一文無しの入り口
──夜のネオンがじんわり滲む、繁華街の奥にある高級ラウンジ。
店内はシャンデリアの光に包まれ、うっすらとしたジャズが流れている。
その一角、シンジと琴音が向かい合って座っていた。
ボーイが恭しく、金色に輝くレミーマルタンのボトルを運んできた。
無駄にキラキラした目をして、琴音がそれを受け取る。
琴音は手際よく、二つのグラスに琥珀色の液体を注ぎ、
にっこりと愛らしい笑顔を浮かべながら、シンジの前へ差し出した。
琴音「シンジさーん、琴音もいただいて良いですかー?」
(琴音の心の声)
《コイツ、ケチだけど、さっき”ポッと体がエッチになる”って言葉にアホみたいに食いついてきとったからな。今日は拒否らんやろ》
シンジは鼻の下を伸ばして、ふにゃっと笑った。
シンジ「お、いいよ。飲みなよ。今日はパーっと行こうぜ」
(シンジの心の声)
《これ飲んだら体がエッチになるんだろ?
よし、いっぱい飲ませてホテル直行ってか?クククッ》
カラン、と乾杯の音。
二人のグラスが触れ合い、琥珀の波が小さく跳ねた。
琴音「シンジさーん、よろしかったらぁ〜、おつまみもいかがですかぁ?
おつまみあった方がぁ、エッチなお酒、進んじゃいますよぉ〜」
(琴音の心の声)
《普段は絶対ケチって頼まんヤツやけど、
今日はあぶく銭たんまりあるしな。出さんわけないやろ》
琴音は、涼しい顔で、パラパラと”おつまみアルバム”を開いて見せた。
煌びやかなページには、やたら高級感を演出した写真が並んでいる。
シンジ「そ、そうだな……この、一口チョコでいいかな……」
(シンジの心の声)
《高っけーよ!!なんで一口チョコが4千円もすんだよ?!
これ日本円だよな?!バラエティセット……1万9千円って、おい……》
琴音「ありがとうございまーす。お願いしまーす」
(琴音の心の声)
《ヘッ、ケチなヤツ。でも拒否らんかっただけマシやな》
琴音は、にこやかに伝票をボーイへ渡す。
ボーイは丁寧に頭を下げ、グラスに盛られた一口チョコをテーブルに置いていった。
シンジはチョコを見て、目を泳がせながらも、無理やり笑顔を作った。
琴音「シンジさん、ドバイの話、聞かせてくださいよー。
今度琴音も連れてってくれるんでしょ〜?」
(琴音の心の声)
《さぁ、どんな作り話、ぶっ込んでくるかな?この見栄っ張りオヤジ》
シンジはどこか得意げに、脚を組み直した。
シンジ「ドバイか。オレは仕事で行ったからな。
どこに連れてかれたかは……地名とかはよく知らないけどな。
あっちの人間は、みんな……ほっかむりしてたよな」
(シンジの心の声)
《あれ、なんて言うんだよ?頭に被ってるやつ……
てか、4千円払ってチョコ5粒って、日本大丈夫かよ?》
琴音は涼しい顔で、まるで慈悲深い聖母のように微笑んだ。
琴音「あれって、ヒジャブって言うんでしょー?
あ、シンジさん、グラス空いてるんでお注ぎしますねー」
(琴音の心の声)
《行ってないから知らんわな。
嘘つくなら、それくらい下調べしとけや。雑すぎるわ》
シンジ「そうそう、それな!ヒジャブな!
琴音ちゃんも、空いてるなら飲みなよ!」
(シンジの心の声)
《さあ飲め!このエッチになる魔法の酒を!
2時間後にはオレとホテルでフィーバーや!!》
琴音は天使のような微笑みを浮かべ、シンジに向かってグラスを掲げた。
琴音「ありがとうございまーす!いただきまーす!」
(琴音の心の声)
《バッカじゃないの。私を酔わせてアフターゲットとか、
今まで何人撃沈させてきた思とんねん。
お前も、そのへんに転がっとる雑魚の一匹やで》
──ジャズのメロディが流れ続ける中、
シンジは薄ら笑いを浮かべ、琴音のグラスに琥珀色の液体を注ぎ続けた。
そして、琴音は作り物の笑顔の裏で、冷ややかな目を光らせていた。
乾杯の音は、虚しく、店内に消えていく。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
【なっちゃん・カナちゃん】〜今夜も笑いすぎ注意報発令中!〜
(オープニングジングルが流れ、画面がパッと明るく切り替わる)
カナちゃん「はい始まりました〜『なっちゃん・カナちゃん』!
今夜もいきなり大爆笑やから、みんな心臓の準備しといてや〜!」
なっちゃん「みんな〜!今日のドラマ、見た〜?!
琴音ちゃん、猛者すぎるってぇぇぇ!!」
カナちゃん「いやマジでな!!シンジより2枚も3枚も上手いねん!
サバンナで草食ってるカピバラを、ハイエナがしばきに行くぐらいの勢いやったわ!」
なっちゃん「シンジがあぶく銭持ってるん、もう完全にバレとるもん!
根こそぎいったろういう顔しとったぞ!追い剥ぎや!追い剥ぎ!!」
カナちゃん「シンジ〜!アホか〜!
琴音ちゃんがあんたとラブホ行く日?
そんな日、未来永劫来ませんからーー!!(爆笑)」
なっちゃん「地球が逆回転しても来んわい!!(松山弁ぽろり)」
(効果音:ドカーン)
カナちゃん「さぁさぁ、おつまみリコメンドタイム来ましたよ〜!」
なっちゃん「リコメンド言うなや!(爆笑)
しかもリコメンドが『一口チョコ』て!!」
カナちゃん「お値段なんと!!4千円!!!」
なっちゃん「市価の10倍以上やぞ?!
チョコって、スーパーで百円で山盛り買えるやつやん!」
カナちゃん「バラエティセット頼めよシンジ!1万9千円やで!!
それ神戸ビーフのステーキ屋で、夜景見ながらディナーできる額やっちゅーねん!」
なっちゃん「ほんで来たやろ、一口チョコ。5個や!5個!」
カナちゃん「5個で4千円!市価の30倍やで?!
ボッタクリバーのミラクル版やんか!!」
なっちゃん「シンジの財布、今頃アコーディオンみたいになっとるわい!(爆笑)」
(効果音:ビヨ〜ン)
カナちゃん「んでドバイのウソ話、出たで〜」
なっちゃん「『ほっかむり』ってアホか!!あれヒジャブやっちゅーねん!」
カナちゃん「しかもな、『仕事で連れて行かれたから地名知らん』とか!
誰がそんな雑なウソに引っかかるねん!」
なっちゃん「まともなウソつけや〜、ほんま〜!!(笑)
琴音ちゃん、ヒジャブってちゃんと知っとったしな!」
カナちゃん「嘘つくなら、せめて下調べしとけってな!
琴音ちゃんのツッコミ、完全にズレてない正論でしたーー!!」
なっちゃん「ズレてるんはシンジの脳みそだけやわい!!(爆笑)」
(効果音:ピロリロリーン♪)
カナちゃん「ででで!琴音ちゃん、不沈艦やったな!」
なっちゃん「不沈艦琴音!!スタン・ハンセンばりの破壊力や!!」
二人「ウィーーー!!」
(スタジオ大爆笑)
カナちゃん「シンジも今に食らうで、琴音ちゃんのウエスタンラリアット!」
なっちゃん「首もげるぞ!ラブホどころか救急搬送やわい!(松山弁ぽろり)」
カナちゃん「意外に今回おもろなってきたよな〜!」
なっちゃん「全ッ然ハートフルちゃうけどな!!(笑)」
(効果音:ポヨヨーン)
カナちゃん「さぁさぁここで、視聴者のみなさんの反応、大公開タイムやでー!」
(ジングル:タラララッター♪)
なっちゃん「まずはこれ!
『琴音ちゃん最強すぎwwwシンジの脳味噌スポンジ説www』」
カナちゃん「わかる!!もう水吸ってブヨブヨになっとる!!(爆笑)」
なっちゃん「次!『一口チョコに4千円…ワイなら泣く』」
カナちゃん「泣きながらレシート見直すわ!『4円ちゃうん?!』って言うてまう!」
なっちゃん「『ドバイ=ほっかむりは草。小学生の作文かよ』」
カナちゃん「赤ペンで『もっと具体的に!』って書かれるレベルや!」
なっちゃん「『不沈艦琴音、スタン・ハンセン超えた説』」
カナちゃん「ウィーーー!!もうタイガーマスクも逃げる勢いやで!」
なっちゃん「『シンジ、アフター狙い玉砕不可避』」
カナちゃん「花火打ち上げる勢いで玉砕してるわ!」
なっちゃん「みんなセンスありすぎやろ〜!笑」
カナちゃん「そろそろエンディングやけど、今日も大爆笑やったな〜!」
なっちゃん「また来週も、笑いすぎ注意報発令予定やけん!絶対見に来てよ!!(松山弁バリバリ)」
カナちゃん「それでは〜、ほなまたね〜!バイバーイ!」
(エンディングテーマ♪)




