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“家政婦”

未亡人の部屋の前。深夜3時30分。

薄暗い共用廊下の空気が重たい。

シンジはドアの前に立ち、震える指先で呼び鈴を押した。

チン、と控えめな電子音が響く。


シンジの胸はドクドクと高鳴る。

(さぁて、どんな喪服姿の美熟女が出てくるのかな?)

ニヤリと、口元を歪めるシンジ。想像は膨らむばかりだ。

黒いレースの喪服。しっとりと濡れた瞳。妖艶な吐息。

そんなイメージばかりが脳裏を支配する。


……だが、音もなくドアが開いた。

現れたのは――


まるで別世界から来たような、肥満体型の女だった。

60歳は軽く越えている。白髪まじりの髪を、粗末なヘアピンで無理やりまとめている。

あちこちに汗の滲んだTシャツに、膝の抜けたジャージ姿。

女はニコリともしない無表情で、シンジを見下ろした。


「お待ちしてました」


声は低く、くぐもっていて、湿った空気に溶けるようだった。


(あれ? 一人暮らしじゃないのか?家族同居とは、これは想定外だな。ま、良いか…)

シンジは脳内で言い訳を組み立てながら、ぎこちなく愛想笑いを浮かべた。


「あ、オレ、なんか……派遣されて来たんすけど」


女は無言で小さく頷き、手招きした。

シンジは促されるまま、ぎこちなく靴を脱いで上がる。

室内は思った以上にきれいに片付いていた。

カーペットにはゴミ一つなく、低いテーブルの上にはコースターまできっちり揃えられている。


(どこだよ、オレの未亡人ちゃんは……)

キョロキョロと部屋を見渡しながら、シンジは心の中で未亡人の到着を待った。


「どうぞお掛けになってください。私は支度をしていますので」


女は淡々とそう言い、ふわりと消えるように奥の部屋へと姿を消した。


(なんだこの人……?家政婦か何かなのか?

わざわざオレたちのために、ベッドメイクしてくれるんだな?

やっべー、至れり尽くせりじゃん!未亡人ちゃん、いいトコ住んでんなぁ〜)


シンジは妙に浮かれた気分で、用意されたコーヒーをすする。

香りは安物だったが、口にすると妙に落ち着いた。

(……よし、落ち着け。これからが本番だ)


しばらくして、「家政婦」が戻ってきた。

少しだけさっぱりして見える。

きっと風呂でも軽く浴びたのだろう。湿った髪の毛が、首元に張り付いている。


(お、なんか清潔感アップしてねぇ?

でもそれよりオレの未亡人ちゃんはどこだよ?)


女はシンジに向かって、再び無表情で尋ねた。


「どうなさいますか?」


「え? どうなさいますかって……?」


女は、わずかに顔を赤らめたように見えた。

そして小さく声を絞り出す。


「その……入浴ですよ……」


(えぇ……マジで?

めっちゃ気を利かせてくれるじゃん!

これは未亡人ちゃんの指示だな?きれいにしとけって。

うわぁ、最高! やる気満々じゃん未亡人ちゃん!!)


シンジは大きく頷き、精一杯の作り笑いを浮かべた。


「あ、あざっす! じゃあ遠慮なく使わせてもらうっす」


浴室へと向かう途中、シンジの頭の中は、すでに「その後」の妄想でいっぱいだった。

シャワーを浴びるシンジ。

頭の中には、喪服姿でしとやかに正座している「未亡人ちゃん」の幻が鮮明に浮かぶ。


(クククッ、ヤベェ……興奮してきた……

シャワー上がったら、喪服を剥ぎ取って……

ヒィヒィ言わせるんだろ?

これで金までもらえるとか、オレ、マジで天才かもな!!

人生で初めて勝ち組気分味わえるわ!!!)


慌てるようにシャワーを終わらせ、バスタオルで体をざっと拭く。

用意されていたバスローブに身を包み、胸をドキドキ高鳴らせながら浴室を後にする。


さっき案内された部屋のドアの前に立つ。

握ったドアノブは汗で滑りそうだった。


(さて……コンドームもちゃんとポケットに入れたし……

よっしゃ、行くぞ……オレの逆デリヘルデビュー!!)


シンジは一呼吸、いや、二呼吸置いて、覚悟を決める。

自分の心臓の音が、耳の奥でバクバクと反響していた。


そして――


ドンッ!!


勢いよく、ドアを開け放った。

◾️◾️◾️◾️◾️

ここからは、

清楚系、松山弁コメンテーターなっちゃん

ピチピチ系、関西弁インフルエンサーカナちゃんの振り返り番組“なっちゃんカナちゃん”


(軽快なオープニングジングルが流れる)

カナ「ほなほな〜今日もいっちゃいましょか、『なっちゃん・カナちゃん』!!」

なつ「どもー!清楚系松山弁インフルエンサー、なっちゃんですー!」

カナ「可愛い系大阪弁コメンテーター、カナでっせー!」

なつ・カナ「よろしくぅーー!!」


カナ「さて、今日取り上げるんは、もう……問題作やで!!」

なつ「シンジ、ベル押したで!」

カナ「出て来るで!無慈悲な現実が!」


なつ「ほら来た!デブのオバハン!!」

カナ「デデーン!!」

なつ「シンジ、あれやぞ?気付いてないぞ?」

カナ「ええ?未亡人探してるやつおる?」

なつ「この人やけん!あんたの未亡人は!!」

カナ「加齢臭してそう!」

なつ「のぞみちゃんのいい匂いとは……完全に対極やけん!!(爆笑)」

カナ「逆パラレルワールドや!」


なつ「シンジ、まだ家政婦と思っとるわ!」

カナ「どこの世界に家族同居してデリヘル呼ぶやつおるねん!!」

なつ「しかもオバハン、支度する言うて風呂行った!!」

カナ「生々しいって!!!」

なつ「おつかれ生です〜!!」

カナ「出た、平田コーチ(笑)!」


カナ「でもシンジ、まだ未亡人探しよる!!」

なつ「痛過ぎやろ!!(笑)」

カナ「オバハン、入浴勧める時ちょっと照れてたやんな!」

なつ「私に全部言わせないで……みたいな顔しとった!」

カナ「あんた、家政婦ちゃうでーーー!!!」


なつ「シンジの妄想がえぐいんよ!」

カナ「全身ピカピカにして、ヒィヒィ言わせる予定らしいわ」

なつ「それ以上言うたらアカン(笑)」

カナ「はい、やめます!(笑)」


なつ「でもシンジ、まだ『喪服着て待ってる』思っとるけんね!」

カナ「もはやコスプレイベントやろ!」

なつ「ヒィヒィ言わせる、って……お前がヒィーーー!って悲鳴上げるんやって!」

カナ「シャワー早っ!」

なつ「ホイルスピンするドラッグマシンかって!」

カナ「バスタオル一周で仕上がってたもんな!!(笑)」


なつ「コンドームポケットにセット完了……」

カナ「出番ないやつーーー!!!」

なつ「むしろ出番あったら怖いわ!」

カナ「あかんて、あいつFANZAでええのばっか見とるから、現実対応できひん!」


カナ「さぁ!ドア開ける瞬間きたで!!」

なつ「あのドアの開け方な!(笑)」

カナ「芸能人格付けチェックの扉の開け方やった!」

なつ「浜ちゃんの!バン!ってやつ(笑)」

カナ「うわぁ〜来週、直視できへんで絶対!!」


(スタジオ内、スタッフ大爆笑)


なつ「いやー、最高やったなシンジ!」

カナ「史上最速で地獄ダイブした男やった!」


なつ「ここで、今日の放送を見た視聴者さんからのコメントもらっとるけん、紹介していこや〜!」

カナ「おっしゃきたーーー!!」


(コメント紹介コーナー開始!)


【視聴者コメント1】

「シンジ、未亡人を探す姿がオメガバースの負け犬みたいで笑いました!」


なつ「負け犬いうな(笑)!オメガどころか、モブキャラ以下やけん!」

カナ「迷子の子犬な!(笑)」


【視聴者コメント2】

「未亡人、想像と違いすぎて、胃袋ねじ切れました」


カナ「想像の斜め下どころか地中深くやったもんな!」

なつ「逆マリアナ海溝!」


【視聴者コメント3】

「風呂上がりのオバハンが『艶やか』に見えたシンジ、もはや脳がやられてる」


なつ「幻覚見えてるんよ」

カナ「オバハンに脳内フィルターかけとる!」

なつ「Photoshop脳!」


【視聴者コメント4】

「ドア開けた瞬間、浜田雅功のツッコミSEが脳内再生されました」


カナ「わかる!!脳内再生余裕やった!!」

なつ「バンッ!ってな(笑)」


【視聴者コメント5】

「シンジ、未亡人って単語に騙されすぎ。『未』しか合ってない。」


なつ「未完成の未!」

カナ「未確認生物の未!!」


【視聴者コメント6】

「最後のドア開けた後、オチが見えすぎて吐いた」


カナ「先読み出来る恐怖な!」

なつ「1.5倍速でもわかるバッドエンド!」


【視聴者コメント7】

「シンジ、今後はワンチャンもない人生決定おめでとう!」


なつ「祝福されとるやないか(笑)」

カナ「全力で祝うバッドエンド!」


【視聴者コメント8】

「オバハンの支度=ラスボス登場準備やったんか」


なつ「せや!

デモンズソウルぐらいの絶望ボスやけん!!」

カナ「初見殺しすぎる!!」


(コメント紹介終了!)


なつ「いやぁ〜今日もお腹痛なるぐらい笑ったな!!」

カナ「シンジ、ありがとう!最高のネタ提供者や!!」


なつ「ほな、今日はこのへんで!」

カナ「また来週なーー!!」

なつ・カナ「ばいばーーい!!!」


(エンディングジングル)

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