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神戸を後に

——ソープ街の廃墟ビル 駐車場 1:20——


ギィィィ……ゴトゴト……バンッ!


「ふぅ……積み終わった……ついに、ミラVANの荷室が、フレッシュでパンパンだぜ……」


シンジは達成感と、鼻腔を突き刺す奇妙な興奮の中にいた。ポリ袋10袋、総重量約100kg以上。その中身はすべて、脱ぎたて未洗濯の愛の織布、通称“フレッシュ”。


狭い密室にぎゅう詰めされたその存在感は、視覚よりも嗅覚に直撃する。


「……す、すげえ……! ……これはもう匂いじゃねえ……気体の攻撃だ……!ピンクの靄が見える……見えるぞ、空気の色が……」


ルームミラーはすでに曇って役立たず。だがシンジは笑った。


「へっ……この激古のミラVAN、フェンダーミラー仕様ってのが、逆に功を奏したな。ドアミラーだったら、助手席の袋で死角だったぜ。運がいいぜ俺……!」


問題は、このクルマがMT車であることだ。


「教習所以来乗ってねえぞ……だ、大丈夫かこれ……?」


ギアを1速に入れる。半クラ。アクセル。


「うおおおおおっ!? ぐ、グワングワンする!!」


ガクンッ、ゴンッ!!


前のめりに揺れる車体。フレッシュ袋がズズッと滑り、破れそうな音が一瞬。中から湯気のように、猛烈な“何か”が漏れ出す。


「ウハァッ!!」


シンジ、悶絶。


「たまんねぇ……!この刺激臭……っていうか……!これなら居眠りなんかしねぇぞ!一発で脳味噌に届く!」


窓を少し開ければ、即通報。完全密閉のまま、彼はそろりとミラVANを発進させた。


——ソープ街を抜け、新開地から山手幹線へ——


「さ〜て、東へ向かうぜ……!」


シンジの鼻はもう麻痺しかけていた。だが、心は妙に高揚していた。


「……そうだ、星野舞ちゃん……オレの“愛の織布ゲット”業務のターゲットだった女……」


彼の視線が、夜の街を見つめながら、にやつく。


「まだ起きてるかなぁ? ちょっとだけ見ていこう。べ、別に悪いことしてるわけじゃねぇし……見上げるくらいなら、な?」


——浜町本通から右折、星野舞のレディースマンション前——


9階、角部屋。うっすら灯りがともっている。


「おっ……灯りがついてる……ってことは……」


ガラス越しに想像を膨らませるシンジ。頬がゆるみ、心の中で語りかける。


「……舞ちゃん、オレは今から東京まで100kg超のフレッシュを運ぶ……これは壮大な愛の旅だ。成功したら、お前のフレッシュも記念にくれよな?ククク……」


その声は、夜風にさえ届かない。だが、男は満足げにギアを再び入れる。


「さて、いくか……ん?」


燃料計が点滅している。


「……な、なんだよ……ガス欠寸前じゃねえか!! 野崎の野郎、燃料くらい入れとけってんだよバカヤロウ!!」


だが、今この状態でフルサービスのスタンドへ入れば——


「この匂い……絶対通報される……あの店員の顔がピクリと動いただけでオレは終わりだ……セルフ……セルフを探さねぇと!」


——国道2号線へ。東進中、セルフスタンドを発見——


「よし……ここだ!」


ガチャ。給油ノズルを手に取り、慎重にタンクに差し込む。辺りにうっすらと広がる、あの甘く、強烈な香り——。


「……たまんねえ……ここにいるだけで身体が熱くなる……!」


そこへ、ドリフト音を響かせながら一台の改造車がやってくる。車高の低いスポーツタイプ。マフラーがやたらうるさい。


「おい、なんだこの匂い……」


窓を開けた一人の男が鼻をひくつかせる。


「やっべぇ……ムラムラしてきた……!!」


助手席の連中も騒ぎ始める。


「……おい、あのボロ車……あいつだろ……あれ積んでんの絶対やべぇブツだろ!?」


男たちの視線がシンジの車に刺さる。


「おいお前ぇ!!なん積んでんだよオラァ!!教えろや!!」


——ガチャッ!!


シンジ、ノズルを強引に引き抜く!


「やべぇ!!」


ギアを一気に2速に叩き込む!


「行けぇええええっ!!」


キュルルルルルルッ!!!


ミラVAN、悲鳴のような音を立てて急発進!!


「待てやゴラァァァァ!!」


バックミラー——いや、フェンダーミラーに小さくなる怒声と改造車の姿。


「はあっ……はあっ……!!やばかった……やばかった……」


汗だくのシンジ。だが、その息はどこか高揚していた。


「……窓開けたらアウトだ……それくらいの“匂い”なんだよこのブツは……!」


だが、ガソリンは半分も入れられなかった。


「ちくしょー……でも、あの野崎の指示通り、下道なんてまどろっこしいわ!阪神高速乗るぜ!」


シンジは右にハンドルを切り、生田川ランプへと向かっていく——


ピンクに染まる車内、視界を奪う靄、鼻腔を殴るフェロモンの嵐。

その密室で、男は狂気と希望を同時に運ぼうとしていた。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん「おお〜!ついにシンジ、東京に向けて出発よ!荷台いっぱいのフレッシュ積んで、ミラVANでブロロロやん!」


カナちゃん「いやいや!荷室パンパンの中身が“愛の織布”って何やねん!引っ越し荷物ちゃうんかいな!しかも100キロ超えの洗濯してへんやつやろ?もう車内サウナやん!」


なっちゃん「しかもシンジ、匂いで頭クラクラしよるのに『これは脳に届く!眠気覚まし!』とか言いよるけんね。眠気覚ましにしては強烈すぎやろ!」


カナちゃん「どんなブラック企業のドライバーも使わんわそんな方法!運送業界の教本に載せたら一発アウトやで!」


なっちゃん「しかもさ、MT車。教習所以来で『うおおお!グワングワンする!』って、そらするわ!半クラとフレッシュの匂いのダブルパンチや!」


カナちゃん「そんで舞ちゃんのマンション前までわざわざ寄って、『これは壮大な愛の旅や』とか言うてるのがまたヤバいねん。あんたただの積荷業務やろ!」


なっちゃん「それがガソリン見たら点滅しよるし!『野崎の野郎が入れとけや!』とかキレよるけど、自分で確認せえや!」


カナちゃん「ほいでセルフスタンド行ったら、匂いに気づいた走り屋が『ムラムラしてきた!』って群がってくるやん!いや、それ違法の香水ちゃうで!ただのフレッシュやで!」


なっちゃん「ほんで慌てて急発進!『行けぇええ!』言うて逃げよるけど、フェンダーミラーで後ろ確認って、どんだけ昭和レトロな逃走劇よ!」


カナちゃん「せやのに阪神高速乗ろうとしてんのがまたアホやな!下道まどろっこしい言うてる場合ちゃうやろ!燃料半分しか入れてへんのに!」


なっちゃん「いや〜、もう出発シーンからこんだけ波乱やけん、東京着くまでに何回爆発するんか楽しみじゃわ!」


カナちゃん「爆発言うな爆発!袋破れたらそれこそ事件やで!」


なっちゃん「さて、ここで恒例!視聴者からのはがきとXのコメント読んでみよや!」


カナちゃん「来てるで来てるで!まず一枚目。『シンジの車内、もうガスマスク必須やろ!』」


なっちゃん「うんうん!ほんまや!あの靄、特殊部隊が突入するときのやつよ!」


カナちゃん「次はXから。『荷室の匂いでシンジがハイになってるの、まるでカーナビに頼らず幻覚で道案内してるみたい』」


なっちゃん「出た!幻覚ナビ!『次の交差点を右です』とか言わんで『舞ちゃんの笑顔が右に見える』とかやろ!」


カナちゃん「こわすぎるわ!続いて、『阪神高速に入った瞬間、車内がラブホテル状態』って。え、これは比喩にしてもセンスあるな!」


なっちゃん「確かに!ネオンちゃうけどピンクの靄が光っとるけんね!しかもムードは満点やけど、ロマンチックの“ロ”の字もないわ!」


カナちゃん「最後にこんなんも来てるで。『燃料計点滅で旅立つとか、まるでロケット発射の時に燃料足りませんって表示されてるのに発射ボタン押す感じ』」


なっちゃん「わかるわ〜!NASAでも止められる案件やのに、シンジはGO出すけんね!」


カナちゃん「ほんま、どんだけ自分を宇宙飛行士やと思ってんねん!荷物がフレッシュやなかったら、映画化してもええ話やのに!」


なっちゃん「言えてる!こりゃ次回も見逃せんわい!」

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