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“不沈艦”琴音

キャバクラ“ぺぺ” 21:00。


煌びやかなシャンデリアの下、安っぽい高級感を演出するフロアには、場末特有の湿った熱気が漂っている。


シンジはソファにどっかりと座り、手元のグラスを揺らしながら、琴音を見つめていた。


琴音は、整った顔に営業スマイルを張り付けながら、するりと隣に腰を下ろす。


「シンジさぁん、もう一杯いいですかぁ?」


甘ったるい声。わざとらしいウィンク。

しかし琴音の内心は、冷ややかだった。


(はは、もう顔真っ赤やんコイツ。弱っ。こんなんで私をお持ち帰りしようとか、舐めすぎ)


シンジは、ふにゃふにゃの笑顔で応じた。


「うん、いいよー。琴音ちゃんも、だいぶ…いい感じになってきたんじゃない?」


その言葉に、心の中では皮算用が弾け飛ぶ。


(よっしゃ、イケるかもな。さすがにこれだけ金かけたら、ガードも緩くなるだろ)


大胆になったシンジは、琴音の肩に腕を回した。


だが琴音は、わざとらしく小さく叫ぶ。


「わぁー、ダメですよぉ!うちはね、お触り禁止なんですからぁ!」


心の声は、冷酷そのものだった。


(ふざけんなクズ。そろそろ出禁リーチやな)


ボーイが、静かに、しかし明確な敵意を込めてシンジを睨みつけた。

空気がピキリと張り詰める。


シンジは慌てて手を引っ込め、歯の浮くようなセリフを吐いた。


「あー、悪い悪い。琴音ちゃんが可愛すぎるのが悪いんだって。だったらさ、ここじゃダメでも…店の外でなら、いいだろ?二人きりになればさ」


(ったく、ボトルも入れてんだし、チョコも頼んでんだぞ。少しぐらい、なあ?)


琴音は作り笑いを崩さず、グラスを手に取った。


「んもー、シンジさんったらぁ。そんなこと言ったら、罰ゲームですよ?ほら、グラス空いてるから、ちゃんと飲んでくださぁい」


(あとちょっとやな。もう寝落ち寸前やんコイツ)


シンジは、酔った勢いに任せて口走った。


「じゃあさぁ…琴音ちゃん、オレにどんな罰してくれんの?縛るとか、叩くとか…?オレ、Mだから、ガチでイケるよ?」


視界が二重になり、テーブルが回って見える。

必死に琴音の顔を捉えようとするが、ピントが合わない。


(もうすぐだ…もうすぐ琴音が、オレに身を預けるんだ…)


琴音はグラスを傾けながら、にっこりと微笑む。


「ふふっ、大丈夫ですかぁ?シンジさん、顔真っ赤ですよぉ」


(はい終了。そろそろ眠れ)


ぐらり、と体が揺れた次の瞬間、シンジは椅子に崩れ落ちた。

——視界が黒に落ちる。


マイクのアナウンスだけが響く。

「琴音さーん、次の卓お願いしまーす」



数時間後。


「お客さん!お客さん!閉店です!起きてください!」


鋭い声に、シンジは目を覚ました。


頭痛。吐き気。最悪な目覚め。


(う、うぅ…どこだここ…? 気持ち悪ぃ…。あれ、琴音は…?)


「え、なに?もう閉店?…い、いくら?」


足元には、琴音が飲み干した空のレミーマルタンXOのボトルが転がっている。

高級感とは無縁の、哀れな残骸。


「琴音さんはもう上がりました。残ってるのはお客さんだけです。お会計、こちらです」


無表情のボーイが、ぺらりと小さな紙を差し出した。


シンジは、震える手で紙を受け取り、その数字に目を疑った。


「……11万!?は、はぁ!?なんでだよ!!」


小さな明細には、無情な内訳が並んでいた。


指名料 8000円

ボトル代(レミーマルタンXO) 48000円

おつまみセット(4種) 4000円

延長料金(30分5000円 × 5回) 25000円

深夜料金 10000円

サービス税・消費税 9000円

合計 110,000円


「なんだよこの延長料!しかも紹介所から来たんだから指名料とかいらねーだろ!」


ボーイは、にこやかに説明する。

「セット料金には指名料含まれません。延長ごとに新たに発生いたします」


その背後に、屈強なタトゥー男たち3名。

無言で立ち尽くし、圧だけでシンジを押しつぶす。


「規定の料金となります。もしご不満でしたら、別室でゆっくりお話しすることも可能ですが?」


(や、ヤバい。別室とか絶対ダメだ。下手すりゃ、ここで人生終了だ)


シンジは必死に笑顔を作った。


「い、いや!いいっすいいっす!11万、現金でいいすか!?」


「はい。現金、カード、どちらでも」


ポケットの中の札束。

汗ばんだ手で、11万円を差し出す。


ボーイは涼しい顔で受け取り、深々と一礼した。

「ありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」


(クソッ…クソッ!!なにが”また”だよ…こんなんなら、ソープに全部突っ込んだ方がよっぽどマシだったっての!!)


シンジは、千鳥足でネオン街を彷徨う。

ポケットの中は空っぽ、心の中も空っぽ。


誰にも求められないまま、虚ろな夜を一人、歩き続けた。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん「はーい、始まりましたぁ!なっちゃん・カナちゃん〜!」


カナちゃん「今日も爆笑してもらいまっせ〜!」


なっちゃん「ほな、今日のテーマいきますよ。話題沸騰中、ドラマ『クズ人間シンジの成り上がり人生』!」


カナちゃん「いや〜、もう笑い転げたでアレ(笑)」


なっちゃん「まず、シンジもう結構酒回ってるやん!」


カナちゃん「ヨワ!(笑)相手、不沈艦琴音やで!?おるんかそんな強い艦!!」


なっちゃん「(実況モード)おっとーー!禁断のお触り行為!!レフリーが制止に入るぅぅぅ!」


カナちゃん「イエローカードや!シンジ選手、次出場停止ーー!もう一枚出たら即退場やぞ!」


なっちゃん「ちょ、琴音ちゃんが可愛いのが悪いって?何言うとんねんコイツ!」


カナちゃん「二人きりになろうとか、執念すごすぎるやろ!!」


なっちゃん「ボトル入れたから肩ぐらい抱いてええやろって…あかんあかん!」


カナちゃん「こういう奴がな、セクハラ平気でするねん!」


なっちゃん「ほな、罰ゲームしてもらおか?剣山ダイブとか、抱きつき電流棒とか!」


カナちゃん「ゲームの領域越えてるから(笑)!命かけなあかんやつ!」


なっちゃん「もうさぁ、ピント合わへんし、目の前グリングリンやし!」


カナちゃん「グリングリン言うたら洋菓子のグリン思い出したわ!タラララタッタッタ〜♩」


なっちゃん「なっつかしぃぃぃ!!(爆笑)」


カナちゃん「さあ、そろそろ出るか!?琴音のウエスタンラリアット!!」


なっちゃん「ウィーー!ラーーーリアットーーーー!!!」


カナちゃん「ワン、ツー、スリー、カンカンカン!」


なっちゃん「シンジお亡くなり〜〜〜(笑)」


カナちゃん「R.I.P〜〜〜!!」


なっちゃん「ほんでさ、ここからよ、毎度おなじみの展開!」


カナちゃん「ボーイが起こして、ここどこ?ってなって(笑)」


なっちゃん「足元、空っぽのレミーマルタンXO!!」


カナちゃん「転がる空ボトル!(笑)」


なっちゃん「店にはシンジ一人だけ!」


カナちゃん「じゅっ……11万円!!(爆笑)」


なっちゃん「明細もキッチリあるんやって!明朗会計!!でも高っ!!(笑)」


カナちゃん「寝てても指名料金発生してんのウケる!」


なっちゃん「ほいでお馴染み、ガラ悪マッチョwithタトゥー(笑)!」


カナちゃん「ご親切に『別室で説明しましょうか?』のご案内や〜!」


なっちゃん「別室行ったら翌日神戸港で身元不明やん!(爆笑)」


カナちゃん「シンジ、有り金ぜーんぶ持ってかれて!」


なっちゃん「結局、なぁーんにも得られんかったんやけん!」


カナちゃん「ハイリスクノーリターン!」


なっちゃん「ソープ行っときゃ良かったって!!(笑)」


カナちゃん「11万ってVIPコースやろ普通!!琴音のVIP殴打コースや!(笑)」


なっちゃん「ほんまこのシーズン、おもろすぎやろ!」


カナちゃん「これからシンジどうなるんやろなー?」


なっちゃん「恋とかいらんけん!のぞみちゃんと出会うとか、絶対やめてよ!」


カナちゃん「シンジにはひたすら金を失ってほしい!(笑)不幸街道まっしぐら!」


なっちゃん「ミナミの帝王出る一歩手前やからな!!」


カナちゃん「おもろいーーー!!(笑)」



【ここで、視聴者のコメントコーナー!】


なっちゃん「ほい、ここでみんなの感想見てこかぁ〜!」


カナちゃん「コメント爆速で流れてるで!さすがや!」


コメント1:「シンジの生き様、逆に尊敬してきた」

なっちゃん「いや、尊敬せんでええから!(笑)」

カナちゃん「こんなん反面教師やろ!」


コメント2:「琴音ちゃん、店のドンじゃない?」

なっちゃん「わかるわかる!!あの落ち着き、絶対裏ボス!」

カナちゃん「『琴音会』とか作ってそう(笑)」


コメント3:「別室案内のシーン、マジでホラー」

なっちゃん「ガチで身の危険感じるよな!」

カナちゃん「別室行ったら、命もってかれるで!」


コメント4:「寝てるだけで追加料金ヤバい」

なっちゃん「『寝落ち課金制度』やねん!」

カナちゃん「寝てる間にカツアゲされるシステム(笑)」


コメント5:「グリングリンのとこ爆笑した」

なっちゃん「グリングリン、ほんま目回っとるからな!」

カナちゃん「洋菓子のグリン、刺さる世代には刺さる!(笑)」


コメント6:「11万、払えたシンジ逆にすごい」

なっちゃん「そこだけは褒めたる!(笑)」

カナちゃん「生還できた奇跡やな!」


コメント7:「このドラマ、シンジの魂抜ける瞬間好き」

なっちゃん「わかるー!!カンカンカン!の音で抜けた!(笑)」

カナちゃん「リングで散った選手みたいやった!」


コメント8:「今後の展開、さらに地獄見たい」

なっちゃん「シンジの不幸旅、もっと見たいわぁ!」

カナちゃん「こっからカードローン地獄とかなったらウケる!」


コメント9:「シンジ、ソープすら断られる未来」

なっちゃん「それは哀しすぎるけん!(笑)」

カナちゃん「ソープ嬢にもドン引きされるレベル!」


コメント10:「このドラマ、シリーズ化してほしい!」

なっちゃん「わかる!『シンジ 地獄編』『シンジ 破産編』『シンジ 蒸発編』!」

カナちゃん「タイトルだけでご飯食べれるわ!!(笑)」



なっちゃん「いや〜今日も笑ったわぁ!!」


カナちゃん「シンジには悪いけど、爆笑必至やったな!」


なっちゃん「来週もシンジが地獄を爆進するんか、楽しみにしとってなぁ〜!」


カナちゃん「ほなまたな!バイバーイ!」


(エンディングテーマ流れながら、二人は画面の外へ手を振る)

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