私らがバシバシにシバいてやるからさ
夜の静けさに包まれたモーテル「陽炎」。
シャワーを終えたシンジは、廊下の洗濯機から乾いた洗濯物を手に戻ってきた。取り出したのは、自分のパンツとTシャツ、シャツ(これは先ほどまで彩香が腰に巻いていたもの)、そして彩香とすずのTシャツに、すずが腰に巻いていたタオル──どれも乾燥したてで、ほかほかと熱を帯びている。
シンジ、彩香のシャツとすずのTシャツを手に取り、ひとり言。
「あーあ、ホカホカしてるけど、これは乾燥したからだっての。あいつらの新鮮フレッシュならどんなに良かったかよ。それに洗ったから匂いも薄くなったし…でもまだちょっとだけ、染み付いたフレッシュの匂いがするな…」
名残惜しそうにシャツを撫で、シンジは部屋に戻る。
「ほら、洗濯出来てるぞ」
彩香はバスローブ姿。すずはベッドのシーツの中から顔だけ出していた。シンジはTシャツを二人に渡す。
「ありがとう」
「でも、あるのはTシャツだけなんだよね。パンティとブラとスカートは、フレッシュ取引とゾンビ撒くために失ったしさ」
「そうよ。またあんたのタオル腰に巻いて出るわけにも行かないでしょ?それにいい加減、スースースカスカから解放されたいわ。今もスースースカスカなのよ」
「私は何も着てないし」
シンジ、鼻血寸前で耐える。
「そ、そうだよな…と、とりあえずすずはTシャツだけでも着ろよ。タオルを腰に巻いてもいいからさ」
すずはベッドに潜り込みながらTシャツを着用し、タオルを腰に巻いてベッドに座った。
「ちょっとあんた、パンティとブラと、それにスカートでもパンツでもいいから買ってきてよ」
「ムチャ言うなよ。こんな時間だぞ?それに、こんなモーテルの周りにコンビニもねえし、コンビニにスカートなんか売ってるかよ」
「えー?じゃあ明日もこの格好なわけ?勘弁してよね」
「いいじゃねえか、オレは結構気に入ってるぜ」
「アンタのためにスースースカスカでいるんじゃないっての!」
すずは怒りの表情でシンジに吐き捨てるように言う。
「ひぃ〜怒るなよ」
気まずさを紛らわすように部屋をウロウロし始めたシンジ。すると何かを見つけ、ニヤリと笑う。
「おい見ろよこれ。お前らのお悩み解消だぞ」
彼の目の前にあったのは、モーテルに設置されたマニア向けの自販機。中には、女性用玩具、コスプレ衣装、精力剤、ローション、コンドーム、そして、パンティやブラのようなモノ(?)が揃っていた。
「これなんかいいじゃねえか、パンティとブラとして身につけれるぜ」
指さした“パンティ”は、ほぼ紐。しかも要所に穴が空いており、布というより…トラップ。
「ちょっと、これを穿けっての?穿いてないのとどう違うって言うのよ?」
シンジが次に指した“ブラ”は、下側のワイヤーだけで、カップ部分が存在しない。
「あんた、こんなもの付けた所でなんの意味があるってのよ?」
「いいじゃねえか、お前らがそれ着た姿、オレが見てやるから遠慮するなって!」
「どうする?すず。殺す?」
彩香はニヤけながらすずに聞く。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!殺すんならアソコで窒息させてくれよ!」
彩香とすずはため息をつく。
「な?じゃあ買うぞ?」
意気揚々と“パンティとブラ”を購入して二人に渡すが、二人は無言でそれを見つめた。
「あとはスカートだろ?これ見ろよ!ミニミニのセーラー服のスカートがあるぞ!タオルやシャツ巻くより全然良いだろ?」
コスプレ用の衣装も2着買って渡す。
「この欠陥パンティ穿いて、ブラもどき付けて、この変態スカート穿いて過ごせっての?」
「無い方が良いかもしれない…」
彩香とすずは頭を抱えている。
「お!?無しなら無しでそれでも良いんだぞ!オレは大歓迎だ!」
「一晩考えるわ…」
するとシンジ、またも目を輝かせて指を差す。
「それにどうだ?お前らが喜びそうなトイもあるぞ?見ろよあのリアリティ溢れる造形美を!」
「えーっ?どれどれ?本当だ、買って買って!すぐ使いたい!絶対気持ちいいよ!」
目を輝かせて答える彩香。
「お、ノリノリじゃねえか!ヨシお前とすずの分も買ってやるからな!」
「うれしーっ!!シンジが私を悦ばせてよね!!」
「いいねえ!オレは精力剤全部買うからよ!」
意気込んで万札を自販機に入れようとしたその時、背後に殺気。
ゆっくりと振り返ると──鬼の形相の彩香とすずがシンジを見下ろしていた。
「な、なんだよ…どうしたんだよ…?」
「本当に喜んでると思ってるの?」
「このムチを買いなよ。私らがバシバシにシバいてやるからさ」
「そ、それも大歓迎だけどな…」
さらに顔を近づけてくるすず。
「わ、分かった分かった!冗談だ冗談!」
「なんだよ…悪質なノリツッコミかよ…マジでやるかと思ったのによ…」
シンジ、しょんぼりと肩を落とす。
モーテルの夜は、まだまだ長い──。




