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凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜  作者: 小林一咲
第2章 テラドラックの怒り

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第72話 別れと出会いと再会と

「えっと、その……だからぁ!!!」


 イザベラ海将は、なんとか説得しようと試みるが、シュリア王女の意思は揺るがないものであった。


「あまり、こういったことは言いたくないのでふが、今回の異動は王家からの命令とお考え下さい」


 どうやら、式典でのことを恨んでいるだけ……ではないように思える。


「シュリア、王女。どうしてそこまでして僕を近衛騎士団へ異動させたいのかお尋ねしてもよろしいですか?」

「先ほども言ったように――」


 いや、違う。

 これは僕の成長のため、というよりもっと根本的な《《何か》》に対抗するためではないのか。


「例えば魔人の存在とか」


 話の腰を折られたシュリア王女は、やや不服そうに僕を見た。


 今日ここに彼女が来てから初めて目があった気がする。そのあまりにも美しい瞳は、何かを悟られまいと言うように揺れ動く。


「……これは、決定事項です」


 しばらくの沈黙の後、彼女はそれだけ呟くと、机に置かれた異動命令書を海将に手渡すのだった。



◇◇◇◇◇


 あれから何日経っただろう。

 

 日々の食いぶちは憲兵団の時の貯金でなんとかなるけど、生きていくためにはこれだけじゃ足りない。


「今日、アンタにできるのは薬草集めくらいだぜ」


 人助けのために冒険者ギルドに登録した、というのは表向きの理由。


 本当はムシャクシャした感情から逃げるために酒に酔っていたところ、たまたま酒場で居合わせた冒険者に勧められたから――なんて言えるはずないからな。


「じゃあ、それで」

「あいよ。終わったらいつもの所で待ってるぜ」

「また呑むのか……」


 冒険者というのは実に自由でお気楽。だが、この雰囲気は嫌いじゃない。



「お、こんな森で会うとは奇遇だな」

「あぁ、薬草採集の依頼クエストでな。ちょうど今終わったところさ」


 彼らはボクを冒険者に誘った張本人たち。王都のギルドでは名の知れたパーティだ。


「今日もハーランのとこへ行くのか?」

「そうだよ。受付のバンに誘われちゃったからね」

「あのオッサンも懲りねえな。じゃ、呑み過ぎには注意だぞ!」


 実力も愛嬌もある。

 ボクとは正反対の人たちだな。


◇◇◇◇◇


「い゙がないでーお゙ねがいーー」


 王都へ出発する当日、オームの大門の前で僕は見たこともないほど泣きじゃくる母に抱きつかれていた。


「王都なんてすぐそこだよ。休みがあればかならず帰ってくるから」

「そう言っていつも帰って来ないじゃなーい!」


 返す言葉も無い。


「まったく、こればかりはサランに同情するね。まだ研究が進んでいないって言うのに、急過ぎるんだよ」

「す、すみません」


 トミヨ婆さんが母の肩を持つとは意外だったが、確かに今回は僕の方が悪いからな。いや、僕は悪く無いだろ。


 またオームに災悪が訪れたら、と考えると不安でしょうがない。


「おい、バルト。ここは俺らが守る。だから、安心して行ってこい」

「うん。ボルト兄さん、ありがとう」


 こういう時の兄さんは本当に頼もしい。婚約もしたし、我が兄ながら立派になったなと感慨深い。


「では、行ってきます」


 オーム領の家族たちに見送られつつ、僕は騎士団が用意してくれた馬車からいつまでも手を振り続けた。



 王都に到着すると、近衛騎士団の制服を着た女性が門前で待っていた。


 案内役だろうか。しかし、どこかで見たことがあるような……


「久しぶりね、バルト」

「イシュクルテ!」


 騎士学校の卒業式以来に再開した彼女の胸元には、大きな勲章が四つ五つと並んでいた。

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