寝落ちの代償
――舞の部屋。時刻は不明。
息苦しいほどの静けさが漂っていた。
シンジはベッドの下、埃と暗闇にまみれながら目を開ける。
隙間から差し込む光に気づき、血の気が引く。
シンジ心の声
「や、やべえっ!……まさか寝ちまってたのか!?」
額に脂汗が浮く。微かな灯りの向こうで舞がスマホを握りしめ、誰かと話している。
舞
「お母さん、変なの!なんか……ベッドの下に何かいるの!」
母の声(電話越し)
「どういうことなの?」
舞は息を荒げながら部屋を見回す。
その瞳には確信めいた怯えが浮かんでいた。
舞
「何か……気配がするの。生き物の気配が!」
シンジの背筋が凍りつく。
シンジ心の声
「や、やべえっ……俺、いびきでもかいちまったか……?こんなドジ……!」
母の声
「ネズミとかじゃないの?」
舞
「やだよ!ネズミなんかと一緒なんて……耐えられない!」
パニックの声が部屋に響く。
シンジは唇を噛み、咄嗟に妙な決断をする。
シンジ
「チ、チュウ……チュウチュウ……」
自分でも呆れるほど下手な鳴き声。
その瞬間、冷たい汗が背中を伝う。
シンジ心の声
「お、おいおい……逆に怪しませちまったんじゃねえか……?」
舞の顔が青ざめ、スマホを握る手に力がこもる。
舞
「き、聞こえた!チュウチュウって!やっぱりネズミだ!!」
母の声
「あなた、フマキラーとかあるでしょ?それを振りかけなさい」
シンジの顔が一瞬で蒼白になる。
シンジ心の声
「お、おい!ふざけんな!……こんな狭いとこで殺虫剤なんか……マジで死ぬぞ!」
舞は棚を慌てて探り、缶スプレーを掴み取る。
舞
「あった!」
母の声
「それをシューッとしなさい」
シンジ心の声
「だ、ダメだって!やめろ!」
だが叫びは喉で凍りつく。
次の瞬間、白い霧がベッドの下を襲った。
プシューーーッ!!
視界が霞み、肺を焼く刺激臭が押し寄せる。
シンジ心の声 ぎゃああああ!!」
咳き込むことさえできず、目は涙で滲む。
頭の中で必死に考える。
シンジ心の声
「や、やめさせるには……ネズミが……死んだとでも思わせるしか……」
震える声を絞り出す。
シンジ
「チュウ!!……チュウ!……チ、チュウ……チュゥ……」
声がか細く途切れる。やがて完全に静まり返った。
舞は息を呑み、スマホに囁く。
舞
「お母さん……静かになったよ」
母の声
「そう。良かったじゃない」
シンジ心の声
「良くねえよ!本当に死ぬとこだったんだぞ!」
殺虫剤の臭いにむせ返りながらも、必死に息を殺すシンジ。
舞の顔に安堵が広がる。
舞
「ありがとう、お母さん。じゃあ寝るね」
母の声
「おやすみ、舞」
通話が切れた。
部屋の灯りが落ち、闇が訪れる。
ベッドの隙間からは、夜明けの微かな光が差し込み始めていた。
シンジ心の声
「あぁ……危なかった……。殺虫剤で済んだからいいが……もし姿を見られてたら……終わってた……」
暗闇の中、荒い呼吸を必死に抑える。
シンジの手の中には、まだ舞のフレッシュの一枚。
果たして彼は二枚目を奪い、この部屋から生還できるのか――。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん
「ちょ、ちょっと待ってや!あのオッサン……ネズミの鳴き真似しよったん!?チュウチュウ言うて、声ヘタすぎで普通バレるやろ!」
カナちゃん
「アホや!シンジはネズミか!!いやな、あんな35歳のおっちゃんが暗がりで『チュウチュウ……』って、コントやん。志村けんのコントか思たわ!」
なっちゃん
「しかも舞ちゃんのお母さんが冷静に『フマキラー撒きなさい』て……お母さん強すぎやろ!まるでボスキャラやわ!」
カナちゃん
「ほんでシンジ、『やめろ!死ぬぞ!』って心の声で叫んどるんやけど、そらそうや!ベッド下で殺虫剤は地獄やで!酸欠ルーム作っとんのと一緒や!」
なっちゃん
「しかもさ、シンジの最終手段が“死んだフリのネズミ”て!なんちゅう発想よ!『チュウ……チュウ……チュゥ……』って、息絶える感じ出すの、下手すぎて涙出るわ!」
カナちゃん
「視聴者も泣いとるで、笑いすぎて!いやぁ、こらシンジにしかできん芸やなぁ。普通やったらパニクって終わるけど、ネズミになるオッサン……唯一無二や!」
なっちゃん
「ほんで舞ちゃんも舞ちゃんで、『静かになった』言うて安心しとるけどな、いやおるんよそこに!そこにおっちゃん潜んどんよ!もうホラー通り越してバラエティや!」
カナちゃん
「ラストの『あぁ……危なかった……』ってシンジの独白もな、普通のサスペンスやったら名台詞になるとこやのに……視聴者的には“いや危なすぎやろ!”の大合唱や!」
なっちゃん
「いやほんま、こんなん続き気になって寝れんやん……次どないなんねん思うわ!」
カナちゃん
「せやせや、ちょっとここで視聴者のはがき紹介せなアカンな」
なっちゃん
「お、きたきた!松山のラジオネーム“ネズミより弱い男”さんから」
はがき読み上げ(なっちゃん)
「『シンジさん、あのチュウチュウ演技は衝撃的でした。私も部屋にゴキが出た時、犬のフリして“ワン!”て吠えたことがあります。同じ匂いがしました』」
カナちゃん
「仲間おるやん!犬のフリって……いやそれも意味わからんけどな!ゴキに犬語は通じん!」
なっちゃん
「続いてXから。“@fumakiller_is_god”さん」
読み上げ(カナちゃん)
「『ベッド下でフマキラー直撃とか、拷問技術の映像資料かと思いました。シンジさんがCIAに捕まっても絶対口割らん気がします』」
なっちゃん
「わかる!ほんま、あのシーン軍事訓練に使えるレベルやったわ」
カナちゃん
「もう一個!“@shinjilove_35”さん」
読み上げ(なっちゃん)
「『チュウチュウで死んだフリする男、好きにならずにおれません。私の彼氏もこんな機転を効かせてほしい』」
カナちゃん
「いや恋愛対象にすな!ネズミ芸で落ちる恋はやめとき!」
なっちゃん
「せやけどわかるんよなぁ。どんだけポンコツでも、必死で生き延びようとする姿って、ちょっと胸打つんよ」
カナちゃん
「せやな。人間の滑稽さと必死さは紙一重やって、シンジが身をもって教えてくれとる。……でも次の回も“アホや!”言わせてくれるんやろなぁ」
なっちゃん
「うん、絶対またやらかすよな……楽しみやわ!」




