよ」と言ってうれしそうにしていた。「冒険者ギルドに持っていけば銀貨二枚だぜ。あんた、気前がいいな!」


耳一個で二万円か。ナイフを汚したお詫びにしては払いすぎだったか。


「そのうちまた世話になるかもしれん。その時はよろしくな」と言っておいた。

「おう、貸しにしときな」と言って門番は大切そうにゴブリンの耳を袋にしまった。


俺は冒険者ギルドに向かった。


受付嬢は俺の顔を見ると「早かったのね」と言った。

「まずはこれを換金してもらおうか」と言って俺はタフラシュ草を二十束出した。依頼書では「タフラシュ草二十束で銀貨二枚」となっていた。


受付嬢が箱からルーペのようなものを出して「鑑定」と言うと、ルーペが光った。


「たしかにタフラシュ草ね。ギルド登録外の買取だから半額よ」と言って銀貨一枚を俺に見せた。

「その金でギルド登録をお願いする」と俺は言った。

「じゃ、ここに手を置いて」

「こうか?」受付嬢が差し出した石盤に手を置いた。

「登録名はどうする?」


俺は少し考えて「カフィ」と答えた。Coffeeだ。この世界でコーヒーを飲むことが俺の目的なのだから、ぴったりの名前だろう。


「ではカフィさん、これがギルドカードね」


俺は緑色のカードを受け取った。「冒険者カフィ Fランク」と書かれていた。受付嬢は冒険者ギルドについて説明してくれた。ランクによって受けられる依頼が違う、とかそんな内容だ。


「ついでにゴブリンも狩ってきたんだが、買取はここでいいのか」と聞いた。

「へえ、あんた、見所があるね」と受付嬢が言った。「始めたばかりでそこまでやるなんてさ」

「たまたまだ」

「たまたまでもなんでも、えらいよ。駆け出し冒険者は、薬草摘みで満足して上を目指さなかったり、逆に難易度の高すぎる依頼(クエスト)に挑戦して命を落としたりするんだ」

「そうなのか」

「その調子でちょっとずつ上を目指しなよ」

「興味ないな」

「なんで?」

「俺は自分の好きなことをしたいだけだ」

「好きなことって?」

「コーヒーだ」

「こーひー?」

「苦く、美しく、甘く、酸っぱく、尊いものだ」と俺は言った。

「ふーん。あんた変わってるね。……魔物系の買取はあっちの解体所だよ」と言って、左にあるカウンターに案内された。


カウンターの向こうは倉庫になっていて、でかい包丁を持った男たちが働いていた。


「メイドンさん」と受付嬢が倉庫に声をかけた。

「なんだ、アネッサ」と言って、スキンヘッドのいかつい男が出てきた。

「買取りだって」と言って受付嬢アネッサは受付カウンターに戻った。


俺はアイテムボックスからゴブリンの耳の入った袋を出し、カウンターにのせた。袋には血が染みていた。


「兄ちゃん、アイテムボックス持ちかい」

「ああ。ゴブリンの耳だ。五十個ある。確認してくれ」

「ほう。こっちに来な」


俺はメイドンと呼ばれた男の後について倉庫に入った。倉庫には大きなテーブルがいくつもあり、ブタの顔をした巨人や、尻尾が蛇になった大きなニワトリなど、大小さまざまな魔物が解体されていた。部屋の中は血の匂いで満ちていた。


メイドンは袋をひっくり返して中身をテーブルの上に出し、数を勘定し始めた。


「たしかに五十だ」とメイドンは言った。「銀貨百枚だが、金貨十枚の方がいいか」

「銀貨百枚でいい」

「金貨を使うと、悪党に目を付けられることがあるからな。賢明かもしれねえ」


そうなのか。アイテムボックスがあるから、かさばる分には問題ないと思っただけなんだが。


メイドンは銀貨十枚の山を一つ作り、同じ高さの山を十個作った。


「たしかに」


俺は銀貨をアイテムボックスにしまった。


「あの森は初心者冒険者が薬草で稼ぐための場所だったんだが、ゴブリンが集落を作って困っていたんだ」メイドンはゴブリンの耳を片付けながら言った。「この数だと、集落を一つ潰したんだろ?確認ができたら、その分の上乗せがあるぜ」

「そうか」

「今日中には確認しとくから、明日また来なよ」

「わかった」


俺は冒険者ギルドを後にした。思ったよりも簡単に金が手に入った。元いた世界のお金に換算すると百万円くらいあるから、当面の軍資金としては十分だろう。アイテムボックスには薬草や魔石が入っているが、その換金はまた今度にしよう。


*  *  *  *  *  


俺は「錬金術用品の店」に入った。ドリッパーに使える道具を探すためだ。ガラス製で、すり鉢状で、底に穴が開いているものが望ましい。


メガネをかけた初老の男が「いらっしゃい」と言ったが、あまり歓迎されているような雰囲気ではなかった。


愛想が悪いだけかと思ったら、俺のすぐ後に入ってきた客には「これはこれはナリフ様、いつもありがとうございます」と言ってニコニコしていた。


「一見さんお断り」ということか。偏見かもしれないが、元の世界のコーヒー豆の焙煎所にはそういう店主が多かった。


店主が「ナリフ様」の相手をしている間に、俺は店を見て回った。魔石やらフラスコやら、所狭しと並べられていた。フラスコはガラス製だが、ガラスは厚くて透明度が低く、でこぼことしていた。コーヒーのドリッパーに使えそうなものはなかった。


天秤があったので手に取ろうとしたら、「勝手に触らんでもらえますかな」と店主に言われた。


かちんと来たが、相性の悪い相手というものはいるものだ。俺は感情を表に出さないようにして「これはいくらだ」と聞いた。


「分銅付きで銀貨三枚」


三万円か。


「高いな」と言ったら「物の価値がわからん奴はよそに行ってくれ」と言われた。


なぜ、こうも居丈高なんだ。


「また寄らせてもらう」と言って、俺は店を出た。しかし、もう来ることはないだろう。この世界にガラスが存在するとわかっただけでもよしとしよう。


俺は雑貨屋に行った。


調理器具、食器、掃除道具などが並んでいた。百均みたいな雰囲気の店だった。


「いらっしゃい!」


中年の男性が声をかけてきた。さっきの「錬金術用品の店」の店主とは違い、とてもフレンドリーだ。


「飲み物用のカップを探しているんだが……」

「それでしたらこちらに」


店主が案内してくれた先にカップがたくさん並んでいた。俺は元いた世界で使っていたお気に入りのマグカップと同じくらいの大きさ、重さのカップを選んだ。龍の絵が描かれている、なかなかかわいいカップだ。


「いくらだ」

「銅貨三枚、鉄貨四枚です」


三千四百円か。


「買った」


俺はカップをアイテムボックスにしまった。この店で小型の石臼も買うことができた。石臼は銀貨一枚でお釣りが来た。


欲しいものリスト:

①おいしい水

②コーヒー豆

③コーヒーミル

④ドリッパー

⑤ドリップケトル

⑥フィルターペーパー

⑦お気に入りのマグカップ

⑧お湯を沸かす機材


のうち、③コーヒーミルも揃った。


「ガラスの器を探しているんだが……」と言うと、店主は「それでしたら『錬金術用品の店』に行かれてはいかがですか」と言った。

「さっき行ってみたんだが、イメージ通りの品がなかった」

「となると、オーダーメイドですな」


店主は、ガラス細工をしてくれる工房を教えてくれた。


「助かった」

「いえいえ。キャベル雑貨店からの紹介だと言えば、少しお安くなるかもしれません」

「わかった」


俺は雑貨店を出た。


肉の焼けるいい匂いが漂ってきた。そういえば腹が減った。匂いの方に向かって歩いたら、串焼きの屋台があった。


「らっしゃい」と屋台の兄ちゃんが言った。

「これは何の肉だ?」

「こっちがコカトリスで、こっちがオークだね」

「じゃ二本ずつくれ」

「毎度。鉄貨四枚ね」


屋台の兄ちゃんに鉄貨四枚を渡し、四本の串焼きを受け取った。


俺はアイテムボックスに串焼きをしまい、アイコンをタップして説明を見た。


コカトリス肉の串焼き:

・コカトリス肉の串焼き。微量の魔力を含む。


オーク肉の串焼き

・オーク肉の串焼き。微量の魔力を含む。


魔物の肉には魔力が含まれるのか。


俺は外壁の門を目指した。ナイフを貸してくれた門番がいた門とは反対の、南側の門だ。門を出ると、草原があり、向こうに森が見えた。せっかくなので反対側の様子も見ておこうと思ったのだが、かわりばえはしなかった。俺はアイテムボックスからゴブリンAを取り出した。「ぎぎっ?」と言っている。


俺が外壁の外に出たのは、ゴブリンAをアイテムボックスから出して、食事を与えるためだった。アイテムボックスからコカトリス肉の串焼き二本を出して、一本はゴブリンAに渡した。俺はコカトリス肉の串焼きを食ってみた。小骨が多いが、味は悪くない。脂の乗った地鶏みたいな味だ。


ゴブリンAは、よだれを垂らしながら、串焼きを凝視していた。そうか、命令がないと食わないのか。


「お前も食え」


ゴブリンAが夢中になって串焼きを食い始めた。一口食うごとに体が光った。


ん?


最後の一口を食ったらゴブリンAの体が一回り大きくなった。「微量の魔力」の影響だろうか。


「ぎぎぃー!」と言って喜んでいる。


俺はオーク肉の串焼きも取り出して、二本ともゴブリンAに与えた。


ゴブリンAが肉を飲み込む度、体が光り、二本のオーク肉の串焼きを食べ終わると、体が光に包まれた。


「おお……」


驚いて見ていたら、光はだんだん収まってきて、ゴブリンAは少し形が変わっていた。さっきまで醜悪な小鬼みたいな形だったのに、少し人間に近づいて、小さな乳房もできていた。そういえば「雌」だったな。腰巻一つだと、目のやり場に困る。あとで服を買ってやろう。


ステータス画面を開いて眷属欄を見た。


ゴブリンゴブリンコマンダー

・ゴブリンの進化形であるゴブリンコマンダーの雌。高潔なる魂の持ち主。魔力、統率力、腕力、敏捷性が増加。ゴブリンの集落では(おさ)を務めていた。(趣味:剣術の鍛錬)[スキル:狩猟魔法][状態異常:テイムト][状態異常:呪い]


と書いてあった。


そうか、進化したか。


戦力強化のため、これからも定期的に魔物肉を与えてみよう。この世界で俺が生き残り、コーヒーを飲めるようになるには、ゴブリンAの助けが不可欠だ。


俺はゴブリンAをアイテムボックスにしまい、街に戻った。


次に目指すはガラス細工の店だ。

本日、13時、15時、17時、19時、21時に5話まで投稿します。

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