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凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜  作者: 小林一咲
第2章 テラドラックの怒り

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第58話 2人の歯痒さ

『お前は何者だ』


 なんだか久しぶりで新鮮な気分だな。

 この街には僕を――僕のスキルを知っている人は多い。だから、改まってスキルのことを驚かれることは久しくなかった。


「あなたには僕のスキルが見えているのですか?」

『いいや。見られるのはステータスや魔法の得意属性のみ。そのどれもが《《中途半端》》で、騎士にしては平均以下だ』


 直球で言われるとヘコむなぁ。


『しかし、その圧倒的な存在感は“魔の者”にとっては脅威でしかない。それがどうも引っかかる』


 なるほど、1人だけ目立ってしまったというわけか。だからリヴァイアサンは僕に声をかけた。


「僕には神から与えられた【普通】というスキルがあるのです。きっと引っかかるのはそれが原因でしょう」

『ふうむ……聞いたこともないスキルだ。魔族こちらにもそんなものは居ない』


 リヴァイアサンは訝しげに、だが興味深そうに低く唸った。

 リヴァイアサンは海の神とも言える絶対的な存在。だから彼に興味を持たれるというのは栄誉でもあり、反対に“目を付けられた”とも考えられるので素直には喜べない。


『貴殿の願いは、帰ってくれ――ということだったか?』

「は、はい……できればそうしていただけると」

『良いだろう。こちらとしても不本意であったからな。だが、貴殿とはまたすぐにでも会うことになろう』


 え、マジ?


『それではな』

『じゃあね、不思議な坊や』

『……』


 3体はそれぞれ海に帰っていく――と思われたが、今の今まで一言も発さなかった(というか話せないと思っていた)クラーケンが触手を一本上げながらこちらへ視線を向けた。


『王都にも魔人が出た。奴の狙いは国王だ』

「国王……?」

『気張れよ、《《バルト》》』


 バルトと言ったのか?どうして僕の名前を知っているんだ。


 尋ねる前にクラーケンは海の中へと消えて行った。3体が去った後、他の生き残った魔物らも次々へ海中へ消える。しかし、疑問は払拭できぬまま。


◇◇◇◇◇


「クラーケンがそんなことを……」


 全ての後始末が終わってから、僕はイザベラ海将の元を訪ねた。団長室には既にキャプテン・セリーナが居て、2人にだけは《《あの》》3体とコンタクトを取ったことを話した。


「しかし、鵜呑みにしてしまって良いのでしょうか?」

「例え人を欺く方便だったとしても、王宮に報告するべきだと思います」


 国王が狙われている――なんて、事実なら大事だし、その報告を怠ったとなればクビでは済まないだろう。


 それに、あのクラーケンはどこか違和感がある。魔物にしろ魔人にしろ、あそこまで人間らしいのは見たことがない。


「あと、リヴァイアサンが僕に会いに来るかもしれません」

「「へ?」」


 威厳が微塵も感じられない表情になった2人を見て、不意に笑ってしまった。


「「笑い事じゃなーい!!」」

「す、すみません」


◇◇◇◇◇


 テラドラック海岸の魔物が消えてから数時間後、インヒター王国王都、王国憲兵団本部内。


「これは国王の決定である。逆らえば、憲兵団といえども反逆罪となろう」


 歯痒い。

 今回の一件では、オーム領民や海洋騎士団の損害は無いに等しい。だけど、兵士もこの国の民であり、もっと尊重されるべき存在。それを、「国王の意だから」という理由だけで納得できるわけがない。


「おいおい、また大臣に噛み付いたのか?」

「先輩……だって、こんなのおかしいですよ!」

「まぁ、気持ちも分かるがな。俺たちの仕事は内部の崩壊を内部から防ぐこと。だがそれが通用するのは俺たちより低い連中に限る」

「それでは意味がありません。もしもの事があってからでは……」


 友人バルトが居るから――でも、それだけじゃない。地方への対応がこれでは、王都での魔人の脅威に太刀打ちできない。


「俯くより仕事だ仕事。騎士団が出払っている今、最も危険なのは囚人が脱獄することだ。ホラ、行くぞ」


 地下牢か。

 あそこは嫌いだ。


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