10分以内に来い
ソープ街──午前1時40分。
濡れたアスファルトに、街灯の明かりがぼんやりと滲んでいる。
昼間なら客引きたちの喧騒に満ちるこの場所も、今はまるで別の世界だ。
空気は冷たく、ビルの隙間を風が笛のように鳴らしながら吹き抜ける。
手に握った小さな広告の裏に書かれた、雑な手描きの地図。
シンジはそれを睨みながら、早足で通りを進んでいた。
「普段は客引きで溢れかえってんのにな……こんな時間じゃ、まるで死の街だな……」
シャッターを下ろした店舗群と、落書きだらけの電柱を抜けながら、
シンジは口の中でぼそぼそと呟いた。
広告には「10分以内に来い」と赤ペンで殴り書きされている。
タイムリミットは、もうすぐだ。
「ちょっと待てよ。何で10分なんだよ。聞いてねえよ。ったく、どこだよ……このビルか? 軍艦島かよ……」
目の前に現れたのは、コンクリートが黒ずみ、壁面のタイルも剥げ落ちた無残なビル。
不気味な静けさが、夜の空気に染み付いている。
手描き地図の位置──間違いない。
指定されたのは、このビルの五階。
「あと3分じゃねえか……設定おかしくねえかこれ……」
思わず舌打ちしながら、シンジはビルのエントランスを覗き込む。
エレベーターのボタンを連打するも、応答はない。
「動いてねえじゃねえか!」
叫びながら、シンジは錆びついた非常階段を駆け上がった。
錆びた手すりがギシギシと音を立てる。
足元がおぼつかず、何度かつまづきながらも必死で登る。
「ハァ、ハァ……どこだ……どこだよ……」
五階にたどり着いた時、呼吸はもう限界に近い。
薄暗い廊下、すべてのドアがだらしなく開け放たれている中、
ひとつだけ、ぴたりと閉じたドアが目に留まった。
「あそこ……か……!」
シンジは最後の力を振り絞り、ふらつく足を無理やり動かして駆け寄った。
そして、ドアを叩こうと手を上げた瞬間──
スッ……と、音もなくドアが開いた。
現れたのは、スーツ姿の男。
無表情にシンジを見下ろしている。
「お待ちしていました。どうぞ中へ」
「……っ、はぁ、はぁ……」
肩で息をしながら、シンジは男を見上げた。
ギリギリだった。
あと数秒遅れていたらどうなっていたか──考えるだけで背筋が寒くなる。
「……あ、あんたは?」
「私は、先ほどあなたと話していた者です」
男は微動だにせず、静かに答えた。
中に足を踏み入れると、
そこはまるで、何年も誰も住んでいない廃墟の一室のようだった。
床にはコンクリートの粉塵がうっすらと積もり、
天井からぶら下がる裸のLED電球が、頼りなく光を放っている。
部屋の中央には、パイプ椅子が向かい合わせに二脚。
そして、安っぽい事務机が一台。
それだけだ。
「……なんなんだよこれ……」
シンジは心の中で呻いた。
「ここでどんな悪事が働かれてきたんだよ……健全さゼロじゃねえか……」
男は変わらぬ無表情で、手のひらを差し出した。
「どうぞ、おかけください」
シンジは内心ツッコまずにはいられなかった。
「いやいや……そんな丁寧に言うほどの椅子かよ、これ……」
パイプ椅子に腰を下ろすと、ギィ……と嫌な音が鳴った。
服に鉄粉でも付くんじゃないかと気にしながら、
シンジは苛立ち混じりに男に噛みついた。
「おい、あの電柱から10分でここまで来るとか、無理があるっての! 走ったんだぞオレ!」
男は、まるで最初からそうなることを知っていたかのように、静かに言った。
「失礼しました。私どもは、あなたがどれだけ本気かを試させていただきました。
10分で到着された……それが、あなたの覚悟の証です」
シンジは一瞬きょとんとした。
「……なんだよ、それ……」
心臓が爆発しそうな勢いで走ってきた自分が、まるでバカみたいじゃないか。
シンジは内心毒づいた。
「オレは……10分過ぎたら、殺し屋でも出てくるんじゃねえかって、マジで思ってたんだぞ……」
しぶしぶ態度を和らげたシンジは、パイプ椅子にもたれながら、鼻を鳴らした。
「まぁいいや。オレはアンタらの敵じゃねえ。仕事の話、聞かせてくれよな」
だが男は、すぐには答えなかった。
シンジを見透かすような、じっとした視線を送るだけだった。
だんだんと酒が抜けてきたシンジ。
ふと脳裏に、数時間前に酷い目に遭わされた琴音の記憶が蘇る。
「クソッ……」
壁を殴りそうになるのを必死で堪えながら、
シンジはこれから手にするであろう「大金」と「成功」を、
都合よく、いや、滑稽なほど甘く想像し始めていた。
胸の奥に膨らんでいく、底の浅い欲望。
虚ろな期待感。
そして、気付かないふりをしている──この状況が異常すぎるという違和感。
それでも、シンジは進むしかなかった。
だって今のシンジには、戻る場所も、守るものも、何ひとつ無かったから。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
──トーク番組「なっちゃん・カナちゃん」、生放送中!
(明るいBGMが流れる中、カナちゃんが満面の笑みで叫ぶ)
カナちゃん
「いやぁ~!今回のドラマ、すごかったなぁ!!」
なっちゃん
「スリリングっちゅうか、心拍数上がったわぁ~~~!!!」
カナちゃん
「もうさぁ!アデン国思い出したわ!」
なっちゃん
「せやせや!お茶会でな、ゆう君が変装解けそうになって必死で逃げたやつ!!」
カナちゃん
「それなっ!あれもギリギリやったけど、今回、シンジ視点やからな!!」
なっちゃん
「夢ない~~~!!!」
カナちゃん
「愛もな~~~い!!!」
なっちゃん
「あるの、欲望だけ~~~!!!」
(2人で大笑い)
カナちゃん
「しかも10分間に合わんかったらどうなってたん?ってな話やん!!」
なっちゃん
「うんうん!インチキおじさん出てきたやろなぁ!!!」
カナちゃん
「ちびまる子ちゃんの世界やんそれーー!!(爆笑)」
なっちゃん
「ちゃうちゃう!もっと強烈やったやん!!仕置人!!!」
カナちゃん
「きたきた!!」
なっちゃん
「ウイグル獄長な!!!」
カナちゃん
「北斗の拳な!!ムチ持ってビリビリやられるやつ!!(爆笑)」
なっちゃん(テンション上がりすぎて松山弁)
「ビリビリで粉々よ!!ほんだらシンジもう、粉砂糖みたいになっとるけん!!」
カナちゃん
「アデン国のガイメンも来るで?!」
なっちゃん
「ヒーダがなぁ!!地獄の三日間を共に過ごした、あのガイメンやけん!!!」
カナちゃん
「ようあんなん放送できたなホンマ(笑)」
なっちゃん
「ほんまやわ、あれぐらいは行かんとやっとれんわ!!」
カナちゃん
「でもこの話、まだ投稿してないから、誰も分からんで!」
なっちゃん
「ええんじゃ、その内、播磨颯太がUPしてくれるけん!」
(2人で手を叩いて笑う)
カナちゃん
「ほんでさ、あのビルな!!」
なっちゃん
「うんうん、今倒壊しても誰も驚かんやつな!!」
カナちゃん
「そうそう!!犯罪以外の行為が何にも行われてない建物な!!」
なっちゃん
「建設的なことゼロやけん!!」
カナちゃん
「そこに来たんがシンジやろ?」
なっちゃん
「エレベーター動いてへんからな!!(爆笑)」
カナちゃん
「最後に動いたん、昭和ちゃうかってレベル!!」
なっちゃん
「焦る焦る!!もう腰砕けやけん!!」
カナちゃん
「部屋の前でヘナヘナなっとったな!」
なっちゃん
「でもな、開いたんよドアが!!(笑)」
カナちゃん
「シンジ、一次審査は合格やったで!!」
なっちゃん
「10分で来れたからなぁ~~~!」
カナちゃん
「これも審査中って、誰が予想できたんよ!(爆笑)」
なっちゃん
「シンジ気が小さいねん、ホンマ!!」
カナちゃん
「殺し屋出てくる思たって?!」
なっちゃん
「それも一興よ!!!」
カナちゃん
「いや、死んでるし!!(爆笑)」
なっちゃん
「せやせや、ちょっとさぁ、脚本家!!!」
カナちゃん
「過去シナリオ間違うてるでぇ!!」
なっちゃん
「シンジ、琴音抱いてませんから!!!」
カナちゃん
「妄想だけな!!抱く妄想な!!」
なっちゃん(松山弁)
「一生ムリけん!!!(爆笑)」
カナちゃん
「脚本家ーー!間違えんなやーーー!!!(笑)」
(スタジオ爆笑の渦)
──そしてここからは、視聴者リアクション大公開!
なっちゃん
「さぁ、今回もコメントどんどん来とるけん!!読んでこーーや!!」
カナちゃん
「まずはこれやな!
『シンジ、走る姿がリスにしか見えんかった!』」
なっちゃん
「リスぅーー!!!(爆笑)」
カナちゃん
「ほらほら、ちょこまかしとったやん、階段!!」
なっちゃん
「ちょこまか度、ナマケモノの100倍やけん!!!」
カナちゃん
「次これ!
『ドア開いた瞬間、ホラー映画やと思った』」
なっちゃん
「それな!!開き方な!!!スゥ~やもんな!!」
カナちゃん
「スゥ~って!!エレベーターのドアより静かやったな!!」
なっちゃん
「いや、アレ、幽霊より幽霊やけん!!!」
カナちゃん
「ほんでこれ!
『シンジ、10分超えたら秒でゲームオーバーのルール草』」
なっちゃん
「マリオか!!!!(爆笑)」
カナちゃん
「ジャンプミスったら穴に落ちるやつな!」
なっちゃん
「シンジ、穴に落ちたら二度と帰れんけん!!(笑)」
カナちゃん
「ラストこれやな!
『シンジ、琴音抱けると思ってるの夢見すぎて草』」
なっちゃん(松山弁)
「夢見るだけなら自由やけん!!でもムリけん!!!(爆笑)」
カナちゃん
「視聴者もみんな分かってるなぁ~!やっぱ愛あるツッコミよ!」
なっちゃん
「シンジ、今日も愛されとるわ!!(笑)」
(BGM高まる中、次回予告へ)




