新しい朝
ホテル フェロモン 8:00
部屋の中は、まだ微かに夜の匂いを残していた。カーテンの隙間から、淡い朝の光が差し込んでいる。
ふたりは、昨夜そのまま身体を重ね、言葉少なに眠りへと落ちていた。
薄手のシーツの下、シンジの腕にはまだ琴音のぬくもりが残っている。彼の鼓動は、少しだけ速いまま。
琴音がシーツの中で小さく動く。もそもそと身じろぎしながら、ゆっくりと目を開けた。
「…起きたのか、琴音?」
シンジが、眠たげな声で訊ねる。
琴音は体を少し起こし、首をシンジの方へ向けると、ふわっと微笑んだ。
「うん。おはよう、シンジさん」
「ずいぶん寝ちまったな」
「うん。なんかね、ぐっすりだった」
その笑顔は、昨夜の夜よりも、ずっとやわらかかった。
まるで夢の続きのように、穏やかで。
シンジは琴音の額にかかる髪を指でよけながら、彼女を眺めた。
心の中に、満たされる感覚と、言い知れぬ戸惑いが混ざる。
「…そろそろ行こうか」
ぽつりと呟くと、琴音は名残惜しそうにシーツの中でもぞっと動いたあと、小さく頷いた。
「うん、でも……もう少しだけ、こうしてたいな」
それでも琴音はゆっくりと起き上がり、背を向けて服を手に取る。
朝の光を浴びた彼女の背中は、どこか神々しく見えた。
シンジは黙って、その姿を見つめていた。
そして、彼は脇に置いてあった封筒を手に取る。中には10万円の現金。
それはいつもの癖のようなものだった。言葉ではなく、金で区切る…自分のやり方。
「…ほら琴音、これでなんか美味いもんでも食えよ」
琴音は、着かけていた服の手を止め、ふり返る。
その目は、昨夜とはまた違った、まっすぐなものだった。
「ダメだよ、そんなの。私、プロじゃないんだから」
近づいてきた琴音は、封筒をシンジの手にそっと戻し、優しく肩にもたれかかってきた。
「それ目的で来たんじゃない。私は……ただ、シンジさんに会いたかっただけだよ」
言葉が、シンジの胸の奥で響く。
金でしか関係を結んだことのない男にとって、それは衝撃に近かった。
「…そうか。そう言ってくれると、嬉しいぜ」
シンジの声はかすかに震えていた。
心のどこかでずっと欲しかったものが、今目の前にあるような気がした。
「私、後悔なんかしてないから。シンジさんに抱かれたこと。ほんとに嬉しかったの」
「琴音…」
「これからのシンジさん、私ずっと応援してるからね」
その言葉に、シンジの喉が詰まる。
金じゃない想い。
彼女のぬくもりが、それを伝えてくれていた。
「でも……」琴音はいたずらっぽく笑う。「また店には来てよね。で、いいボトル入れてよ?」
シンジは思わず吹き出した。
「わかってるって。オレもお前を応援してるからよ」
「じゃあ……朝ごはんおごってよ。朝からやってるカフェがあるんだ」
「おう、行こうぜ。腹減ったよ」
琴音は鏡の前に立ち、メイクをし直す。
夜のキャバ嬢ではなく、朝のひとりの女の子として。
眉のラインを少し柔らかくし、チークを薄めに。
唇はほんのりとピンクに。
そして、ワンピースに袖を通したその姿は、どこにでもいるような、けれど特別な「朋美」だった。
「私ね、本名は朋美っていうの」
「そうか。…知らなかったな」
シンジは彼女をまじまじと見た。
まるで名前まで変わることで、別の生き方をしてきた彼女が、今は素の姿を見せてくれているようで。
「朋美って呼んで。…でも、店では琴音だからね」
「わかったよ、朋美」
彼女はくすっと笑った。
ふたりは服を整え、荷物をまとめ、そしてホテルのドアを開ける。
ひんやりとした朝の空気が、ふたりの肌を撫でた。
朋美は何も言わず、シンジの腕に自分の腕を絡ませる。
シンジも、それを拒まない。いや、拒む理由がどこにもなかった。
「朝だから誰もいないね」
「そうだな。夜はあんなに騒がしかったのにな」
ふたりはゆっくりと北野坂を下っていく。
言葉は少なかったが、静かな満足がそこにあった。
「じゃあ、行こっか。朋美お腹ぺこぺこなんだから」
「おう、オレも腹が減ったよ」
その背中が、陽の光の中で少しずつ小さくなっていく。
ふたりの歩調は、なぜかぴったりと合っていた。
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ここからは、
清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん
ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”
なっちゃん
「ちょっと!!シンジの物語これで終わりなん!?うそじゃろ!?」
カナちゃん
「一旦区切りみたいやで。原作者の手元にはまだまだ続編があるねんけど、なんかちょっと疲れたって言うてたで」
なっちゃん
「そりゃそうよ、あれ18万9千文字やで!?しかも101話まで行っとるんやろ!?もうそれ、文庫本やんか!」
カナちゃん
「せやねん!それだけ書いたのにリアクションもブックマークも0やって(笑)。
しかも評価1件だけついてたのに、★1!!」
なっちゃん
「★1!?うそやろ!?それが総合評価2ptて!!(笑)」
カナちゃん
「もうそれ、“クソ物語認定”やん!(笑) 作者さんの心折れるわ!」
なっちゃん
「いやでも、わかる気もするんよ。あれって、読んでくれる人の気持ちが作品に血を通わせるけんね。
書く人も人間やけん、無反応が一番こたえるんよ」
カナちゃん
「せやなぁ。でもこの朝のシーン、めっちゃよかったやん?
前の夜が“夢の成就”なら、今朝は“魂の着地”って感じやったわ」
なっちゃん
「そうそう!琴音が“お金いらない”言うて封筒返したとこな。
あれもう、“プロと客”やなくて“人と人”になっとったけんね」
カナちゃん
「うんうん。夜の名前“琴音”を脱いで、“朋美”って名を明かす瞬間、
まるで“夜明けが人の形になった”みたいでさ。あたし泣きそうなったわ」
なっちゃん
「ほんとよ。あの“朋美って呼んで”の一言、
あれ、夜と朝の境界線やったね。
彼女が初めて、光の方へ歩き出した瞬間やった」
カナちゃん
「で、二人で北野坂を下ってくやろ?
“騒がしかった夜が静かな朝になる”って、人生そのもんやん」
なっちゃん
「うん……静かやけど、ぬくもり残っとる。
まるで“燃えた跡の灰がまだ温い”みたいな感じで、切ないんよな」
カナちゃん
「ほんで続編の話!まだまだオモロなるのになぁ!」
なっちゃん
「そうなんよ!さとりとか、詐欺師のするちゃんとか、被害者のくーみんとか出てくるけん!」
カナちゃん
「ちょ、それ言うたらあかんやろ!それは投稿されてからのお楽しみや!!」
なっちゃん
「あっ、ごめん(笑)。まぁとにかく、作者さんの筆がまた動くように、
みんなリアクションしたってや!ブックマークと星、めっちゃ大事けん!」
カナちゃん
「ほな、ここで今日のはがき読もか!」
なっちゃん
「おっけー。えーっと、東京都の“るい”さんからやね」
なっちゃん
「『シンジと琴音の朝、まるで“冬の終わりに咲く梅の花”みたいでした。
もう散るのに、そこだけ春の匂いがしてた』」
カナちゃん
「わぁ……なんて綺麗なたとえ!
ほんまやな、“散る瞬間こそ香る”ってやつや!」
なっちゃん
「うん。その儚さが、この物語の魅力なんよ。
終わりやけど、ほんとは“始まり”なんよね」
カナちゃん
「ほな次はX(旧Twitter)から!」
カナちゃん
「ハンドルネーム“夜更けのゆうファン”さんからやで!」
カナちゃん
「『のぞみちゃんとゆう君にも、スノボ旅行でこういう“朝”が来たんだなって思いました。
夜を越えた人の目って、もう迷ってない顔してるんですよね』」
なっちゃん
「うわぁ、それも深いなぁ……。
“夜を越えた目”って、もう真っ暗闇を一回見た人の強さやけんね」
カナちゃん
「せやせや。
シンジも琴音も、もう“迷う側”やなくて、“導かれる側”になったんやと思うわ」
なっちゃん
「ほんまそれ。
だからこそ、のぞみちゃんとゆう君の物語に、まだ続きがあるんやと思う」
カナちゃん
「せやな。
あっちも今連載止まってしまったからな。
作者さん、ちょっと休憩したらまた戻ってきてな!
みんな待ってるで!!」
なっちゃん
「ほんまに!読んでくれたみんな、ありがとー!!
リアクションひとつで物語が息吹き返すけん、頼むで!」
カナちゃん
「ほなまた次回、“なっちゃんカナちゃん”で会おな~!」




