彩香とすずへの情
新東名高速・静岡市付近、15:30。
アスファルトに陽炎が揺れている。
富士山が、澄んだ空気の中に堂々と姿を見せていた。
ボロのミラVANが、エンジンを唸らせながら走っている。
排気音は疲れ切っていて、でもなんとか前へ進もうとしている。
その運転席には、髪を後ろでざっくり結んだ女——彩香がハンドルを握っていた。
彩香 (ダルそうに)
「ねえ、これって何時までに届けないといけないの?」
後部座席。
というより、その床に仰向けで転がっていたのが——シンジ。
シンジ(天井を見上げながら)
「18時だよ。あと2時間半。」
助手席のすずが、ミラー越しに彩香と目を合わせる。
すず(目を細めながら)
「2時間半って……。間に合うの?あんたのこのオンボロ、時速90キロ出るの?」
シンジ(手をひらひらさせながら)
「出る出る、出るよ……たぶんな。この辺から東京までは、まあ、普通に走ってりゃ2時間弱ってとこだ。何もなけりゃな……」
すず(じっと見つめて)
「その“何もなけりゃ”がすでに2回は裏切ってるわよね。川で用足してる時に猿に囲まれたし、さっきはあの女性警官にフレッシュ嗅がれて顔が半分とろけてたし。」
彩香(鼻で笑いながら)
「もし、時間に間に合わなかったらどうなるわけ?」
シンジ(溜息混じりに)
「100万円の報酬はパーだな。オレの借金200万もチャラにならねえ。」
彩香(眉をひそめて)
「でもさぁ、冷静に考えてよ。私らが運んでるこの“フレッシュ”、中国に横流しすれば10億は固いんだよ?それを、たったの100万で……0.1%。フレッシュ界のピカソたちだよ、これ。」
シンジ(天井見たまま)
「でもな……あの野崎ってやつは、裏切りに対して容赦ねえ。冷酷って言葉を冷蔵庫で凍らせて出してくるようなやつだ。まずは、こいつら届けてからだ。」
すず(膝を組み替えながら)
「ねえ、シンジ。あんたさ、マジメなのかクズなのか分かんないのよ。私らが逃げたら見つけ出して襲うって脅す一方で、最近ちょっと優しいし。」
シンジは何も答えなかった。
窓の外の流れる風景。静岡の山々が揺れている。
シンジ・心の声
(最初はこの女たち、憎たらしくて仕方なかった。でもなぁ……一緒に飯食って、猿から逃げて、警官騙して……。だんだんと、情が移っちまってんのか……バカだな、オレ)
彩香(急に思い出したように)
「そうだよ!あんた、忘れてないでしょ?あの女性警官から逃れたの、私らのおかげだからね?報酬のうち、20万は私らの取り分。あと、私は自分のフレッシュ使ってゾンビ撒いたんだから、+50万。ずっとスースーしてんだから。」
すず(うなずきながら)
「私なんて、荷台に落ちた爆淫液に片足突っ込んだんだからね?直ちに健康被害っていうか、直ちに性徴変化よ。」
シンジ(起き上がりながら)
「ああ、分かってるって。ちゃんと分配すっから……って、何だ?」
そのとき——。
ミラVANが小刻みに震えはじめた。
車体がガタガタと異常な揺れを始める。
彩香(ハンドルを握り締め)
「ちょっ、何これ!?ガクガクしてきたんだけど!」
すず(窓に手をつく)
「エンジンか?それとも、これ……タイヤ?」
シンジ(腰を浮かせて前席の間から)
「落ち着け!彩香、ゆっくり減速しろ!ハザード出して、路肩に寄せろ!」
緊迫の車内。
ミラVANはなんとか路肩へと滑り込み、停止する。
エンジンの唸りが止まり、辺りに鳥の鳴き声だけが響く。
ドアを開けて飛び降りたシンジが、リアに回る。
しゃがみ込んだ瞬間、それは見えた。
——左後輪。
ペシャンコ。
完全に空気が抜けて、ホイールがアスファルトを舐めていた。
シンジ(手で頭を押さえながら)
「おいマジかよ……。今じゃねえってのに……!」
思わず、拳でタイヤを叩いた。
だがタイヤは何も言わない。
ただそこに、哀れなまでに潰れているだけだった。
すず(窓を開けて)
「どう?どうなってんの?」
シンジ(振り返って)
「……パンクだ。」
彩香(ハンドルに額を預けて)
「ハァァ〜……ウソでしょ……。爆淫香より絶望的な展開じゃん……」
シンジはその場にしゃがみ込んで、額に手を当てていた。
静岡の空がやけに広い。
富士山は、何も知らぬ顔でそこにある。
残された時間は——あと2時間。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
【番組名】
なっちゃん・カナちゃんのナイトフィーバー! 〜フレッシュ上等!シンジの物語スペシャル〜
【オープニングジングル終了後】
なっちゃん(清楚系松山弁)
「……もう、あれやね。新東名、高速走ってるだけやのに、なんでこんなに波乱万丈なんよ!」
カナちゃん(可愛い系大阪弁)
「ほんまにな!しかも舞台は静岡市15時半!シンジ、あと2時間半で届けなあかんのに、またも事件の香りプンプンしてるで!」
なっちゃん
「いやさ、すずちゃんが言うた『あと2時間半よ。何もなかったら間に合う』ってセリフ……もう何回も聞いた気するんやけど、ほんま“何もない”ことが一回もないんよね?」
カナちゃん
「それなー!てか“何もなければ”って、自分でフラグ立ててんねんシンジ。案の定サルに襲われたし。しかも彩香ちゃんとすずちゃん、泣いてたって!どんだけジャングルやねん日本の高速!」
なっちゃん
「しかもその前は警官にも止められてるしね。なんやねんその人生RPG!」
カナちゃん
「でもでも〜、報酬が100万円っていうのは確かに安すぎるよなぁ。中国に流したら10億円級のフレッシュやろ?」
なっちゃん
「それを0.1%の配当って……やっす!アパートの保証人にもなられへん額よ?」
カナちゃん
「それやのに持ち逃げせぇへんのが、シンジの小心者たるゆえんよな〜」
なっちゃん
「逆に愛おしなってきたんよねぇ〜。最近なんか、彩香ちゃんやすずちゃんに、優しなってない?」
カナちゃん
「なってるなってる!わたしら、あれを“逆ストックホルム症候群”と命名したい!脅してた相手に情が移ってもうてる!」
なっちゃん
「しかもさ〜彩香ちゃん、忘れずに報酬のこと念押ししてるのがさすがやわ!しっかりしとる!」
カナちゃん
「うんうん。『私のフレッシュをゾンビのエサにしたんだからプラス50万』って……(笑)どんだけ命懸けの下着よ!」
なっちゃん
「しかも今もスースーしてるって(笑)視聴者の皆さん、もうね、彼女のスカートの下は完全なる無防備エリア。言うなれば、フレッシュレス地帯!」
カナちゃん
「はよ穿かしたりや脚本家!……って思ったら、いやアイツ、穿かすつもりないわ!それどころか、すずちゃんまでスースーさせようとしてるんちゃうの?鬼畜や〜〜!」
なっちゃん
「ド鬼畜!悪魔かあんたは!シンジが優しゅうなってきてる分、脚本家が極悪路線を邁進しとる!」
カナちゃん
「ほんで最後、パンク来ました!ガッコンガッコン言うた思たら、ハザード出して止まるって!18時納品、もう絶望的やで〜!」
なっちゃん
「タイヤ見たら、案の定のパンク。そりゃ頭抱えるって。作業員呼んだら爆淫香バレてゾンビ化のリスクあるしなぁ〜」
カナちゃん
「もうどうすんねんこれ!チューブラー巻いて誤魔化すとか無理やろ?」
なっちゃん
「今んとこ、彩香ちゃんのパンティと爆淫液とゾンビしか武器が無いっていう!」
⸻
【視聴者コメントコーナー】
なっちゃん
「さぁさぁお待たせしました!全国3000万人の変態読者のみんなからの声、バンバン紹介していくよ〜!」
⸻
「視聴者A」:
「彩香ちゃん、私の中で伝説になった。フレッシュ投げ捨ててゾンビ撒くとか、もはや勇者」
カナちゃん
「ほんまやな。“スカートの下で世界救う女”やで!」
⸻
「視聴者B」:
「すずのツッコミが冴えわたってて、読んでて快感すら覚える。シンジ、もっといじられてええよ」
なっちゃん
「すずちゃんは静かにド正論突き刺してくるんがええよな〜。“あんたマジメなんか何なんか分からへん”とか最高!」
⸻
「視聴者C」:
「報酬0.1%って、ブラック過ぎて笑うしかない。しかも野崎に逆らえないのがまた…怖い!」
カナちゃん
「せやねん!野崎の“何をするか分からない感”が地味に効いてんねん!」
⸻
「視聴者D」:
「スースー状態が続くってことは、パンツ未着ってこと…すごい勇気。ていうか脚本家のこだわりヤバい」
なっちゃん
「はいそこ、変態!……でも、うちらも気になってるからセーフ(笑)」
⸻
「視聴者E」:
「18時までに届けるとか、もはや都市伝説。最後はUFOがフレッシュを空輸するとかしかないやろ」
カナちゃん
「フレッシュ・イン・スペース!NASAもびっくりや!」
⸻
「視聴者F」:
「パンクが起きた瞬間、思わず“またか!”って叫んでしまった。これほど信用できない車両も珍しい」
なっちゃん
「ほんまそれ。ミラVANって、こんなにも物語を背負わされる乗り物なん?」
⸻
カナちゃん
「は〜い、今日もコメントいっぱいありがとう!視聴者のみんなの熱が脚本家の筆を加速させてるからな!」
なっちゃん
「次回はパンクどうするのか?ゾンビとの接触は?すずちゃんのスースー化あるのか?!」
二人
「全部ひっくるめて、次もぜったい見逃したらアカンで〜〜!!」
【ジングルIN→提供クレジット】
《提供:愛の織布協会、静岡県ミラVAN保守連盟、爆淫香研究所》




