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人生はギャンブル

――舞の部屋 午前7時


薄いカーテン越しに、曇った朝の光がぼんやり差し込んでいる。


舞がベッドの端に腰掛け、欠伸をかみ殺しながら立ち上がった瞬間、マットレスの下にいたシンジの胸がギュウと圧迫される。


「ぐふぅっ……! お、おい……っ、重いって……!」

心の声が呻く。喉の奥から出そうになる悲鳴を必死に押し殺す。


舞はそんなことなど知る由もなく、ふわりと足を床に下ろし、乱れた髪をかきあげながらキッチンへ。昨日に引き続き、パンの香ばしい匂いが部屋に広がっていく。


「……クソ、いい匂いしやがる……」

布団の下でシンジの腹がぐうと鳴る。

だが彼が手に握りしめているのは、もう匂いが薄れかけた“舞のフレッシュ”。初日にゲットした戦利品だ。


「こんなもんじゃ腹は満たされねえ……昨日の夜の……あのプレミア……」

思わず視線を横に泳がす。洗濯カゴの中に堂々と鎮座する、舞が昨夜ひとりで熱を持て余した末に生まれた“プレミアフレッシュ”。

その存在がシンジの頭を狂わせる。


「くっ……! アレさえ手に入れば……空腹も性欲も満たされる。そして俺の任務は完了だ……!」


だが今日は休日。舞が外に出る気配はない。

舞は電話をするでもなく、笑い声を響かせるでもなく、ただ淡々と朝食を用意している。


「マジかよ……出かける気ねえのか? 男の影も見えねえし……。ったく、あんなに可愛い顔してんのに、男いねえのか……? ククク、だったらよ……俺がなってやってもいいんじゃねえのか?」


布団の下で、三十五歳の男が唇を歪め、不気味な笑みを浮かべる。


だが次の瞬間、その笑みはすぐに曇った。


「……いや待てよ。今日一日この部屋に舞が居座るなら……どうやってあのフレッシュをゲットすんだよ? シャワーを浴びるのは夜だろ? リミットは今日の日付が変わるまで……ゲットしてから逃げて、電車で神戸まで戻らなきゃならねえ……。こりゃ……だいぶ旗色が悪ぃ……」


額に嫌な汗が浮かぶ。任務の成功と失敗、その分岐点が目前に迫っている。


すると、ふと気づく。

さっきから部屋が静かだ。包丁の音も、皿の触れ合う音も、舞の小さな鼻歌も、すべて止んでいる。


「……? おいおい、どうしたんだ? さっきまで動いてたのに……」


耳を澄ます。

沈黙。

ただ、タイマーの「チーン」というパンの焼き上がりを告げる音が響いた。


「……えっ、まさか……もうどっか出て行ったのか?」

血の気が一気に上る。シンジの心臓はドクンと跳ねた。


「今なら……今なら、プレミアに手が届く……!」


シンジは布団を押しのけ、ゆっくりとマットレスを持ち上げる。慎重に、息を殺して。

視界の端に、洗濯カゴがある。そこに……求めてやまない宝がある。


「……っ、マジか。ほんとにいねえ……。舞のやつ……いつの間に……」


彼は音を立てぬように這い出し、床を這う虫のようにじりじりとカゴへ近づく。

冷や汗が背筋を伝う。

息を殺し、手を伸ばす。


その瞬間――


「ジャーッ」


トイレから水の流れる音。


「っ!? な、なんだよ……!」

心臓が跳ね上がり、シンジは慌てて後ずさる。

再び布団の下へ腹ばいになり、必死にマットレスを元の位置へ戻した。


「ちくしょう……! トイレかよ! くそ長えな……なんてこった……!」


苛立ちの混じった囁き。だが次の瞬間、彼の口角がぐいと上がる。


「……そうか。腹の調子が悪いんだな、舞のやつ……。だからあんなに長ぇんだ……」


期待が膨らむ。

トイレに行く機会が増えれば、それだけ狙うチャンスも増える。


「ククッ……今日もまた行くだろうよ……。その時を狙えばいい。トイレに籠もってる隙に、あのプレミアをゲットして脱出するんだ……」


しかし、甘美な期待の中に、一つの不安が入り込んでくる。

昨日、舞が外出したときのことを思い出す。


舞は防犯のため、サムターンを抜いて出ていった。

あのせいでシンジは鍵を回せず、外に出られなかった。


「……クソッ。あの鍵回すやつ、今は刺さってるのか……? もし刺さってなかったら……詰みだ。まごついてるうちに舞がトイレから出てきたら……アウトだ……」


未来の光景が浮かぶ。

舞に見つかり、警察に突き出され、連行されていく自分。

屈辱的な妄想がシンジを襲う。


「……もう、こうなったら一か八かだ……!」

布団の下で、シンジは目をぎらつかせる。


「人生はギャンブル……! 舞がクソしてる最中に鍵回すやつが刺さってりゃ、俺の勝ち……! 刺さってなきゃ……舞の勝ちだ……!」


ニヤリと歪んだ笑み。

それはまるで、檻の中で牙を磨く獣のようだった。


――次の一手が、シンジの命運を決める。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


なっちゃん「ちょ、待ってやカナちゃん!シンジ、マットレスの下で『ぐふぅ!』言うとったん見た?あんなん完全に押し寿司やん!魚ちゃうぞ!」


カナちゃん「せやせや!ほんで舞ちゃんは知らん顔してパン焼いてるとか!シンジの心の声『いい匂いしやがる』て……あんたフレッシュ握りしめながら腹鳴らすな!食パンとパンティごっちゃにすな!」


なっちゃん「ほやけんよ、洗濯カゴの“プレミア”見て『性欲も満たされる』言うとるとこで爆笑してしもたわ!お前何満たそうとしとんよ!」


カナちゃん「そんでな、『俺が男になってやってもいいんじゃねえのか?』言うとったやろ?何様やねん!お前はまず人間になれ!」


なっちゃん「ほんでトイレの音した瞬間『トイレかよ! くそ長えな!』て!お腹抱えたわ、もう!人の排泄に賭け事かけるな!」


カナちゃん「出たよ『人生はギャンブル!』ってな!何が人生はギャンブルじゃ!お前もう負けとるわ!サムターンくらい知っとけ!大阪の小学生でも知っとるで!」


なっちゃん「いやホンマに。舞ちゃんが防犯でサムターン抜いたん思い出して『詰みじゃねえか』って焦るん、あれはもう将棋の駒ちゃうで、人生の王手やで!」


カナちゃん「それな!もうシンジ、人生すごろくやったら“ふりだしに戻る”のマスにずっと居るタイプやで!振っても振っても1しか出んの!」


なっちゃん「おまけにマットレスの下からギラついた目で『クソしてる間に勝負や!』言うとるやん。いやいや、そんな勝負人生のラストチャンスに賭けんな!」


カナちゃん「ほんで歪んだ笑み浮かべて獣みたいになってたけどな、獣言うても猫や犬やないねん。マンホールに住みつくタヌキの親戚みたいやったわ!」


なっちゃん「おお、ほやほや!さて、ここからは視聴者の声読んでいこか!」


カナちゃん「ほなまずはハガキ一枚目。“シンジが布団の下で圧迫されて『ぐふぅ!』って言うとこ、声出して笑いました。あれもう人間ハーモニカですね。”」


なっちゃん「ハーモニカ!確かにシンジ、押されたら音出る新種の楽器やったな!」


カナちゃん「次はXのコメント。“舞ちゃんのパンが焼ける『チーン』とシンジの腹の『ぐう』が同時演奏みたいで草”」


なっちゃん「それはもう『朝の交響曲』やわ!ベートーヴェンも泣いて逃げるレベル!」


カナちゃん「ほな次!“シンジの『俺が彼氏になってやってもいい』に腹抱えた。あんたは人に選ばれる側や!”」


なっちゃん「わかるー!選ばれるどころか選考落ちもしてへん、不戦敗やわ!」


カナちゃん「おお、こっちのコメントおもろいで。“トイレの水の『ジャーッ』がシンジにとって銃声みたいに聞こえたはず。お前の心臓にリロードかかっとるやん。”」


なっちゃん「うわー、たしかに!舞ちゃんのトイレタイムがシンジにとって戦場やったんやな!」


カナちゃん「ほなラスト!“シンジの『人生はギャンブル』って言葉、パチンコ台に座りながらポケットの小銭数えてるオッサンそのもの”」


なっちゃん「ド直球やん!シンジの人生、確率1/319やな!しかも天井まで回しても当たらんやつ!」


カナちゃん「ほんまや!視聴者のみなさん、今日もナイスコメントありがとうございました!」

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