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積み込み

ソープ街の廃墟ビル。野崎が奥の部屋へと静かに姿を消してから、数分が経った。壁の時計の秒針がカチ、カチ、と間抜けに響く中、シンジは独り、事務所の中央に取り残されていた。


「……行けってことだよな?」


誰にともなくつぶやくと、照明の届かぬ奥に、ぽつんと浮かび上がる重厚な鉄製のドアが目に入る。黒く塗られたそれは、やけに無機質で冷たく見えた。シンジはごくりと喉を鳴らし、足音を忍ばせながら近づく。


「おっ…奥の部屋って、ここか…」


鉄のドアに手をかけ、慎重にゆっくりと押し開ける。


キィィィ……。


重たく軋む音とともに、ドアの向こうから突如、圧倒的な“匂い”が鼻腔を襲う。


「うおっ!な、なんだこりゃあ!!」


シンジの顔が一気に歪む。鼻を覆うも遅い。艶やかな甘さに混じって、どこか酸味を帯びた湿度のある芳香。鼻腔の奥が焼かれるように熱い。


「お、オホッ!オホッ!……うわ、むせた……やばっ…やべぇ……!」


慌ててドアを閉める。シンジは背中を壁に預け、ぜえぜえと息を整えながら、両手を膝に置いて小刻みに震えていた。


「な、なんて例えりゃいいんだよ……香水みてえだけど、いや違う……なんかこう、ピンク色の霧に包まれたみてぇな……あっ、いや、これはもう女子更衣室…そう、放課後の女子更衣室って感じだよ、あああ…っ、やばいって、マジで。」


だが、好奇心に負けた。


再び扉に手をかけると、今度は思い切って開いた。室内には薄暗い照明がぼんやり灯っていて、十のポリ袋が幾重にも重ねられていた。無造作に積まれた袋たちは、まるで“甘美なる禁忌”の塊のように、不自然に膨れていた。


「おぉぉ……すげぇ……こ、これ全部……女子の、あれ、だよな?」


よだれを拭うように袖で口元をぬぐい、恐る恐る一袋を持ち上げる。


「うっ……!お、おもっ……重っ!マジかよこれ……水吸ってんのかってくらいずっしり来るぞ……」


腕をぷるぷるさせながら袋を抱え直す。その瞬間、袋の口から、ふわりと空気が漏れた。


「ぶっ!!モロ嗅ぎだぁあぁ!!」


慌てて顔を背けたが、もう遅い。濃密な香気が、鼻腔から脳へ、そして魂へと突き抜けてくる。


「こ、こりゃ……たまんねぇな……くっそ……なんて匂いだよこれ……洗ってねぇんだよな、つまり……フレッシュ……!こりゃあ……たまんねぇ……」


袋を重ねて両腕で抱えると、慎重に階段へと向かう。


ギシッ……ギシッ……。


古びた鉄階段が悲鳴を上げるたびに、袋の口から微かに空気が漏れ、香りが鼻先をかすめてくる。シンジの目はうっすらと潤み、顔色は徐々に紅潮していった。


「ぐっ……ダメだこれ……クラクラしてきた……あと4回?……マジでやんのこれ?……こりゃ修行だよ、修行……」


階段を降りきると、廃墟の奥の駐車スペースに、ぽつんと停まっている軽のバンが目に入った。古びたミラVAN。塗装はところどころ剥げ、バンパーにはひびが走り、車体の揺れすら疲れているようだった。


「おいウソだろこれ……昭和の亡霊かよ……何十年前の車だよ、MTだし……ナビもねぇし、エアコン生きてんのか……?」


悪態をつきながら、リアゲートをガタンと開け、最初の二袋をゆっくり積み込む。


ドサッ……プシュ……。


「オホッ、オホッ!……くっそ……こ、これは……キツい……いや、最初はご褒美かと思ったけどよ、これずっと嗅いでたら死ぬぞマジで……脳がやられちまう……!」


ゲートを閉めると、しばし放心した。吐息は熱く、手はわずかに震えている。


「で、これ……東京まで運べってか?……正気かよ……。俺が運び屋?いや、違うな、俺はもう――」


自嘲気味に笑った。


「愛の織布輸送業者ってわけだ……恐るべし、“フレッシュ”の破壊力だぜ……!」


そして、重たい足を引きずるようにして、シンジは再び階段を登り、次なる袋を取りに奥の部屋へと戻っていった。


—(つづく)—

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんのトーク番組「なっちゃん・カナちゃん」生放送中

〜「深夜の爆笑・愛の織布SP」〜


(スタジオ、満面の引きつった笑顔の二人。前のめりでテーブルに突っ伏しかけながら、OPテーマが流れて止む)


なっちゃん:「……ぷはぁ〜。いやもう、なぁカナちゃん。ちょっと深呼吸してええ?はぁ〜……」


カナちゃん:「も〜う……。ほんっま、脚本家どないなっとんねん!頭のネジ2、3本どっか行方不明やでこれぇ!」


なっちゃん:「行方不明どころか、ネジそのものが買われてない気がするんやけど?ロフトで買お思たけど“入荷未定”です言われたみたいな仕上がりやで、これ!」


カナちゃん:「ほな、あれやな。『愛の織布』言うたら聞こえは清楚やのに、実際“分泌物がしゅんでる”て……。おでんの大根やないねんから!」


なっちゃん:「はははっ!しかもその“おでん大根”、真空パックにして保冷車で運んどるような勢いやん!?どピンクの大根て、どこの鍋の具よ!?」


カナちゃん:「それでいて“芳香剤にできるんちゃう?”とか言うてたよな?どこで売るねんそんなモン!ドンキの……暖簾の奥や!あそこにしか置けへんて!」


なっちゃん:「わかるわかる〜!しかも、あの袋10袋やで?“パンパンに詰まってる”言うてたやん?袋の口ギッチギチやし!」


カナちゃん:「空気がプスッて漏れるたびに、シンジが『モロ嗅ぎだあ〜!』言うとるやん!えぇ大人が、真夜中に階段降りながらなにやっとんねん!」


なっちゃん:「ほんでその匂いの可視化が“どピンク”って……何の冗談やろか?ドーピングちゃうねん、ど・ピ・ン・クやで!アホの極みかい!」


カナちゃん:「いやもう笑い過ぎて涙出てくる……ほんならアレやな?“どピンクのエアーが階段でプスップスッ!”て、炭酸ガスちゃうぞ!」


なっちゃん:「いやマジで……東京までこれ運ぶとか……。クルマ!なんやった?ミラの超古い商用車?MTやて?」


カナちゃん:「平成一桁やろ!ナビもエアコンもないやつで、あんな袋を10袋って……中身が全部“フレッシュ”やで?車内、呼吸できひんって!」


なっちゃん:「シンジの鼻腔が心配やわ……あの空気、ちょっと嗅いだら三半規管やられる勢いちゃうん?」


カナちゃん:「いや、もはやテロやで?“愛の織布”で攻めてくるテロ。しかも本人めっちゃ真剣に『任務不成立になったらまずい』とか言うてて、涙出るわ!」


なっちゃん:「脚本家、のぞゆうの時は“青春の結晶”みたいなセリフ書いとったやんな?まさかその筆が、数年後こんなアホ脚本描くとは……人間わからんわぁ……」


カナちゃん:「もう尊敬しかない。変な方向で!」


(観覧席から笑いと拍手)



なっちゃん:「ほなここで!視聴者から届いた爆笑リアクション、見ていこや!コメント大公開〜!」


<視聴者コメント:Xより>


@puni2_mofumofu

『“どピンクエアー”で腹筋死んだwww まさかパンティの空気で中毒になる主人公が見られるとはwww』


カナちゃん:「うんうん、“中毒”て、ほぼ幻覚見とったよな!“ピンクの霧が見えた”って、もはやダークソウルのボスやで?」



@ikuiku_milk

『え、これ配信で観てたけど、途中から口閉じて笑えんかった。お腹痛い。脚本家どうかしてる(褒め言葉)』


なっちゃん:「せやろせやろ!?このお腹痛い感覚、整腸剤じゃ追いつかんもん!」



@panty4ever

『愛の織布というワードセンス、もはや文学。フレッシュの扱い方、国家資格の領域』


カナちゃん:「ほんまそれ!“国家認定フレッシュ輸送士”ってあったら、シンジが第1号やな!」



@kirei_na_kutsu

『この世界観、どこまでいくんやろ……。リアルとギャグの境界がどピンクに染まってて草』


なっちゃん:「なんや“どピンクに染まる”って!もはや新種のホラーやで!でも観てまうやんな?」



@sanchan_kyun

『車内の空気がヤバい、で爆笑!軽バンでフレッシュ輸送ってアニメ化してほしい!』


カナちゃん:「あかんあかん!TVで放送されたらPTAが泣く!でもBlu-rayは即買いやな!」



なっちゃん:「ということで、今日も爆笑&頭のネジ外しきった放送でした!」


カナちゃん:「続きが気になる人、マジで覚悟してな〜。“どピンクの向こう側”でまた会おな!」


なっちゃん:「ほなみんな!“フレッシュ”な夢見てな〜!」


カナちゃん:「おやすみやで〜!(笑)」


(テーマ曲が流れながら、二人が崩れ落ちて爆笑。画面がフェードアウト)

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