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キャバクラ「ペペ」へ再び

キャバクラ「ぺぺ」 20:00。神戸の夜はまだ静かだったが、その空気を切り裂くように、シンジは自動ドアを押して入店した。


──数日ぶりの帰還。だが、これまでのシンジとはどこか違う。

胸ポケットには、高揚を隠しきれぬ笑み。内ポケットには、2.5億円の成功報酬から得た札束を忍ばせて。


店内はネオンの灯りが緩やかに反射し、フロアを淡く染めている。

その奥からやって来たのは、栗色の髪をふんわり巻いた女。

「ぺぺ」の看板娘・琴音だった。


琴音(心の声)

《……うわ、シンジじゃん。やっぱ来たか、こいつ。

またどうせ、アフターがどうの、彼氏ヅラしてくんだろ?ウザ。》


だが、顔は笑顔を貼り付けるプロフェッショナル。

琴音 「うわぁ〜シンジさん!?めっちゃ久しぶりじゃん!元気してたぁ?どうしてたのぉ?」


シンジ(心の声)

《ついにこの日が来たんだ…!東京で手にした2.5億円、

あれは全部、この瞬間のために使うって決めてた。琴音、お前はもう落ちる。》


シンジ 「ちょっと東京でな。取引があったんだよ。まあ…お前のこと、忘れてたわけないけどな?」


琴音(心の声)

《取引ねぇ。ふん、どうせ競馬で少し勝っただけでしょ。で、調子乗って来たってとこ?ま、今日はどう出るか見ものだわ》


琴音 「え〜!すごいじゃん!何それ、めっちゃカッコいいじゃん〜!

東京で大成功じゃん!シンジさんって、ほんとスゴいねぇ!」


シンジはニヤつきを抑えきれず、少し身を乗り出した。


シンジ 「今日はお前の誕生日、だろ?忘れてると思ったか?」


琴音(心の声)

《……は?マジで覚えてたの?え、なに、意外とキモいとこあるじゃん》


琴音 「え〜!?うそ〜っ!!覚えててくれたの!?

琴音、今日来てくれるか不安だったのぉ…。でもシンジさん来てくれた〜!だ〜い好きっ!」


琴音(心の声)

《おだてとけば、良いボトルくらい入れてくれるかもね》


シンジ 「当然だ。オレの中にはいつもお前がいたからな。

……今日で終わらせようと思ってんだよ、全部」


琴音 「えっ、なにそのセリフ〜!照れる〜!……ねぇ、シンジさん。今日さぁ、誕生日だから、特別なボトル…入れてほしいなぁ?」


シンジはふっと笑った。


シンジ 「お前の好きなヤツ、何でも選べよ。今日は特別だからな」


シンジ(心の声)

《オレにはもう資金がある。何日通っても尽きねえほどにな。琴音、ついにお前を落とす日が来たんだ》


琴音 「え〜、いいのぉ?じゃあさぁ…見て?このアルバム、これが今イチバン高いやつなんだけどぉ…」


アルバムに貼られたそのボトル、名前は《ロイヤル・ドール・インペリアル》──店の最高級品。1本100万円を超える代物だ。


シンジ 「これでいいのか?いいぞ、琴音」


琴音(心の声)

《えっ……マジで!?こいつ、ほんとに払う気か?まさかドッキリじゃないよね?てか、店出るとき“金足りねぇ”とかやめてよ?》


琴音 「えええ〜!?ほんっとにいいのぉ!?……けっこう、いや、めっちゃするよ?」


シンジは笑ってポケットから厚めの封筒を取り出した。中には現金がびっしり詰まっている。


シンジ 「心配すんな。何なら、前金でもいいぜ?」


琴音(心の声)

《な、なにこれ…ほんとに札束…?え、なんなのこいつ…どこでどうしたのよ、こんなお金…?》


琴音 「すごーい!じゃあ、入れちゃいまーす!」


琴音はそのまま伝票を取り、ボーイに渡す。


琴音 「お願いしまーす!」


ボーイが伝票を覗き込んで、思わず目を見開いた。

厨房に伝えるその声が、一瞬だけ店の空気を引き締めた。


シンジ(心の声)

《よし…この勝負、勝ったな。今日はアフターに来る。それも間違いなく──》


しばらくして、ボーイが銀のトレーにボトルを載せて戻ってくる。

ボトルの中身は琥珀色の宝石のように光り、ラベルは金の箔押し。


琴音 「じゃあ、乾杯しましょっか!」


シンジ 「よし……お前の可愛い顔に、乾杯だ」


ふたり 「カンパーイ!!」


グラスの中の液体が重なり合う音とともに、夜の高揚はピークに近づいていく。


琴音はボトルの豪華さに気を良くし、自然とシンジの隣に寄り添う。肩が触れる。香水とアルコールが混ざった匂いがふわりと鼻をくすぐる。


琴音(心の声)

《……なんか、今日のシンジ…本気っぽいな。でもアタシだってプロよ。揺さぶりかけて、まだ様子見ないと》


シンジ(心の声)

《琴音……お前、まさか…こっちの気持ちに気づいて…応えてくれてるのか?いや、それとも…ただ気を良くしてるだけか?》


ふたりはゆったりとした時間の中で言葉を交わす。

シンジの目には、琴音がやたらと可愛く映っていた。


シンジ 「なぁ、琴音。そろそろさ、いいんじゃねえか?

今まで散々スカしてきたけど、今日くらい…アフター、付き合ってくれてもよくねえ?」


琴音(心の声)

《……さすがにこれで断るのもねぇ。あたしのプロ意識的にも…一応、乗っておいた方が妥当ってやつ?》


琴音 「ん〜……シンジさんが、どうしてもって言うならぁ…」


シンジ(心の声)

《よしっ……ついに、この瞬間が来た!でもまあ、まだ油断できねぇ。口約束なんて、意味ねぇからな》


シンジ 「じゃあ決まりだな。店終わったら、オレ、外で待ってるから」


──このあと、琴音が本当に店から出て来るかは、まだ分からない。

だが、シンジの中には確信めいた鼓動が響いていた。

運命の扉が、今、音を立てて開こうとしている。


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