表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜  作者: 小林一咲
王都・近衛騎士団編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

77/108

第77話 考えごと

 部屋に残された静寂は、まるで重い霧のように僕の周りを包み込んだ。


「バルト、大丈夫? 兄上の言葉、気にしないで。本当に失礼なことを言って……」


 シュリアが心配そうに僕の顔を覗き込む。


「大丈夫ですが……少し考えたいことがあって」


◇◇


 ユーグ・ドリシャンと名乗った魔族と、その直後に会った幻の第一王子。見た目は完全に同一人物と言わざるを得ないほどに似ていた。


 考えすぎかもしれないが、《《もしも》》の場合に備えて警戒は怠らないようにしよう。


 まぁ、王子の態度や言動からしてみると、同一人物という可能性は低いだろうが、今は証拠が少ない。


「今は様子見か」


 ぼんやりと天井を見上げてそう呟きながら、王子の言葉を思い返す。


『――君は魔族か、人間か』


 確かにテオドラック海岸での一件は、僕にとっても理解できない事だった。

 人の言葉を話す上位種の魔物と実際に会話をし、退けたのも事実。だが、きっとあれは僕が特別というよりも……。


「もう、わからない!!」


 僕は不貞寝を決め込んだ。


◇◇


「元気そうで何よりだ」


 翌朝、近衛騎士団の団長室へ呼び出された。団長の柔らかい表情は一瞬だけで、すぐに仕事モードへと変わる。


「国境近くの黒の森で魔族の痕跡が確認された。イシュクルテと共に調査へ向かってくれ」

「はっ。しかし、僕は今王女の護衛で――」

「これはユーア王子の進言だ。頼んだぞ」


 ユーア王子が僕を指名した?なぜ?

 信用できないのではなかったのか?


「詳細はここに書かれている。準備が整い次第、即刻出発だ」


 試されている――そう思った。王子は僕を監視し“本性”を暴こうとしているのかもしれない。ならばその信頼を勝ち得るために尽力するのみ。


 僕は頷き、団長室を後にした。


◇◇


「遅くなってごめん……いや、申し訳ありませんイシュクルテ中尉」

「いいのよ、敬語なんて」

「でも一応は上官なわけだし」


「では命令します。バルト・クラスト少尉、以降の敬語と敬称は厳禁とします」


 真剣な眼差しからの、その笑顔はズルい。


「りょーかい。よろしく、イシュクルテ」

「ええ、こちらこそバルト」


 今回調査を行う黒の森は、王都から三日ほどの場所にある。大陸最大の渓谷があり、人の手が行き届かない場所であるため、魔物や未知の植物が多く生息しているのだという。


 ちなみに、イシュクルテは何度か調査に行ったことがあるらしい。


「この渓谷って、どのくらいの深さなんだ?」

「わからないわ。下に降りた者はいないし、いたとしても帰っては来れないでしょう」

「そんなにか……」


「ええ、間違っても足を滑らせたりしないようにね」


 フラグにしか聞こえないが。


 王都から出発して五時間ほど。今日はここで野営することにした。


「しかし、他の騎士もつけないで二人だけの任務とは荒っぽい扱いだよな」

「……そんなものよ。王宮は私たちを《《ただの》》駒にしか思っていないもの」


 焚き火にチラつく彼女の瞳は、とても寂しそうに映った。僕にも分からない、何か大きなものを無理やり背負わされているような――そんな気がした。


「先に寝るのと、後で寝るの、どっちが良い?」

「どちらでも良いよ。バルトに任せるわ」

「そ、そっか……」


 多少の緊張感はあれど、二人での任務は楽しいものになるだろうと思っていたけれど、そんなに上手くはいかないよな。


 結局、イシュクルテには先に休んでもらい、明方まで僕が見張りをすることにした。


 どうせなら二人で朝まで語り合おう、なんて言える雰囲気でもなかったし、第一今は任務中だしね。


「仕方ない、仕方ない」


 大きな独り言を空に向かって呟くが、厚い雲のおかげでそれが星々に届くことはなかった。



「そこに居るのは誰だ?」


 たんぽぽコーヒーを嗜んでいると、背後から何者かに声をかけられた。振り向いて見ると、三人の武装したパーティがいた。


 なんだかコスプレ集団みたいだな。

  

 派手さは認めるが、それは機能美ではなくただのオシャレな感じだ。耐久性もイマイチで殴っただけで凹みそう。


「その制服、王国の近衛騎士団か?」

「そうだけど。君たちは?」


「「「はぁ」」」


 デッカいため息。


「いやーすまない。俺らは冒険者でな、火の光が見えたから盗賊でもいるんじゃないかって怯えてたのさ」


 じゃあ話しかけないほうが良かったのでは?とも思ったが、彼らはそれなりに実績のあるパーティらしく、盗賊を討伐すると結構カネになるのだとか。


「俺たちも一緒に野営しても良いか?」

「ギルド証も確認したし、僕は構わないよ」

「ありがとう。助かるぜ」


 んーやっぱりコスプレみたいなんだよなぁ、その装備。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ