ミラVANを取り戻せ
【国道23号線 桑名市小貝須付近 7:00】
朝焼けがうっすらと道路を染める中、シンジはひとり、工業地帯の縁を呆然と見つめていた。
目の前には何もない。ただ、ついさっきまで停まっていた、オンボロなミラVANの残像だけが脳裏に焼き付いている。
風が頬を撫でるたび、ポリ袋10袋分の“フレッシュ”の芳香が、まだ鼻腔にかすかに残っている──
まるで女神の残り香。いや、“爆淫香”の幻影。
「……消えた……」
呟きにもならないような声が漏れる。
「ど、どうすりゃいいんだよ……この仕事失敗したら罰金200万だろ……? しかも今までの借金100万……あわせて300万じゃねえか!」
額に手をやり、空を仰ぐ。けれど、空は何も答えてくれない。
こんな絶望の空を、希望の空なんて呼べるやつがいたら顔を見てみたい。
「くっそ……こうなったら……取り返すしかねえ……!」
ズボンのポケットから、古びたスマホを取り出す。
画面は割れている。まるで今のシンジの心そのものだ。
「……野崎か……あいつに助けを求めるしかねえ……!」
意を決して通話ボタンを押す。呼び出し音が数秒、そして──
「はい」
機械のように冷たい声。
血も涙もない、あの野崎の声だ。
「ちょ、ちょっと、物は相談だが……この業務、もし……失敗したら、どうなるんだったっけ……?」
「200万円、お支払い頂きます」
「や、やっぱそうか……!」
「もしかして、フレッシュを奪われたのですか?」
「い、いや!……そうじゃねえ……ってか、そうなんだけどさ……!」
慌てて否定しようとするが、言葉はつっかえ、逆に確信を与える。
「オレ、絶対取り戻すから!なんか助けてくれよ!」
沈黙。電話の向こうで何かを打ち込む音。
「……どうやって奪われたのですか?」
シンジは観念し、彩香とすずの美貌、そしてその罠を語り出す。
自分でも情けなくなるほどの甘さ。あれが罠じゃなかったら何が罠だってんだ。
「……絶対取り戻す……!だから!なあ、どうしたらいいか教えてくれよ!」
しかし野崎は、ため息と共にこう返した。
「そう言われましてもね……」
無情。非情。いや、冷蔵庫より冷てぇ。
「名古屋港に向かっているようですよ」
「へ……? どういうことだよ……?」
「ちょうど今、名四バイパスで飛鳥村を走行中のようです。名古屋港から、どこか海外に行くのかもしれませんね」
「な、なんでそんなことが……もしかして……GPS……?」
「ええ、まあ。あなた、持ち逃げする可能性がありましたからね。念のため、です」
「……おい、全ッ然信用されてねぇじゃねぇか……!」
心の声が漏れる。
それでも自分がやらかしてきた過去を思えば、否定できない。
「だったらよ!オレにもその情報くれよ!だろ?オマエだって、フレッシュ取り戻したいんだろ!!」
……しかし、応答はない。電話はすでに切れていた。
「クソがああああっ!!」
スマホを地面に投げつけたい衝動に駆られるが、替えがない。
シンジは一つ、深呼吸。
「……仕方ねえ……オレも、名古屋港に行くか……!」
そう決めた瞬間、スマホで名古屋港を検索。
地図を開いた途端──画面一面に広がる港湾地帯の広大さ。
「……なんだよこれ!!広すぎんだろッ!? どこ行きゃいいんだよ、マジで!」
額を押さえながら、目を細めて一つ一つ確認していく。
どれもこれも「○○埠頭」「××ターミナル」と書かれていて、まるで暗号。名前だけでクラクラする。
意を決して、港湾局に電話をかける。
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【名古屋港湾局 電話対応】
「はい、名古屋港湾局、船舶運行課でございます」
「お、おう、あのさ……今日の午前中、出航予定の船って、どれくらいある?」
「えっと、少々お待ちくださいませ……(キーボード音)……本日は12:00に“第七瑞穂丸”が“第3南埠頭”より出航予定です。行き先はフィリピンのマニラ港です」
「……マ、マニラ……っ!」
「はい。積み荷は繊維製品および香料とのことですが……何かお探しですか?」
「い、いや……なんでもねえ!サンキュー!」
ガチャ。
「……フレッシュも……繊維製品、ってことか……!」
なんとか手がかりは掴んだ。
次は、そこに向かうだけ──ただ、それが難題。
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【国道23号線・歩道】
「……タクシー、来ねぇ……っつか、こんな産業道路で流しなんて走ってるわけねぇだろ!!」
シンジの声が、朝の交通音に紛れて虚しく響く。
数台のトラックが横をビュンと駆け抜けていく。どれも泥と油にまみれた無骨なマシン。
「チクショウ……仕方ねえ、近鉄桑名駅まで歩くか……!」
ふらつく足で歩き出す。
頭の中では、ポリ袋に密封されたフレッシュたちが、まるで彼を呼ぶように手を振っている──
「待って、シンジくん……わたしたち、まだ君の手の中にいたいの……」
「うおぉおおぉ……取り戻してやるからなァァァァァ!!」
朝の工業地帯に、無職男の叫びがこだまする。
──続く。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
テーマ:ドラマ『爆走!シンジの愛の織布ロード』7:00国道23号線シーンを語ろう!
(ジングルが終わり、スタジオには満面の笑みのなっちゃん&カナちゃん登場)
なっちゃん「さぁ〜始まりました、『なっちゃん・カナちゃん』!今日もみなさんの心をフレッシュにしにきました!」
カナちゃん「今日はもう、笑い止まらへんやつやで!シンジ、やらかしすぎやろぉ!」
なっちゃん「ちょっとぉ…国道23号線で、あの呆然と立ち尽くす姿……どしたん?見た?あの背中、まるで“年末ジャンボ全部ハズレたおっちゃん”やん(笑)」
カナちゃん「いやほんまやって!VAN盗られたことより、シンジの放心っぷりが主役やったな。なんかもう、魂だけ先にフィリピン行ってもうたんちゃうか思たわ!」
なっちゃん「しかもフレッシュ、10袋全部奪われとるけんね!?愛の織布、ひとっつも残っとらんのに…“フレッシュエアーの匂いだけはきっちり残ってる”んやって!」
カナちゃん「それ!あれもう、“鼻毛に浸透するレベルの濃厚爆淫香”やったな!こびりついてるとか言いながら、めっちゃ嬉しそうな顔しとったん、ツッコミ待ちやろ!」
なっちゃん(興奮しすぎて松山弁)「鼻の穴が記憶しとるんよ!匂いの記憶、深すぎて一生消えんやつやけん!」
カナちゃん「それにしても、罰金200万確定!これ前の100万合わせて300万やで!完全に詰みました!ザ・詰将棋人生!」
なっちゃん「野崎に電話しよったのも笑ったわぁ〜“失敗したらどうなるんやっけ?”とか、知っとるやん!ボケとる場合ちゃうけんね!」
カナちゃん「野崎さんの『はい』がもう凍てつく冷たさやねん…あれや、“冷蔵庫の奥に落ちた白菜くらいの冷たさ”!」
なっちゃん「『まんまと奪われたのですか?』の言い方、もうあれやね…結婚式でブーケ投げ損ねた花嫁みたいやったわ!」
カナちゃん「GPSついてたってバレたとこも神展開やろ!野崎、シンジのこと1ミリも信用してへんやん!」
なっちゃん「“2連続で失敗したからな…”って、シンジ自身が納得しとるのがヤバいよ。信頼残高ゼロ円やもん!」
カナちゃん「電話切られるの早すぎてビックリしたで!“え?FAXか?”ってくらいの一瞬やった(笑)」
なっちゃん「で、シンジ…名古屋港調べて、あの絶望よ。“何だよこれ!”て。Googleマップ見て溺れる子犬みたいな顔になっとったわ」
カナちゃん「しかも出航12:00!行き先フィリピンやって!いや、向こう着いたらどうすんねん!フレッシュ持って行かれて、もう現地で爆淫香バブルやん!」
なっちゃん「タクシー流してないんよ、そこ産業道路!シンジ、アホみたいに手ぇ上げて待っとる姿…砂漠で雨待つバッタか思たわ!」
カナちゃん「結局、近鉄桑名駅まで歩くことにしてるし!その間もずっとフレッシュの匂いが鼻の中で『シンジ〜』って呼びかけてるとか…“幻の香りに導かれる変態仙人”爆誕やん!」
(BGM切り替わり)
なっちゃん「それではここから、視聴者のリアクションいってみよ〜や!」
<視聴者コメント>
視聴者1(20代女性):「野崎さんの冷酷な“はい”に震えた…好きです」
カナちゃん「おるんよな!ああいうクールに見下されるの、好きな人種!わかるわ〜」
視聴者2(30代男性):「フレッシュエアー嗅いで記憶するシンジ、もう職業・変態でいい」
なっちゃん「名刺に書いてほしいわ〜『芳香認識士』とかでええけん!」
視聴者3(40代主婦):「GPS仕込まれてるのにまだ“信用されてない”って気づくの遅い(笑)」
カナちゃん「遅すぎて草やな!もはや“鈍感力”で防御しとるで、あれ!」
視聴者4(大学生):「産業道路でタクシー待つとか、人生なめとる」
なっちゃん(松山弁)「まっすぐボケの一本道よ!もう“アホの国道23号線”言われとるけん!」
視聴者5(匿名):「フレッシュ10袋奪われて、鼻に残った香りだけって…報われなさ過ぎて逆に笑える」
カナちゃん「恋の残り香ちゃうねん!変態の残り香やで!」
なっちゃん「いや〜今回も最高にフレッシュで爆淫香なドラマでしたな!」
カナちゃん「シンジの運命は名古屋港にかかってる!みんな、まだまだ目が離されへんで!」
なっちゃん「次回予告の前に、ひとことだけ。“フレッシュは裏切らない、裏切るのは運搬役”!」
カナちゃん「名言出たわ!(笑)それではまた次回〜!」
二人同時に「ばいば〜い!」
(ジングルフェードアウト)
次の展開、楽しみにしてるで!続きを作る準備はできてる?




