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隠せない“フレッシュエアー”

桑名駅前 午前7時30分


通勤・通学ラッシュの波が、桑名駅前を埋め尽くしていた。

ネクタイを直すサラリーマン、マスク越しにスマホをのぞき込む女子高生、行き交う人々の表情はそれぞれだが――

そのどれもが、ある一点に集中していた。


その“点”とは、駅ロータリーの端にぽつんと立つ――

男。ひとり。


シンジ。

ジャケットの襟は立ち、靴は土埃にまみれ、髪は乱れ、目の奥はどこか虚ろ。

だが、それよりも人々が気にするのは――


彼の身体から、微かに立ち上る異様な「匂い」だった。


それは刺激ではなく、甘さだった。

それも、濃厚で、ねっとりと鼻腔にまとわりつくような……言葉にならない芳香。

無意識のうちに人々の鼻がひくつく。

女たちは眉をひそめ、男たちはうっすらと笑みを浮かべる。


シンジ(小声)

「……なんだよ、なぁに見てんだよ。見せモンじゃねぇぞ。……オッさん、笑ってんじゃねえよ。なに?あの姉ちゃん、目ぇ逸らした?チッ……」


この香り。

フレッシュエアー。

ミラVANの中でフレッシュに揉まれながら、6時間。

その空間はもはやポリ袋というより淫靡なルツボだった。

その芳香は、皮膚の内側、肺の隅々にまで染み渡っていた。


シンジ

「とりあえず……タクシー、いるだろ。駅前だしよ」


視線を感じながらも、シンジは歩き出す。

人混みが、わずかに割れる。

まるで“彼の香り”を避けるかのように。


タクシー乗り場に一台の車が停車していた。

ドアが開き、乗り込む。


中年の運転手が、ルームミラー越しにシンジを見て――

眉がわずかに跳ね上がった。


運転手

「……ど、どちらまで?」


シンジ

「名古屋港の第3南埠頭。頼む」


エンジンが静かにうなりをあげ、車はロータリーを抜けて走り出す。

運転手の視線が、またルームミラー越しに刺さる。


シンジ(心の声)

(なんだよ……なんか俺、指名手配でもされてんのか?それとも……やっぱ匂いか?)


ルームミラーの中の運転手は、妙に楽しげな目をしていた。

そして、しれっと口を開く。


運転手

「お客さん……なんかアレな物、お持ちなんですかね?」


シンジ

「は?アレな物? スマホと現金ぐらいしかねぇよ、他に何があるってんだ?」


運転手(笑みを浮かべながら)

「いやいや、ほら……なんて言うんですかね、ちょっと悦ばせる系のお道具とか……彼女と夜遊びした帰り、とか……?あ、いや、すいませんね、こういうこと聞いたらアレですか?」


シンジ

「いや……違ぇよ。そこの産業道路から歩いてきただけだっつの。何なんだよ」


運転手

「そっかぁ……でもね、お客さん、すっごいムンムンしてるんですよ。なんていうか……“香る”んですよね、楽しんだあとっていうか、極楽通り越して帰ってきた人っていうか……」


シンジ(心の声)

(ああ……こりゃ完全に染みついてるな……6時間もあの淫気渦巻く袋の中で、パンティとブラの山に挟まれてたんだ……そりゃ、こうもなるわ……)


シンジ

「いや、別に何でもねぇよ。……うちの匂いだよ。頼むから、黙って運転してくれや……」


運転手は、軽く片手をあげて了解の意を示す。

だが、その目尻の笑いジワは消えない。


国道23号線。

朝の光がアスファルトを照らし、車は軽快に愛知県方面へ走る。

揖斐川を渡り、木曽川を超えるたびに、徐々に景色が都市の風貌へと変わっていく。


左手にはコンビナート。

右手、ちらちらと見えてくる名古屋港の広がり。

巨大なクレーン、コンテナの山、遠くに霞む貨物船の影。

海風が、わずかにフレッシュエアーと交差する。


シンジ(窓の外を見ながら)

「……ここだ」


標識に「名古屋港第3南埠頭」の文字が現れる。


シンジ

「ちょっと、悪いけど――ここで止めてくんねぇか?」


タクシーは路肩に滑らかに止まり、シンジは窓を開ける。

朝の風が吹き込み、かすかな潮の香りが鼻腔をくすぐる。


シンジ(心の声)

(いる……この風の向こうに、あのミラVANが通った痕跡がある。まだ、遠くに消えちまってない。……フレッシュちゃん達、待ってろよ。オレが、必ず迎えに行く……)


シンジ

「……よし。このまま埠頭まで頼むわ」


タクシーは再び動き出す。

静かに、静かに――

名古屋港の第3南埠頭へと、淫気と香気をまとった男を運んでいく。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん「ぷはははは!!もう見た!?シンジ、駅前で一人ポツーンと立っとるんよ!通勤ラッシュの群衆の中で“ムンムン匂わせおじさん”になっとるやん!」


カナちゃん「アホや!ほんま電車待ってる人ら、目ぇ逸らす女子高生に、ニヤけるサラリーマンに…完全に“匂いの歩く公害”やんか!あれもう新種のポケモンやで、『クンクンシンジ』!」


なっちゃん「しかもな、本人は“見せモンちゃうぞ”ってブツブツ言いながらタクシー乗るんよ。いや見せモンやん!完全に街の珍百景になっとるわ!」


カナちゃん「運転手のツッコミも最高やったな!『お客さん…アレな物お持ちですか?』って。ええ匂いしすぎて夜遊び帰りと間違われるとか、もうおもろすぎるやろ!」


なっちゃん「ほんでシンジが『スマホと現金しかねぇよ!』って必死に否定しよるやろ。いやいや!フレッシュにまみれすぎて、皮膚の内側まで匂い染み込んどるやん!」


カナちゃん「アホや!さあこれからますます面白くなるで!!」


なっちゃん「港に向かうタクシーの中でもさぁ、運転手に“ムンムンしてますよ”って言われよるんやけど、もうそれ“香水のCM”やなくて“下着圧縮袋のCM”やけんね!」


カナちゃん「しかも最後に『待ってろよ、フレッシュちゃん…』って、港に向かって愛の宣言や!いや、もはや人質やろそれ!キモ甘ポエムで笑い死ぬわ!」


なっちゃん「シンジの必死さが逆に笑いを誘うんよ!港の風にまで淫気が混ざっとるとか、世界の終わりか!」


カナちゃん「ほな、ここで視聴者からのはがき読んでこか!」


なっちゃん「一通目!『シンジさんの匂い描写で、朝ごはんの食欲なくなりました。責任取ってください』」

カナちゃん「そらそうや!“ねっとりと鼻腔にまとわりつく芳香”って、納豆のCMでもそんな表現せぇへんわ!」


なっちゃん「次はXのコメントや!『駅前に立つシンジ、完全に歩く芳香剤。ドラッグストアで売ってたら買うかも』」

カナちゃん「いやいや!そんな危険物売ったら消費者庁が飛んでくるわ!リセッシュちゃうで、リスクセッシュや!」


なっちゃん「続いて!『運転手の“アレな物お持ちですか?”で腹抱えて笑いました。完全にラブホ帰りの匂い疑惑!』」

カナちゃん「ほんまや!運転手、探偵並みに嗅覚鋭いわ。あれ“匂いの名探偵コナン”や!」


なっちゃん「次のコメント、『窓を開けた瞬間、港の風とフレッシュの匂いが混ざる描写で、変な情緒湧きました』」

カナちゃん「わかる!港町ブルースが一気に“港町フレッシュ”に変わった瞬間や!」


なっちゃん「ラスト!『シンジが“待ってろよフレッシュちゃん”って言った時、涙出るほど笑いました。愛の告白かと思ったらただの変態』」

カナちゃん「正解!あれ愛の告白ちゃうで、“匂い依存症患者の絶叫”や!」


なっちゃん「いやぁ今日も腹筋崩壊したわ!シンジのマヌケさ、笑えば笑うほどクセになるんよ!」

カナちゃん「ほんまやな!次回も絶対見逃されへんで!このムンムンロード、どこまで続くんか楽しみや!」


なっちゃん「以上、なっちゃんカナちゃんレビューでした!」

カナちゃん「ほなまたな!」

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