第五話
――これは本当なのか。
フレアの話を聞いて、俺は驚愕していた。
前世の自分に、行動に、発言に。
そして今、俺の前にいる彼女が、涙を流していることに。
「な、なんかごめんな…お前の事情も知らずに、酷いことばっかり言ってしまって……」
「……。」
静かにゆっくりと涙を流すフレア。
その涙のひと粒ひと粒には、彼女の複雑な気持ちが混じっているような気がした。
「こ、これで許してくれ……」
慣れない動作で、そっと彼女の肩を抱擁する。
あまりにも不慣れでぎこちない動作。
恋愛初心者故の経験不足によるものだ。
「辛いこと、沢山あったんだよ…な……」
何もかもを信じることが出来ずに、自分の中で疑問を生み続けていた彼女。
解けない問題と向き合ってきた彼女の気持ちは、誰も分かってあげられなかっただろう。
でも。
「俺も、全部が分かった訳じゃねぇけど…その……」
全部が分かった訳じゃ無い。
でも。
分かってあげたい。
そう心から思う。
「ちょっとだけでも、お前のことを分かりたい。」
ちっとも上手く言えない。
複雑な気持ちの前で、言葉なんて無力なんだ。
この気持ちは、文字で、言語で、言葉で、表せないものなんだ。
でも。
少しでも気持ちを伝えたい。
「許して、くれないか…?」
沈黙と涙。
「もう、いなくならないでよ……」
必死に絞り出すフレアの言葉には、切望と涙が刻まれている。
そんな気がした。
「あぁ。もう俺はいなくならねぇよ。」
これが俺の出せる最大限の答えだ。
「……ずっとすき、だよ。」
「な、慣れねぇな……」
好きと言われる気分は良い。
だが、不慣れな言葉には戸惑いが隠せない。
「なあ、フレア。」
「……?」
俺がお前の疑問に、"答え"を作ってやる。
「俺を、もう一度信じてくれないか。」
「………………うんっ…!」
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