名阪国道と武装集団
名阪国道、深夜3時20分。
濃い夜霧が谷間にたまり、視界は白くにじむ。
道路脇のガードレールは湿気に濡れ、ぼんやりとライトを反射している。
路肩の草木はじっと息を潜め、オメガカーブを前にした道が、まるで獲物を待つ蛇のようにうねっていた。
そんな中、うなりを上げる一台の軽バンが、喘ぎながらその坂を這い上がっていた。
ミラVAN。
年季の入った白のボディは泥でくすんでいる。
その中には、濃密な“フレッシュ”が10袋。
天井近くまで膨れ上がったポリ袋が、夜の冷気に微かに湯気を立てていた。
ハンドルを握る男の顔には、汗と焦り、そして一抹の興奮が張り付いている。
シンジ「おいおいおい…このボロ、ただでさえ登坂に弱ぇのに…よりによってフレッシュ10袋も積んでんだぞ!?アクセルべた踏みでも40km/hしか出ねえじゃねえか…!なぁ、頼むから…今だけ馬力上がってくんねぇか、なぁ、愛でどうにかならねえか!?」
ミラVANは喘ぎながら登る。
エンジンが「ンヴァァァァァア」と情けない咆哮を上げ、傾斜に必死で抗っている。
辺りにはトンネルから流れ出たような空気が淀み、走行音は闇に吸われて不気味なほど静かだった。
そのとき──前方に、ゆっくりと這うトレーラーの姿が浮かび上がる。
赤いテールランプが霞む霧の中、異様なほど低速で、まるで待っていたかのようにそこにいた。
シンジ「あんたも大変だなぁ!……いや、助かるわ。ちょうどよかった、こっちも全然スピード出ねぇんだよ。仲間意識、な?」
しかしその瞬間、シンジのミラーが光を捉える。
──後方から、もう一台の巨大なトレーラーが近づいてくる。
その速度は異常だ。
グングンと距離が詰まる。
シンジ「ちょ、ちょっと、ちょっとぉ!?おいおいおい、そんなに詰めるなって!これ軽だぞ!?フレッシュ満載の精密機械だぞ!?安全運転ヨロシクぅ!」
そして更に右側──もう一台のトレーラーが、すうっと並びかけてくる。
黒いボディ、無灯火。無音。
その迫り方は、まるでシンジを囲むように計算されたようだった。
シンジ「……は?囲まれてんのか?な、なにこれ、コントか?ははっ……やだなぁもう、冗談はよしてくれよ……」
オメガカーブに差しかかった。
見通しの悪いS字が、重々しく口を開けて待っている。
だが、ミラVANの視界は、トレーラーの壁に閉ざされていた。
シンジ「おい!見えねぇってばよ!これマジでヤバいやつだろ!なんだよこれ……まさか、こいつら……フレッシュ狙いか!?いや、フレッシュ強盗!?え!?そんな需要あるの!?」
その時だった。
右のトレーラーのサイドがゆっくりと開き、鉄製のゲートがバタンと落ちる音が、谷間に響く。
中から姿を現したのは──全身黒ずくめ、バラクラバを被った武装集団。
ライフルを背負い、ショックバトンを携え、まさに戦闘員そのもの。
シンジ「ひぃ!?やっぱそうだ!フレッシュ狙いのエロ傭兵団だコイツら!絶対にそうだろ!わかる、俺にはわかる!!なんだよこの夜のMGSみたいな展開!こっちは素人だぞ!おい!ナイフも持ってねえぞ!」
その一人が、ミラVANのボンネットに飛び乗ってくる。
重みで前方がグラつき、ワイパーがビビビッと空回り。
シンジ「あっばばばばば!ちょ、やめろって!やめろぉぉ!この中身だけは!この中身だけは渡せねぇんだよぉぉ!」
それでも、シンジはハンドルをグワングワンと左右に切る。
エンジンが泣き叫び、軽バンのタイヤがキキキィィと鳴く。
そして──戦闘員は振り落とされた。ボンネットから転がり落ちて、後方のアスファルトに叩きつけられる。
シンジ「っしゃあああ!!落ちたぁ!ザマァァァ!一昨日来やがれってんだ!こっちはフレッシュ守るマンなんだよ!!」
しかし──次の瞬間。
さらに二人目の戦闘員が飛び乗ってくる。
今度は手に、ゴツいハンマーを持っていた。
シンジ「うおおおお!?ハンマー!?それでガラス割るつもりか!?ちょ、待ってくれ、それやられたらもう……もう……オレ、終わりだってば!!」
ハンマーが振りかぶられた、その瞬間──
シンジ「そうだ……そうだ!!オレには最終兵器があったんだよ!!」
ガチャッ、キュルキュルキュルキュルッ……
ミラVANの手動窓が、シンジの手でぐるぐる全開にされていく。
古びたレールがギギギッと唸り、密閉された空間にこもっていた“それ”が、ついに外気に解き放たれる。
──ブワァッ!!
濃縮されたフレッシュエアーが、一気に四方八方に拡散する。
果てしなく甘く、妖しく、体内から溶かされるような香り。
一瞬で空気の密度が変わり、霧の中に甘い痺れが混じる。
戦闘員の目が、かっと見開かれ、次の瞬間──
戦闘員「んはあああああ……」
戦闘員2「これが……“フレッシュエアー”の……ちからぁ……」
──バタッ、バタバタッ。
次々に、トレーラーの荷台の中で失神。
右側のトレーラーが、運転手ごとヨダレを垂らしながら蛇行を始め、ガードレールに突っ込みながら横転。
ドォォォォン!!
轟音が夜を裂き、爆音とともにトレーラーが横転した。
シンジ「すげえええぇぇ!!フレッシュエアーのパワー!!あいつら全員ヨダレ垂らして昇天してたぞ!?なんつう匂いだよ、これ兵器じゃねえか!!」
後方のトレーラーも、停止。
運転手がドアを開け、ふらふらと降りてくると、ボンネットに鼻を押し付けてクンクンクン。
遠くで「あはぁん…」と誰かが崩れる音が聞こえた。
右車線が空いた。
シンジ「チャンスだ……っしゃあああ!!いくぜぇぇぇえ!!」
ギアをガチャンと落とし、アクセルを思い切り踏み込む。
ミラVANがフレッシュの加護を受けて再び加速する。
オメガカーブを抜けるその瞬間──
前方のトレーラーが幅寄せしてくる。
シンジ「うおっ、来やがったか!?でもなぁ、もう遅ぇんだよ!!」
ミラVANはすり抜け、しかしトレーラーは勢い余ってガードレールに衝突、見事に横転。
運転手の目には、ハートマークが浮かんでいたのを、シンジははっきりと見た。
シンジ「おいおい……恐ろしいよ、フレッシュ……オレを、守ってくれたんだな……ありがとう。今度はオレがお前らを守るからな……」
助手席のフレッシュの袋に、そっと手を添える。
その表面は、ほんのりと温かくなっていた。
ミラVANは、オメガカーブをクリアして、亀山方面へ向かっていく。
夜明け前の名阪国道──
シンジとフレッシュの物語は、まだ始まったばかりだった。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「ちょちょちょ!来たでカナちゃん!シンジ、ついに名阪国道や!しかも時間は深夜3時20分、オメガカーブ突入前やん!」
カナちゃん「おおおおっ、あそこ天理の魔のカーブやんか!事故多発スポット、教科書にも載るレベルのS字やで!そら武装集団まで出てくるで!」
なっちゃん「ほんであれよ、軽バンやのに“フレッシュ10袋”も積んどるって…もう無茶苦茶やん!40km/hでゼーハー言いよるのに、そこに後ろからトレーラー来るとか…トリプルサンドイッチやん!」
カナちゃん「せやな!普通は“車線変更できんわ〜”ぐらいやのに、こっちは『武装集団登場!』やからな!しかもバラクラバの黒ずくめやで!?完全にMGSモード突入やん!」
なっちゃん「わははは!ほんまや!シンジの悲鳴がリアル過ぎて、『おいおいフレッシュ満載の精密機械やぞ!?』って、そんなん言う人初めて見たわ!」
カナちゃん「で、極めつけはアレやな。窓をクルクル開けて…最後の手段、“フレッシュエアー拡散”や!必殺技やん!シュワァァって香り飛んで、傭兵団が全員『んはぁ〜…』って昇天してもうたやろ!」
なっちゃん「いやあれ爆笑やった!トレーラーごと横転してるのに、運転手の目にハートマーク浮かんどったんよ!?もうバレンタインチョコちゃうんやから!」
カナちゃん「そうそう!しかもヨダレ垂らして昇天やからな!どんな麻薬映画より強烈やで!“甘い霧に沈むオメガカーブ”…これは文学賞もんやな!」
なっちゃん「シンジが最後に『ありがとう、今度はオレがお前らを守る』って、フレッシュの袋になでなでしよった時な、涙腺崩壊したわ!ラブストーリー始まっとんよ!」
カナちゃん「せや!シンジとフレッシュのラブロマンスやな!でも次どんな敵出てくるんやろな…“冷凍派”とか“発酵連合”とか出てきたらヤバいで!」
なっちゃん「さてさて、ここで視聴者からのお便りいくで!」
カナちゃん「X(旧Twitter)からもいっぱい来とるからな、行こ行こ!」
なっちゃん「RN・夜走りのカモシカさん、『オメガカーブで武装集団出てきた時、シンジの声が完全にカーナビの“次の信号を左折です”くらい震えてて笑いました』」
カナちゃん「わははは!せやな!“右から武装集団が合流してきます”みたいな案内や!」
なっちゃん「次!RN・甘党忍者さん、『フレッシュの拡散で全員落ちたシーン、完全に“必殺!ゴールデンフレッシュエアーブレス”って技名つけたい』」
カナちゃん「めっちゃ必殺技感あるわ!次のジャンプで連載始まるで!」
なっちゃん「おお、Xからも来とる!『名阪国道でフレッシュ撒くな!香りで事故率3倍やろ!』って怒られとる!」
カナちゃん「いやもうその通りや!でも逆に安全運転推進できるんちゃう?“フレッシュエアー吸うと眠気飛びます”とかで!」
なっちゃん「最後のお便りはRN・夜明けのオメガさん、『シンジ、次は高速のサービスエリアで“フレッシュ握手会”やってくれ!』」
カナちゃん「それ絶対並ぶで!“袋ごとサインして下さい!”って言う人出るわ!」
なっちゃん「はい、今日も名阪国道からお送りしました。次回、シンジとフレッシュの旅はどこへ行くんやろか!」
カナちゃん「楽しみやな!せやけど次は武装集団よりマシな敵出てほしいな…いや、逆にもっとヤバいかもしれん!」
なっちゃん「それでは、またお会いしましょう〜!」
――エンディングのジングルが鳴り響き、二人の笑い声が夜のオメガカーブに重なっていった。




