07 姫様の猛プッシュににやけちゃうんだけど、ヒロイン達の理想の未来だけは妥協できない
「ハルトよ。二つ問いたい」
勢いよく頭を下げたミリリアと、無言で座っているオレ。
オレ達二人の前でしばらく考え込んだ後、王様は静かに訪ねてきた。
「なんでしょうか?」
「一つは、君のもつ預言者の力についてだ。
それはどのような力で、どういった情報を得られるのか。
隠さず言えば、我が国の益のために未来を知る事が可能かどうか、だ」
なるほど。そりゃぁ気になるよね。
ミリリアの説得だって、預言の力が国の役に立つよって言ってるんだから、本当に役に立つか気になるのは当然だ。
だが──
「その話をするには、この場には人が多すぎます」
見える室内で、騎士が5名。
侍女がユティナさんを除いて3名。
さらに、おそらく持っている気配察知スキルが、天井裏や壁の向こうにも人が存在していることを教えてくれている。
「……人払いをせよ、と?
ここに居るのは、騎士も侍女も精鋭の中の精鋭だ。特別に信を置けるものしかこの場には居ない」
「それでも、です」
周りの騎士と侍女が敵意や殺気を向けてくるが、そんなの知ったことか。
今でさえオレが預言者であるとこの場で情報が知れているんだ。ミリリアのため、ここは絶対に譲れない。
そういう気持ちを込めて、はっきりと王様を見つめる。睨みつける、と言ってもいい。
しばし、無言で視線がぶつかり合う。
王様も威圧、というよりも殺意さえ込めてくるが、びくびくする心を押しとどめて必死に睨み返す。
無言で、けして妥協しないオレの様子から、言外に何かを感じ取ったのだろう。
固く握った拳に手を添えて、ミリリアが取り成してくれた。
「お父様。
これでは話が進みませんから、一つ目の質問についてはひとまず保留に致しましょう。
それで二つ目のご質問は?」
「う、む……わかった。
二つ目の質問は、君の望みだ」
「望み、ですか?」
「私はまだ、君自身から聞いていない。
君が褒美に、何を望んでいるのかを」
うん、そうですね。
考え込んでる途中でミリリアが爆弾発言したので、話が流れてましたが。
オレの希望は、一言も口にしてないですよね。決まってなかったからなんだけど。
「ハルト様は、わたくしと同じ気持ちです!
わたくしと添い遂げたいと、思って下さいますよね?」
思う。
思うさ、思ってるとも!
少しだけ不安そうにこちらをのぞき込むミリリアを抱きしめて、声を大にして答えてやりたい。
──でも。
「ありがとう、ミリリア。
でも、ごめんね。それは、《今は口にできない》んだ。」
それでもオレは、その言葉を否定しなきゃならない。
一言に、精いっぱいの意味と気持ちを込めて。ミリリアの言葉を否定する。
「えっ……」
きっと、否定されるなんて思いもしなかったんだろう。
裏切られたとでも言いたげな瞳に、心臓がきしみをあげる。
それでも……それでも!
オレは、今ここで、ミリリアを選ぶわけにはいかないんだ!!
「オレの望みは!
ミリリアが! ヒロイン達が!
平和な世界で、幸せな日々を生きてくれることなんだ!!」
ユティナ
「えっ……ミリリア様だけでは満足できず、他の女性達ともまとめて婚約したいってことですか?」
(呆然とした表情でナイフを取り出す)