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悪魔への電話

【神戸ソープ街 1:20】


夜の街は冷えきっていた。街灯の下、シンジは一本の電柱に張り付くように立ち尽くしていた。


薄汚れた電柱に、ひっそりと貼られた一枚の広告。

「高収入案件あり」「月収200万可」「24時間電話可」ーー赤いマジックで書かれた手書きの文字が、ぼやけた街灯に照らされて浮かび上がっている。


シンジは、その広告から目を離せなかった。

手には、小刻みに震えるスマートフォン。指先には冷たい汗が滲んでいた。


(これ……普通の仕事じゃねぇだろ……絶対……)


胸の奥がズンと重たくなる。

誰もやりたがらない、相当際どい仕事。リスクも、とんでもなくデカい。

でも、そんなの分かりきってる。


シンジは、ぎゅっとスマホを握った。


(このままやと、アパートの家賃も払えねぇ。追い出されたら、オレ……ホームレスや。間違いなく這い上がれねぇ……)


咳払いひとつして、シンジは心を無理やり奮い立たせた。


(違法なもんだったら……断りゃいい。最悪、知らなかったってゴネりゃ、捕まっても執行猶予ぐらいで済むやろ……たぶん……)


自分に言い聞かせるように、震える親指でダイヤルボタンを押した。


プルルルル……プルルルル……


なかなか出ない。

夜中の1時20分。いくら24時間電話OKって書いてても、こんな時間に掛けるやつは少ないだろう。


プルルルル……ガチャッ。


音が途切れた。

でも、向こうから何の声も聞こえない。


妙な沈黙。シンジの心拍だけが、耳の奥でドクドクとうるさく響いた。


「……もしもし? オレ、電柱の広告見て、電話してんだけど」


間を置いて、低くくぐもった声が返ってきた。男だ。


「今どちらに?」


シンジは警戒心を隠しきれず、口を固くして答えた。


「……福柳町の、ソープ街」


すると、男は淡々と聞き返してきた。


「どういったご用件で?」


「いや、その、広告に……高収入案件って書いてあったから……電話かけてんだけど」


自分でも情けないくらい、声が上ずった。喉がカラカラだった。


「申し込みたい、ということですか?」


男の声には、温度がなかった。まるで録音されたテープのように。


「……まぁ、話を聞いてからだな。どんな仕事なんだよ?」


「それは、今は申し上げられません。本気で申し込みたいのであれば、直接お会いして、お伝えします」


シンジはごくりと唾を飲み込んだ。喉の奥が張り付く。


(……直接会って? やっぱヤバいんじゃねぇか?)


「……もし、オレが、内容気に入らなかったら断ってもいいのか?」


「受けるかどうかは、あなたの自由です。ただし、内容を聞いた以上、口外しないという誓約書を書いてもらいます」


シンジの背中に、冷たいものが流れた。


(こ、口外禁止の誓約書? やべぇ匂いしかしねぇじゃん……)


「……なんで誓約書なんだ?」


「依頼人のプライバシー保護のためです。我々は、依頼人から仕事を請け負い、それを遂行していただける方を探している立場です」


「……警察に捕まるようなこと、じゃねぇだろうな?」


「我々と依頼人の契約には、違法性のないことが条件になっています。信じるかどうかは、あなた次第ですが……どうなさいますか?」


男の声が、電話越しにググッと迫ってくる。


シンジは心の中で叫んでいた。


(怪しい、クソ怪しい。だけど……話聞くだけなら……大丈夫だろ)


「……わかった。どうすりゃいい?」


「そのビラ、剥がしてください」


シンジは眉をひそめた。

言われるままにビラに手をかけ、ペリペリと剥がす。


思った以上にしっかり貼られていて、剥がす時に電柱の錆びた鉄が指先に当たった。


「……剥がしたけど?」


「裏に道順が記されています。そこへ来てください。そのビラは絶対に捨てず、持ったまま来てください。……あなたは今、監視されています。逃げないほうがいい」


ドクン、と心臓が跳ねた。


(……な、何だと?)


慌てて周りを見渡した。

ソープ街の電柱という電柱に、真っ白なドーム型の防犯カメラが設置されている。


自治体か警察が取り付けたものだろう。

だが、今はそのカメラ越しに、確実に誰かに見張られている気がした。


(マジかよ……)


ビラの裏には、簡単な地図と、手書きの矢印だけが描かれていた。

そして剥がしてしまった今、糊はもう二度と貼り直せない。


「……わ、分かった。今から行く……」


電話を切ったあとも、シンジはしばらく動けなかった。

手に持ったビラが、夜風にパサパサと音を立てる。


胸の奥に広がるのは、不安と、後悔と、そして微かな期待。


(……札束掴んで、琴音抱いてるオレ……そいつを手に入れるためなら……)


自分を奮い立たせるように、シンジはぎこちない足取りで歩き出した。

ビラに記された、得体の知れない場所へ向かってーー。


◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


カナ「おー!シンジ、ついに電話したなあ!」


なっちゃん「もー、崖っぷちやから怖いもんなしやわ!」


カナ「せやけどな、結構ビビってたで?(笑)あの震え声、リアルやったわ!」


なっちゃん「なんや、違法でも『知らんかったら執行猶予』とか言い出して、めちゃめちゃ都合のええ解釈しよるしな!」


カナ「全国の青少年の皆さん、見とったらアカンで、あんな考え方!」


なっちゃん「♩戸締り用心、火の用心、一日一善~♪」


カナ「古いって!(爆笑)いつの標語やそれ!」


(2人、肩寄せ合って笑い転げる)


カナ「ほれで、やっと相手出た思たら、なーんも喋らん!」


なっちゃん「もうな、こっちまで緊張で膝ガクガクよ!」


カナ「やっと喋ったら男やしな。しかも声がまた…ヤバさ満点!」


なっちゃん「誓約書キタわ。キラーワードやな」


カナ「ブラック案件確定演出やで!」


なっちゃん「しかもや、『違法性は無い』って…ほぼ口約束やん!」


カナ「『信じる心』だけで突っ走らせるスタイルな!」


なっちゃん「いやビラ剥がさん方がええんちゃうん?って思うたら、剥がしたー!!」


カナ「剥がしてもうたー!!ビリッ!って!」


なっちゃん「まるで札束に見えたわ!電柱がキョンシーみたいにビラ抱えて…!」


カナ「絶対捨てるな警告やし、しかも監視されとるとか!」


なっちゃん「どうする?道間違えたら背後から忍者来るんか?」


カナ「さあもう行くしかないで!」


なっちゃん「地獄か、それとも地獄か!」


カナ「どっちも地獄やないかい!!(爆笑)」


(また2人、ソファでバンバン叩きながら笑う)


なっちゃん「ほんで琴音ちゃん抱く妄想しよるしな!」


カナ「札束で物言わすとか、ゲス過ぎるやろシンジ!」


なっちゃん「いや~、ゲス界のオリンピック代表決定やな!」


(なっちゃん、笑いながら手をひらひらさせる)


カナ「ほんまでも、脚本家すごいわ!」


なっちゃん「最初はな、のぞゆうの甘~いラブストーリーばっかやったのに!」


カナ「ここに来て、まさかの犯罪系サスペンス!」


なっちゃん「いや、まだ犯罪起こしてないけどな!(笑)」


カナ「悠依のシーズンも結構サスペンスあったけど?」


なっちゃん「そうやったわ。あの時もスリリングやったけど、今回ガチでドロドロやからなぁ!」


カナ「なににせよ、オモロなって来たわ!」


なっちゃん「オモロー!」


カナ「いやそれ滑ってるやつやから!(爆笑)」


(スタジオ中にわあっと笑い声が広がる)



【視聴者コメント紹介コーナー】


なっちゃん「さあここで、今リアルタイムで届いとる視聴者コメントを大公開するで~!」


カナ「今日はめっちゃ届いてるらしいから、読むの楽しみや!」


(なっちゃん、タブレットを手にして読み上げる)


なっちゃん「まずは、ペンネーム“もやしっ子”さん!『シンジさん、命の危険とか考えてないところが逆に怖いです!』」


カナ「ほんまやな!危機感マイナスやもん!」


なっちゃん「普通は『詐欺かも』とか疑うとこやのに、琴音ちゃん抱く想像しかしてへん!」


カナ「続いて、“キラキラパンダ”さん!『ビラ剥がす瞬間、めっちゃスローモーションで見えました!』」


なっちゃん「分かる~!!(笑)もうな、剥がす手が演歌のこぶし並みに粘っとったわ!」


カナ「ビラが主役みたいな勢いやったで!」


なっちゃん「お次は“さば缶LOVE”さん。『監視されてるって言われたとき、私だったら即帰る!』」


カナ「それ正解や!うちらでも帰るわ!」


なっちゃん「いや、カナちゃんだけ逃げ足速そう(笑)」


カナ「ほっといて!」


なっちゃん「さらに、“アゲアゲ小町”さん!『地獄か地獄かってセリフ、笑い転げました!』」


カナ「ありがと~!うちらも爆笑しながら収録しとるからな!」


なっちゃん「地獄か地獄、名言にして壁に貼ろうや!」


カナ「ほんでラストは、“ミッドナイトソーダ”さん!『札束抱いて琴音ちゃん抱くとか、ゲス界のエリート!』」


なっちゃん「言い得て妙!!(笑)ほんまそのまんま!」


カナ「もうな、ゲス偏差値80や!」


(2人、大爆笑しながらスタジオがまた明るい空気に包まれる)


なっちゃん「みんなコメントめっちゃオモロかったでー!」


カナ「これからもいっぱい送ってやー!ほな次回も、お楽しみにやでー!」


(エンディングテーマが流れ、2人が手を振りながら笑顔で番組が締めくくられる)

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