検問
阪神高速松原線 2:20
夜の都市を貫くように伸びる阪神高速。橙色のナトリウム灯が途切れ途切れに照らす中、オンボロの白いミラVANが、ゴウンゴウンとうなり声を上げながら東へ進む。
運転席にいるのは、どうしようもなく冴えない男——シンジ。見栄っ張りでケチ、モテたためしは無いのに欲望だけは人一倍。今、この男が命運を賭けて運んでいるのは——“フレッシュ”。それも大量。10袋分。女子の愛の織布を、洗う前の状態で東京まで届けるという、倫理的にも衛生的にも完全にアウトなミッション。
ミラVANの車内は、もはや人の住む環境ではない。
シンジ(運転しながら)
「さすがの犬どもも、もう追ってこれねぇか……あのバーニーズマウンテン3匹、明らかに盛ってたよな……こえぇって。てか、よし……名古屋方面に向けて、このまま行くか……あー、エアコンは内気循環のままで頼むわ。外気なんか入れたら、このフレッシュの匂いが漏れちまうからな……いやマジで……濃くなってきてねえか? この車内の空気……」
ゴトン、と路面の継ぎ目を踏み越えた瞬間。後部座席に乱雑に積まれたポリ袋の一つがバランスを崩し、ほんの少しだけ口が緩む。
シンジ(くんくん)
「……っはああ……これ……たまんねぇな……ラクトンってやつか? それに汗と皮脂と……なんかこう、秘めたもんが混じって……熟成っていうか……芳醇っていうか……オスを惑わす悪魔の香り、っていうかよ……。これ、運転しながら嗅ぐ匂いちゃうだろ……っつーか俺、正気でいられてるのすごくね?」
メーターを見ると、スピードはかろうじて60km/h。
シンジ(舌打ちしながら)
「くそボロが……アクセルベタ踏みでやっとこれかよ……エンジン唸ってるだけじゃねぇか……騒音だけはランボルギーニ級だわ……」
ミラVANは、阪神高速松原線をひたすらに進み、西名阪道との分岐点——松原ジャンクションが近づいてくる。が、その直前。
シンジ
「……あ?」
料金所。そこに立つ警官。そして数台の赤色灯。通過車両を止めている——まさかの検問。
シンジ
「ウソだろ……!? こんなとこで検問……マジかよ!? なんで!? 深夜2時だぞ!? てか、このフレッシュ達をどう説明すんだよ!! 荷物なんですって顔できるか!?」
ミラVANは、しぶしぶ減速する。突っ切るにしても無理がある。エンジン性能的に。ボロい上に重いし、そもそも逃げ切る気力もない。
窓越しに、警官が一礼して近づいてくる。
警官
「こんばんは。飲酒検問やってまして。お酒は大丈夫ですか? ちょっとだけ窓、開けてもらえます?」
しかし今、ミラVANの車内はフレッシュエアー濃度5000ppm。開けた瞬間、芳香の暴力が車外に解き放たれるのは火を見るより明らか。
シンジ(心の声)
「マジで……開けたら終わる……この中、ストリップ劇場の楽屋と坂道グループの合宿所とでかめのバスケ部の3日分が混在してる……この車内だけで男、5人くらい召すレベル……」
警官(怪訝に)
「……どうされました?」
シンジ(苦笑いで)
「あ、いやいや、大丈夫っす……開けますね……」
スーッ……
開けた瞬間、ムワァァ……と、濃厚で艶やかすぎる香りが一気に吹き出す。湿り気すら感じるような空気の壁が、警官の顔面に直撃。
警官(即むせる)
「うっ……!! な、なんですかこの匂いは!? 運転手さん、何を運んでらっしゃるんですか!?」
シンジ(焦りながら)
「い、いや、あの、これ、クリーニング屋でして……はい……女子寮とか柔道部とかの……合宿所から洗濯物回収してる途中で……すみません、ちょっと匂い強いかもですね……(汗)」
警官(妙に半笑い)
「そ、そうなんですか……これは……かなり……強烈ですね……」
警官は鼻をひくひくさせながら、アルコール検知器を取り出す。
だが、まだ息を吹き込んでいない段階で——
ピーーーーーッ!!
機械が赤く点滅。
シンジ(パニック)
「いやいやいやいや! 飲んでないっすよ!? これはあれっす、匂いで反応してるだけ! フレッシュちゃんでっ!」
警官(やや目を細めながら)
「ちょっと……車降りて、こっちで再検査させてください」
車を降りて再検査。結果は当然「シロ」。だが、その間も警官の目は、何度もミラVANへと吸い寄せられていた。
シンジ(汗だくで)
「お、お巡りさん? もう、行っていいっすかね?」
警官(名残惜しそうに)
「あ、はい、ご協力ありがとうございました。ええ……お気をつけて……」
エンジンがブルンと震え、ミラVANはじわりと発進。
その場に残された警官は、名残を惜しむように深呼吸を一つ。
警官
「……これは……部活の終わったあとの、ロッカーの匂い……」
夜風に混じる、妖艶な香りだけが、そこにほんの少し漂っていた。
——次回へ続く。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
(スタジオ、深夜枠の収録。BGMはエレクトロ風)
カナちゃん(ノリノリ):「いやー!ちょ、ちょ、今日のは何なん!?何を見せられたん!?」
なっちゃん(爆笑):「あれなぁ…もぉ〜!シンジのミラVAN、内気循環の中で“熟成された欲望”走らせよるやん!」
カナちゃん:「しかも60キロでベタ踏み!あんな軽で全開とか、エンジンが“うぉおん!!”言うて悲鳴あげてんねん!」
なっちゃん:「あのミラ、もはや“欲望を詰めた棺桶”やけんね!“西名阪を漂う変態バーベキューの香り”やけん!」
カナちゃん:「いやホンマに、ポリ袋10袋分の“愛の織布”が、ガッサーって積まれてるとこ想像したら、もはや軽トラの荷台に春の風呂敷が舞っとるみたいやわ!」
なっちゃん(テンション上昇):「うち、あれ“性の干物市”かと思たわ!うちの地元の港でも、あんなもん干されよらんけん!」
カナちゃん:「しかも警官来たときのアレや!あの窓開ける瞬間の、あの重厚感よ!!空気じゃない!“感情が凝縮された蒸気”やで!」
なっちゃん:「あれはもう“フェロモンのスチーム爆弾”やわっ!開けた瞬間に警官の脳みそ、クラッて“え、今ここ南国ですか?”なってたけん!」
カナちゃん:「しかもアルコール検知器が、本人まだ息吐いてへんのに“ピピピーーー!”言うてるとこ、マジで腹よじれたわ!」
なっちゃん(爆笑):「あれ、もう“匂いで酔えるアルコール”やけん!サトウの切り餅レベルで反応してたわ!」
カナちゃん:「で、シンジの言い訳!“クリーニング屋ですぅ〜”て!なんで急にフレッシュ扱いされてる下着が“ストリップ小屋仕様”になっとんねん!」
なっちゃん:「ストリップ小屋って!どんなフェティッシュセレクトよ!全国のおなご連合が風評被害受けるわ!」
カナちゃん:「あと警官、地味にその説明で納得しかけてたやろ。“あ、そうですか……”みたいな!」
なっちゃん(さらにテンションUP):「もう、その警官、“職務”と“本能”の狭間で揺れとったけん!耳の裏から理性が蒸発しとったんちゃうん!」
カナちゃん:「っていうかあの人、絶対最後シンジが行った後、車のあたりで鼻ふがふがしてたで!?“空気うまっ”て顔やったで!」
なっちゃん:「警官が香り堪能しとるの、地味にホラーよ!これ、“交通検問”やなくて“性的誘惑空間の香気トラップ”けん!」
カナちゃん:「うちらも今度番組で“フレッシュエアー吸ってみた”とか体験ロケやる?そのまま帰ってこれんくなるかもやけど!」
なっちゃん(ふざけ全開):「うちら、シンジの車乗った瞬間、“わぁ〜いい香り〜”とか言うて、そのまま理性溶けて“愛の織布評論家”になる可能性あるわ!」
カナちゃん:「それもう、深夜通販の領域やん!“この香り、あなたの脳みそ直撃!”とかナレーション入れてもらお!」
なっちゃん:「“今なら10袋まとめて!さらに特典で、琴音ちゃんの春の新作付き!”って送られてくるんやろ?」
カナちゃん:「それ、“欲望の福袋”や!!正月やないけど、開けたら人生変わるやつ!」
なっちゃん:「いやぁ〜……今回の話、どこからどこまでツッコんでも底なしやわ……」
カナちゃん:「そうやねん。フレッシュに始まり、内気循環で培養され、警官の理性が蒸発して……最後は“シンジ、まさかの合法スルー”やもんな!」
なっちゃん:「あれ、“臭気まみれの一発芸”でギリ通過したようなもんやけんね。まさに“嗅覚の罠”やわ」
カナちゃん:「この先の展開、気になりすぎて鼻がムズムズしてきたわ……次回、“フレッシュ、大阪入り!”ってなったらもう番組で速報流すわ!」
なっちゃん(ウィンク気味):「けんど…琴音ちゃんのパンティって、いったい、どんだけ…」
カナちゃん(爆笑):「やめぇや!今このスタジオ、ちょっと空気重なってんで!!」
なっちゃん:「うちは!清楚インフルエンサーやけんっ!!……たぶんっ!!」
カナちゃん:「もう、それただの“自己申告”やから!しかも香りつきやから!」
(ふたりで大爆笑しながら、ジングルで次回予告へ)
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次回予告ナレーション(カナちゃん風):
「フレッシュ運搬、名阪越えたらなにが待つ!?シンジの行き先、恋か?罠か?それとも…次の検問!?お楽しみに〜〜〜!!」




