非情の任務結果
神戸ソープ街。夜風に吹かれ、街の灯りがどこか寒々しく瞬いていた。廃墟ビルの前に、ひとりの男がよろめくように現れる。
シンジの顔は血の気を失い、唇は乾ききっている。だが瞳の奥には必死の光が燃えていた。
シンジ「はぁっ……はぁっ……!なんとか……なんとか帰って来たぜ……」
息を切らせながら見上げるのは、黒々とそびえ立つ廃墟ビル。エレベータはとうに壊れ、残されたのはコンクリートの冷たい非常階段だけだった。
シンジ「……あと……10分……日付変わる前が期限って言ってたな……野崎の野郎……」
脚は鉛のように重い。それでもシンジは階段を駆け上がった。4階を越え、5階の突き当たりに一枚のドアがある。そこが、闇の斡旋人・野崎の部屋だった。
バンッ!!
シンジ「戻ったぞ!!」
勢いよくドアを開くが、中は静まり返っている。蛍光灯の明かりが薄く照らすだけ。
シンジ「……誰も、いねぇ……?」
その時、奥の部屋のドアがきしみを立てて開く。黒い影が現れた。野崎。無表情のまま、冷静にシンジを見据えていた。
野崎「……11時59分ですね」
シンジ「あぁ……!よかった……!間に合った……!」
安堵の笑みがシンジの顔に浮かぶ。心臓はまだ暴れていたが、その表情は勝ち誇った自信へと変わっていった。
シンジ「おめえの言ったとおり、星野舞のパンティ2枚……ゲットして来たぜ!もちろんフレッシュだ!!まだ……温もり残ってるくらいのな!」
野崎は眉ひとつ動かさずに言う。
野崎「……どれですか」
驚きも称賛もない。あるのは冷たい確認だけだった。
シンジはゆっくりとジャケットのポケットへ手を差し込み、震える指先で二枚の布を取り出す。薄暗い部屋の中、テーブルにそっと置かれたそれは、まるで戦利品のように光を放った。
シンジ「これで……与悦の業の罰金50万はチャラだろ。それに……これ1枚5万で買い取るんだったな?前金で5万もらったから……もう5万、よこせよ」
シンジの声には勝利の余韻が混じっていた。だが野崎の目は違った。静かに1枚を手に取り、まじまじと見つめ、そして……顔に近づけた。
シンジ「……!」
喉がゴクリと鳴る。冷や汗が首筋を伝った。野崎の表情が険しくなっていく。
シンジ「おい……本物だぞ!?命がけで……!舞の部屋に潜り込んで……!」
野崎「……あなた。これ……嗅ぎましたね?たっぷりと」
低い声。疑いではなく、確信の響きだった。
シンジ「か……嗅いだよ!嗅いだけどよ!腹が減って……それを紛らわすためにだ!」
言い訳が喉に絡む。だがその言葉は自らの罪を思い出させる。
空腹に耐えられず、そして衝動に負け、あの布を……何度も、何度も嗅いだ。
野崎「……」
野崎の声は冷ややかだった。
野崎「これは……フレッシュとは呼べませんね」
シンジ「ま、待てよ!洗濯前じゃねぇか!その条件で間違いなく持って来た!そういう約束だったろ!?」
野崎「依頼人は舞嬢の“ピュアな匂い”を求めていたのです。ですがこれは……ほとんど舞嬢の香りは消え、あなたの臭気が染みついている」
シンジ「なっ……ちょっ……聞いてねぇ!そんなの最初から……!」
必死に言葉を紡ぐが、野崎は冷たく遮った。
野崎「これでは……商品価値があるとは言えません。もう一枚の方も同じですね。あなた……どれだけ嗅いだのですか?」
シンジの瞳が揺れる。思い出す。帰り道、路地裏で、飢えを抑えるように、震える指で握りしめ、夢中で嗅ぎ続けてしまったことを。
その行為が、舞の匂いを吸い尽くしてしまったのだ。
シンジ「……そ……そんな……」
絶望の色が顔に広がる。肩が震え、指が痙攣するように動く。
野崎「……愛の織布ゲット業務は、失敗です」
その声は氷の刃のように冷たかった。
シンジの心臓が沈み込む。部屋の空気が、まるで凍りついたかのように重くなった。
次の瞬間、シンジの視界はぐらりと揺れ、膝が崩れそうになる。
夢に見た「成り上がり」は、いま手のひらから零れ落ちていく。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん「いやぁ……シンジ、かわいそうやけどな……でも嗅ぎすぎやろ!舞ちゃんの匂いぜんぶ吸い込んでどうすんよ!」
カナちゃん「ほんまそれ!おまえ肺が芳香剤かいな!フレッシュは商品やからな!嗅いだ瞬間から中古や!もうメルカリでも売れへん状態やで!」
なっちゃん「しかも“腹減ったから嗅いだ”って……どんな生存本能よ。普通コンビニでおにぎり買うやん。なんでパンティで空腹まぎらわすんよ!」
カナちゃん「パンティをカロリーメイト代わりにすな!あんたの匂いつけてどうすんねん!それはもう舞ちゃんのじゃなく“シンジスペシャル”や!」
なっちゃん「野崎も顔を近づけただけで一瞬で気づくのな。“これは……あなたの匂いですね”って冷静に言われたら、もう死刑宣告やん」
カナちゃん「せやで。もう裁判官の木槌バン!って鳴ったのと同じや。シンジは被告席に座ったまま膝ガクガクやろ」
なっちゃん「同情はするけどなぁ……せっかく命がけで持ち帰ったのに、自分で価値ゼロにするんやもん」
カナちゃん「そやねん。これもう“宝くじ当たったけど銀行行く前に燃やした人”レベルや」
なっちゃん「シンジは幸運を自分の鼻で燃やした……」
カナちゃん「名言ぽく言うなや!」
――ここで視聴者からのはがき紹介。
なっちゃん「ラジオネーム“夜の階段ゼエゼエ”さん。『シンジに感情移入してたのに、嗅ぎすぎて全部パーって……まるで期末テスト前に参考書食べて勉強した気になってる自分を見てるみたいで泣けました』やって」
カナちゃん「わかる!形だけ頑張ったつもりで全部ムダにしてるやつや!“やった気”が一番あかんねん」
なっちゃん「でも参考書は食べても体力にはなるけど……パンティは栄養ゼロやからなぁ」
カナちゃん「むしろマイナスや!腸内環境ぐちゃぐちゃや!」
次はXからのコメント。
カナちゃん「ほなポスト読むで。“@闇市ウォッチャー”さん、『野崎の冷静さが逆にホラー。あんな静かな声で“嗅ぎましたね”って言われたら二度と鼻で呼吸できへん』」
なっちゃん「鼻呼吸禁止令や!口でゼエゼエ言いながら生きるしかないな」
カナちゃん「鼻栓して一生過ごさなあかん。地獄やん!」
なっちゃん「続いて、“@パンティは文化財”さん、『シンジが匂い吸い尽くした瞬間、舞ちゃんの存在価値が半分消えたみたいで切なかった』」
カナちゃん「うわぁ……それはほんま文学的!“芳香の墓荒らし”やな!」
なっちゃん「ネーミングセンスありすぎ!舞ちゃんの香りが魂やとしたら、シンジはそれを盗んで自分の肺に封印した……」
カナちゃん「いや言いすぎ!ただの変態や!」
はがきもう一通。
なっちゃん「ラジオネーム“フレッシュ至上主義”さん。『パンティを嗅ぎ倒すのは、コーヒー豆をゴリゴリ挽いたのに、全部鼻で吸って口に入れんかったようなもんや』」
カナちゃん「うまい例えや!香りだけ楽しんでカフェイン摂取できんとか、意味ないやん!」
なっちゃん「結局シンジは満腹にもならんし、金にもならんし、夢も砕けたし……三重苦よ」
カナちゃん「ほんまや。シンジの人生、パンティで始まりパンティでつまずく……せめて途中で立ち食いそばでも寄っときゃ良かったんちゃうか」
なっちゃん「視聴者のみんな、今夜も名言とツッコミありがとう!シンジを反面教師にして、嗅ぎすぎ注意で生きような!」
カナちゃん「ほんまや!フレッシュは大事に!人間関係も空気もな!」




