木箱の謎と新たな泥濘
庭のシャワーを浴びて、泥だらけのユニフォームを別の体操服に着替えた私は、洗濯をしながらまだ胸の高鳴りが収まらない。今日の泥濘の王国での冒険はいつもと違った。深い泥の中で見つけたあの小さな木箱が、私の頭から離れないんだ。泥にまみれたその姿は、まるで長い間誰かに忘れ去られてた宝物みたい。洗濯用のバケツにぬるま湯と洗剤を入れて、ジャージや半袖体操服を漬け込んでると、泥の匂いがふわっと立ち上ってきて、さっきまでの楽しかった時間がよみがえる。
靴をブラシでこすりながら、木箱をチラッと見る。庭の隅に置いたその木箱は、泥が乾き始めてカサカサした表面になってる。蓋の錆びた留め具が少し開きそうで、でも無理にこじ開けるのは怖い。だって、中に何が入ってるか分からないんだもん。お宝かもしれないし、ただのゴミかもしれない。でも、その「分からない」が私の好奇心をくすぐって、ワクワクが止まらないんだ。洗濯物を干し終えたら、ちょっと調べてみようかな。
洗剤液に漬けたユニフォームを1時間ほど置いて、その間に靴を洗う。泥水とおしっこでびしょびしょになったハイソックスは、茶色の染みがこびりついてて、ブラシでこすると泡が茶色く濁る。靴の中まで泥が入り込んでて、指でかき出すと小さな土の粒が「じゃりじゃり」って感じで手に残る。タオルで水気を拭いて干すと、薄く茶色に染まった靴とハイソックスが風に揺れて、私の泥んこ冒険の証みたいで誇らしい気持ちになる。洗濯機でユニフォームを洗って干し終えた私は、ようやく木箱に手を伸ばした。
木箱を手に持つと、ずっしりした重さがあって、泥が乾いた表面が少しザラザラしてる。蓋の留め具をそっと触ると、錆が指に付いて赤茶色に染まる。「開けてみようかな」って思ったけど、道具がないと難しそう。キッチンから古いスプーンを持ってきて、留め具の隙間に差し込んでみる。少し力を入れると、「ガリッ」と音がして留め具が外れた。ドキドキしながら蓋を開けると、中には小さな布袋が入ってた。泥の匂いが混ざった湿った空気が漂ってきて、袋の表面は少しカビ臭い。
袋を開けると、中から出てきたのは古い手紙と小さな金属のペンダント。手紙は紙が黄ばんでて、インクが滲んで読みにくい部分もあるけど、なんとか読める。「ミユキちゃんへ」と書かれてて、私はびっくりして目を丸くした。「え、私に?」って一瞬思ったけど、よく考えたらそんなはずないよね。昔の誰かが書いた手紙が、偶然私の手に渡っただけだ。でも、その「ミユキちゃん」という文字を見た瞬間、なんだか運命みたいなものを感じちゃった。
手紙にはこう書いてあった。「このペンダントは、泥濘の近くに隠した私の宝物への鍵だよ。探してみてね。楽しかったあの場所で、また会えたらいいな。――ミユキより」。文章は短いけど、読んでるうちに胸がドキドキしてきた。ペンダントは丸い形で、真ん中に小さな石がはまってて、泥で汚れてるけど拭くと少し光る。「泥濘の近くの宝物って何だろう?」って考えながら、私は次の泥んこ遊びがもっと楽しみになってきた。この手紙を書いた「ミユキ」は誰なんだろう?もしかして、私と同じ泥んこ好きだったのかな?
次の日、学校が終わって家に帰ると、私はすぐにユニフォームに着替えた。昨日干した体操服はまだ薄く茶色に染まってるけど、それが私の相棒なんだ。紅白帽子をかぶって、ペンダントをポケットにしまって、今日は新しい場所を探してみることにした。手紙に「泥濘の近く」って書いてあったから、河原の別の場所に何かあるかもしれない。家の裏口から出て、自転車に乗って出発だよ。
田んぼのあぜ道を走ってると、風が髪をなびかせて気持ちいい。少し離れたところに、普段あまり行かない小川の支流があるのを思い出した。そこは木々が茂ってて、地面が湿ってて、泥濘ができやすい場所だ。ペダルをこいで10分くらいで着くと、小川の脇に広がる湿地が目に入った。泥水がキラキラ光ってて、私を呼んでるみたい。「ここで遊ぼう!」って決めて、自転車を木に立てかけて、早速飛び込んだ。
「ズブッ!」と靴が泥に沈むと、冷たい泥水が靴の中に染み込んでくる。ハイソックスが足首からふくらはぎまで茶色に染まって、びしょびしょになる感触がたまらない。ジャージの長ズボンが泥に浸かって、膝までべっとり茶色に染まる。走り回ると、泥がピチャピチャ跳ねて、ジャージの袖や裾に茶色の模様が広がる。勢いよく転んでみると、泥が柔らかく私を受け止めてくれて、全身に泥が絡みついてくる。ジャージをめくると、半袖体操服の裾がうっすら茶色に染まってて、ショーツにも泥水が染み込んで冷たい感触が広がる。
バケツで泥水をすくって頭からかぶると、髪から滴る泥水が顔を伝って、「じゃりじゃり」って土の粒が口に入ってくる。紅白帽子に泥を擦り付けると、白と赤が茶色一色になって、なんだか新しい冒険の始まりみたい。服の中に泥水を流し込むと、半袖体操服やショーツがびしょびしょになって、体にぴったり張り付いてくるのが気持ちいい。深いところで泳いでみると、泥が体を包み込んで、まるで浮いてるみたいだ。
ふと、手紙のことを思い出した。ポケットからペンダントを取り出して、泥濘の周りを見回す。木々の根元に、妙に盛り上がった土の場所があるのに気づいた。近づいてみると、泥に埋もれた石がいくつか並んでて、なんだか不自然だ。手で泥をかき分けてみると、石の下に小さな鉄の箱が出てきた。「これが宝物?」ってドキドキしながら、ペンダントを手に持つ。箱の蓋に小さな穴があって、ペンダントの石がぴったりはまりそう。試しに差し込んでみると、「カチッ」と音がして蓋が開いた。
中には、古いノートと色あせた写真が入ってた。ノートには「泥濘日記」と書いてあって、写真には女の子が泥だらけで笑ってる姿が映ってる。その子、どこか私に似てる気がする。ノートを開くと、「今日も泥濘で遊んだよ。全身泥んこになるの、最高!」って書いてあって、私は思わず笑っちゃった。この子、絶対私と同じ泥んこ好きだよ!
まだノートを全部読む時間はないけど、私はこの新しい泥濘で遊び続けることにした。鉄の箱をそばに置いて、また泥の中に飛び込む。泥水が靴やハイソックスに染み込んで、「グチュグチュ」って音がするたびに、心が弾む。全身泥んこになって満足したら、川の浅瀬で泥を落として、箱とノートを持って帰るつもりだ。帰り道も、茶色に染まったユニフォームで歩くのが楽しみで仕方ないよ。