第六話
――ある日のこと。
風呂をあがった俺とフレアは、ゆっくりと俺の部屋でくつろいでいた。
「お前もすっかりこの家に馴染んでるな……。」
「まぁね〜 僕たち家族みたいなもんでしょ…?」
「確かに、俺の親もお前にデレデレだもんな……」
そう。俺の親もコイツにデレデレだ。
もう家族だと言わんばかりの待遇を受けている。
「君のお父さんとお母さんにはお世話になってばかりだよ……」
「ほんとにな……」
あれは確か、初対面の時だっけか…。
――フレアと親が初めて会った日。
「ぼぼぼ…僕どうしよう……!?!?」
「うーん…。」
俺とフレアは焦っている。
それもかなり。
ここ最近は親が外出で長らく家を開けていたため、フレアはこの家に居ることが出来た。
だがしかし、そんな日がいつまでも続く訳では無い。
今日。今から。
親が帰ってくる。
この状況をどう説明したらいいものか。
「壁に張り付いてたらばれないとか……!?」
「そんなもんバレるに決まってるだろ……」
「ぼ、僕にどうしろって言うのさ〜!?!?」
「ま、まあ落ち着け…なんとかなるって……」
「そんなこと言ったって〜〜!?!?」
(ピンポーン)
あ、来た。
「もう正直に言うしかねぇな…!!」
「か、かみさま……僕をこの家に……」
「そこまで祈るほどかよ!?!?」
仕方ない。正々堂々だ。
重い足を無理やり動かし、玄関へと向かう。
玄関の扉を開けると、そこには両親が手土産を抱えて立っていた。
「優斗!開けるの遅い!」
解錠の遅さに少しご立腹の母親。
「ごめんごめん。って、荷物いっぱいだな…?」
「優斗のために父さんと母さんがいっぱい買ってきたんだ!嬉しいだろう?」
「俺はガキか!!」
い つ も の
俺の親はいつも俺をガキ扱いしてくる。
いつまでもお土産ではしゃいでいる訳では無いというのに。
「あ、そういや家に…」
「早く中に入りましょ! 久しぶりの我が家だわ〜!」
「ちょ、ちょっとまt……」
「何よ? 止めるんじゃないわよ! ほらどいて!」
「あ、ちょまt……」
必死の制止も虚しく、あっさりと突破されてしまった。
「ただい…ま……?」
「あ、その…お邪魔、してます……」
母とばったり遭遇してしまった。
\(^o^)/
ついに一巻の終わりか。
「母さん?何かあったのか?」
後に続いて入ってくる父。
「……。」
「い、言うの忘れてたわ……」
凍りついた母と父。
早く抜け出したいこの空気。
「優斗……??」
「は、はい……」
これは終わった。
なんの言い訳もない。目の前にあるものが全てだ。
俺は覚悟を決め、目をつぶった。
何を言われてもいいと。
「優斗の彼女さんなのあなた!? 私嬉しいわ〜!」
「母さん!今夜は祝杯だな!!」
は?
「ど、どゆこと…?」
「お、俺にもわからん…。」
目を丸くして見合っている俺とフレア。
もう何が何だか分からない。
「優斗!あんた彼女がいるなら早く紹介しなさいよ!」
「いや、別に…」
「優斗、父さんは言い訳が嫌いだ! こんなに可愛い子を捕まえておいて…」
「いやだから、その…」
ダメだ。何も聞かない。
こっちの話は全て遮られている。
「あなた大丈夫…? 優斗になにかされていないかしら…?」
「え、えっと……」
「なんもしてないって! な?フレア?」
「ぼ、僕…優斗くんにあんなことやこんなこと…されました……。」
「この機に乗じて何言ってんだよ?!?!」
「優斗、お前ってやつは…父さん悲しいぞ……」
「いや違うって!!俺なんも!してない!!」
――大変だったな。
なんやかんやあって、今はこうして住んでいる訳だが。
両親は思い込みが激しい性格だからか、未だに何ひとつとして誤解は解けていない。
「そういえばさ! あの日、なんで僕に告白してくれたの?」
「あの日?」
「そうだよ! 僕に、"もう一度信じてくれないか"って!」
「あーそんなこともあったなー(棒)」
「真面目に答えてよ!?!?」
「うーん…? 飯が美味いから…?」
「ご飯のためなの!?!?」
流石に冗談だ。
ご飯が美味しいのは確かだが…
俺もそこまでの人間では無い。
「冗談冗談!まあ、あえて言うとすれば、"手に入れたかった"からか?」
「手に入れたかった…?ってどゆことっ?」
「そのままだ。お前が欲しかったんだよ。好きとかも色々と含めてな。」
「きゃ〜!ロマンチック〜〜!♡」
「真面目に答えたらそれかよ……」
恥ずかしい事を言わせたくせにこれかよ!!
勇気を振り絞って無駄だったか…。
「ふふっ!冗談だよ! 優斗が僕を欲してくれるから、僕も生きていられるからね!」
「そんな重くなくてもいいけどな……」
俺が明確にフレアを欲する。
これが彼女にとっての、確かな愛なのだろう。
「……ねえ優斗。」
「ん?」
「僕に愛をくれて、ありがとう。」
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