野崎からの電話
部屋の中は修羅場だった。
「出てけーーッ!! この竿立たず!! フニャチン! ナマコーーッ!! ゲル状○○ーーッ!!!」
未亡人の怒号がビリビリと響く。
シンジ、顔を引きつらせながら必死に服をかき集め、
上裸にシャツを引っ掛けるのがやっと。
ズボンすら履けず、パンツもどこへいったか、もうどうでもいい。
「ウルセェ、このドロドロロウソクババァ!! おめえなんか、しみけんでも勃たねえんだよ、このクソヤロウッ!!」
捨て台詞を吐きながら、シンジ、裸に近い格好でドアへ猛ダッシュ。
未亡人、烈火のごとく怒り狂い、
部屋中にある小物、ティッシュケース、花瓶、リモコン、果てはスリッパまで、
ありとあらゆるものをバンバン投げつけてくる。
「ヒィィィーーッ、助けてぇぇぇーーッ!!」
バンッ!!
音を立ててドアを閉め、廊下へ転がり出たシンジ。
全身汗まみれ、心も体もズタボロ。
「何なんだよ、ったく…! こんな屈辱的な目に遭うとは思わなかったぞ!!」
壁に背を預けて肩で息をしながら、シンジはうめく。
その時、不意にスマホがブルブルと震えた。
(や、やべぇ……野崎か……)
ディスプレイには、あの斡旋屋・野崎の名前。
嫌な予感しかしない。
股間だけをシャツで隠しながら、シンジはおそるおそる通話ボタンを押した。
「も、もしもし……」
『今すぐ戻ってきてもらえますか? マンションを出ると、ハイエースが止まってますので』
野崎の声はいつも通り丁寧。でも、その静かな口調が逆に怖い。
「ちょ、ちょっとオレ、今寝てなくて……家帰って寝たいんだけど、いいかな?」
必死に言い訳を捻り出すシンジ。だが――
『ダメですね。あなたは業務を完了できなかったので、お話がございます。』
終わった。
脳裏に、でかでかと「GAME OVER」の文字が浮かぶ。
(く、クソッ……やっぱ罰金50万円確定か……)
(バックレても、地の果てまで追ってきそうだ……)
膝がガクガク震えながらも、シンジは観念して答えた。
「わ、わかったよ……」
通話を切ると、震える手で急いで服を着る。
ボタンはぐちゃぐちゃ、靴は左右逆。それでも構っていられない。
エレベーターで地上へ降り、ガラス張りのエントランスを抜けると――
待っていたのは、来たときに乗った、あのボロボロの白いハイエース。
(うわ、やっぱコレかよ……)
ため息を吐きながら、シンジはスライドドアを開ける。
中にいた無言の運転手。目も合わせず、ただ静かにエンジンを回す。
ドアを閉めた瞬間、ハイエースはスーッと動き出した。
車内の空気は重苦しい。
運転手の表情は一切読めない。
シンジは窓に額を押し当てながら、心の中で何度も悪態をついた。
(クソッ……オレ、何でこんな目に……)
(琴音を抱く未来が、遠ざかってくぅ……!!)
深夜4時半。
未明の街を、ボロ車に揺られながら、
情けない格好のまま、シンジは眠気に負けて、ぐったりと目を閉じた。
やり場のない怒りと羞恥を胸に抱きながら――。
◾️◾️◾️◾️◾️
ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
(♪オープニングジングル)
なっちゃん「さぁ始まりましたー! なっちゃん・カナちゃんのお時間ですーっ!」
カナちゃん「今夜はアレよアレ! も〜、とんでもないドラマ観てもうたやん!!」
なっちゃん「もうタイトルから気になってたけど…ほんまに放送してええ内容やったん?!」
カナちゃん「未亡人の部屋 4:30って! 深夜のタイトルちゃうであれ! 地獄のドキュメンタリーや!!」
なっちゃん「わははっ! ほんでよ、冒頭から未亡人ブチ切れやん!」
カナちゃん「“出てけぇーッ!!この竿立たずぅー!!”って!」
なっちゃん「“フニャチン!”“ナマコ!”って! 出てくるワード全部屈辱的やけん!!」
カナちゃん「なあなあ、最後のやつ。“ゲル状○○”の○○って、何や思う?」
なっちゃん「やめーや!それ言うたらNHKの受信料、倍取られるやつやけん!」
カナちゃん「はははは!絶対放送できへんやろアレ!!ナレーションすらためらっとったし!」
なっちゃん「でな、そのあとシンジも負けてへんのよ。“ドロドロロウソクババァ!!”って、何なん!?」
カナちゃん「小2やん!!!爆笑!!」
なっちゃん「しかも全裸で逃げながら言うなそんなこと!親見たら泣くわいね!!」
カナちゃん「“しみけんでも勃たねえんだよ!”って……もう、よーそんな悪口思いつくな!」
なっちゃん「子供のような罵倒やのに内容は完全にR指定やん!!」
カナちゃん「しかもさ、パンツも履かず服抱えて逃げたって、矢口真里の浮気相手やんもう!」
なっちゃん「わっはっはっは!!! “こんな屈辱的な目に遭うとは思わなかった”って……ウチら絶対そうなる思ってたがなッ!!」
カナちゃん「はい、来ました電話ぁー!! 野崎さんからのお仕置きタイム〜ッ!!」
なっちゃん「“ドクロベエだべぇ〜!”って効果音ついてたけん!あれスタッフ絶対遊んどる!!」
カナちゃん「やめて、腹痛い!!アカン、しんどい!!」
なっちゃん「“50万円払えません”って、シンジ服より先に現金持ってけやー!!」
カナちゃん「服着ろ服着ろ!!その前に人格着直せや!!!」
なっちゃん「こんなん深みにハマる未来しか見えんよ……セメント詰められるか、ドブに沈むかやでホンマ!」
カナちゃん「で、ラストはあのハイエースよ!」
なっちゃん「もう護送車やん、完全に“やった人”が乗るやつ!!」
カナちゃん「さぁ、どうなるんかな?!これは次回が気になるというか、シンジの命が心配や!」
なっちゃん「てか、50万どころか魂取られるんちゃうん?」
(ジングル♪)
なっちゃん「はいここで、視聴者のみんなの声、いってみよ〜!!」
投稿:京都府・ラジオネーム「女豹とアボカド」さん
「“しみけんでも勃たねえんだよ!”のセリフで、お茶吹きました。壁紙までやられました。請求書送りましょうか?」
カナちゃん「やめたげてー!シンジの貯金ゼロやねん!」
なっちゃん「てか、“壁紙やられた”て、爆発オチかいね!」
投稿:福岡県・「アジフライの恩返し」さん
「シンジって、もはや人間としての尊厳がゲル状ですね」
なっちゃん「うまいこと言うな!ゲル状の尊厳って、もう保存も効かんけんね!」
カナちゃん「しかも直射日光あたったら溶けるやつや!」
投稿:愛知県・「スルメの気持ち」さん
「ハイエースで護送されたシンジ、次の目的地ってどこですか?流刑地?」
カナちゃん「あんた想像力ありすぎやろ!!」
なっちゃん「ほんまや、ウチも“ハイエース=地獄”で変換されたわ!」
投稿:松山市・「パジャマのプリンセス」さん
「ゲル状○○の○○が何か、眠れなくて妄想ばっかしてます…助けてください…」
なっちゃん「助けられん!!それはもう沼や!!」
カナちゃん「しかも松山の人やん!なっちゃんの仲間やで!」
なっちゃん(松山弁)「ほやけん、あんま妄想ばっかしよったら、夢にゲル状の何か出るけんね!!気ぃつけぇよ〜!」
投稿:大阪府・「シャケフレーク永遠に」さん
「“小2やん!”“親見たら泣くで!”のコンボで腹筋崩壊しました。母もつられて笑いました」
カナちゃん「おかんも巻き込んどる!!家庭に笑い届ける番組やったんやな」
なっちゃん「シンジは家庭壊したけどな!!」
投稿:東京都・「煮卵スナイパー」さん
「シンジの下半身が矢口真里の浮気相手って表現、今日一笑いました」
カナちゃん「もーう!なんでその例え出てくるんよ!」
なっちゃん「確かに“芸能ワイドショーの亡霊”みたいな例えやったわいね!!」
(ジングル♪)
カナちゃん「というわけで、今日も視聴者からの愛ある悪口(?)ありがとうございました!」
なっちゃん「来週は…もっとまともなドラマ来てほしいんやけど…多分無理やろな!」
カナちゃん「また来週〜!!ほんま、ゲル状の夢見んなよ!!」
なっちゃん(松山弁)「みんな、気ぃつけぇよ〜!!」




