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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第一章・第一話 盗賊Aはヒロイン達が大好きなんだけど、メインヒロインは勇者の旅に同行させなきゃならない
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06 えらい人の魂が抜けてんだけど、王女様は容赦しない

「申し訳、ございませんでした……」

「いえ、こちらこそ突然泣き出したりして、大変申し訳ございませんでした」


 王様と元盗賊が、ソファ越しに頭を下げ合う。


……本当にいいの、これ?

 あとで暗殺されたりしない?


 周囲をちらっと見れば、侍女たちは概ね姫様の味方、騎士達は我関せずと言った感じで目を反らしている。

 是非この光景を、立場の違いという言葉の例題にしてやりたい(現実逃避)


「ミリリア=ファン=フェイルアードの名において、双方の謝罪を確認しました。

 今後はこのような事が無きよう、誠実に、敬意をもって預言者様に接するようお願い致します、国王様?」

「はっ、はい。

 わかりました」

「……よろしい♪」


 どこまで計画でどこから感情だったのか。

 一瞬見せた上機嫌さにビクリとするものを感じ


「預言者様。邪魔しようとするものは、わたくしが全力をもって排除致しますから。

 これからも、ずっとよろしくお願い致しますね?」

「ははははいっ、よろしくお願いしまーすっ!」


 ミリリア可愛いぃぃっ、くそぉぉぉ!

 こんな笑顔向けられたらコワイとかビクリとかそんなこと言えるわけないじゃんかよぉぉぉ……!


「「くっ、くぬぅぅ」」


 奇しくもオレと王様の小さな呻きが重なり、ちらと視線が合い。

 互いに諦めたようにため息をついて笑った。


 うん。お互いに、ミリリアには全く勝てないっぽいですね?

 何だか王様と仲良くなれそうな気がしました。




「改めて。

 この国の王、ゲンザーロ=アルサー=ウァード=フェイルアードだ」

「元盗賊の、ハルトと申します」


 どう名乗るのが正しいのかはよく分からなかったが、ミリリアのおかげで考える時間はできた。

 ひとまずは名前だけを自己紹介にして、盗賊になるより前は記憶喪失で押し通す。

……押し通すも何も、この世界での記憶という意味では、事実だしなぁ。それ以外に話しようもない。


 預言部分については、気づいたら記憶の中にあった、ということにしよう。

 占いましたみたいなのだと、ゲームで存在しない部分について聞かれた時に困るから。


「こたびは我が娘、ミリリアの救助に多大なる貢献を果たしたと聞いている。

 本人たっての希望ということで表彰などは行わなかったが、だからと言ってその功績が翳るものではない」


 これについては、ほんと聞き届けてくれて良かった。

 当初はオスティンの式典と共に、ミリリア救助の功績についても表彰をする話になっていたんだそうだ。


 もう、全力で拒否したね!

 鎧着て立ってるだけでも辛かったのに、オスティンと同じようにずっと中央で晒されてるとか途中で倒れるわ。

 小市民なめんな!(ただし裏稼業)


「また、これまでの盗賊としての罪についても、今回の功績とミリリアから聞いた預言者としての立場から不問とする。

 ただし今後については罪は罪として罰するゆえ、ゆめゆめ忘れぬようにな」

「かしこまりました。

 ご配慮いただきありがとうございます」


 RPGなので、盗賊はモンスター扱いと言っても過言ではない。

 人権なんてないので、いつでも誰でもバッサリ殺しておっけーです。こわ。

 運良く?生きて捕まったとしても、待ってる未来は死刑か鉱山送り(ゲーム内から除外)

 もちろん、キャラクターとか冒険者の職業としての『盗賊』は別だけどね。


「して、何か望む褒美はあるかな?」


 褒美。褒美かぁ……

 もちろん、当時(と言っても一昨日の夜から昨日の朝の話だけど)は夢中で、そんな事考える余地はなかった。

 ただ、ミリリアを助けたい一心だったし、助けられた事が幸せでそれ以上を望んでるわけじゃないんだ。


 そんな風に考え込むオレの横で、ミリリアが声をあげた。


「お父様、わたくしとハルト様の仲をお認め下さい!」


「「ええぇぇっ!」」


 ミリリアの爆弾発言に、またも揃って絶句する王様とオレ。

 そんなオレ達を見て少し満足そうに微笑むと、大きな胸に手を当ててミリリアはゆっくりとしゃべりはじめた。


「わたくしは預言者様、いえハルト様に命を救われました。

 これだけでも、ハルト様の働きはわたくしの命に見合う価値のあるものです」


 いやいや、盗賊Aが死んで白のストーリー通り進んでも、ミリリアの命は奪われないから!

 そんなこと、流石に言えないですけど!


「しかもハルト様は、わたくしを助けるためだけに盗賊内に身を潜め、己の命を賭けて下さった。

 そうしてわたくしを助けておきながら、褒美も求めず、名も名乗らずに次のどなたかを助けに行こうとされました」


 ターシャの事だね。

 うん、もちろんちゃんと助けてあるよ。今はユティナさんにお願いしてお城の一室で待ってもらってます。


「また、ハルト様はわたくしに対し、勇者の聖剣についての予言を託されました」

「預言、か……」


 洞窟で別れる前、オレはミリリアにオスティンが受ける勇者の啓示についてを話した。

 オレが介入するせいでストーリーに変化が生じ、それによって勇者覚醒が発生しない事を恐れたからだ。


「語られた内容は勇者オスティンがその晩に受けた夢の啓示をさらに詳しく言い当てたものでした。

 ハルト様がいまだ訪れていない未来を把握する力をお持ちである事は確かです」

「確かに言っておったな。

 オスティンが見た夢の内容を、前日のうちに聞いた、と」

「はい。

 勇者が見た夢については、彼の性格なのか、記憶があやふやな点も多かったのですが……」


 おいおい、オスティン大丈夫かよ?

 大事な事だから、ちゃんと覚えておいてくれよな。


……本当に大事な事を忘れてないか、機会があれば覚えてる内容を確認しよう。

 うっかり忘れました!で世界滅亡とか、ほんとシャレにならんからね。

 勇者だから、大丈夫だと思いたいけど。


「でもハルト様から聞いていた話を彼に伝えれば、そう言えばそんな事も言われていたと思い出した様子でした」

「なるほど……」


 ミリリアの説明を聞いて、王様が考え込む。

 預言ではなくゲーム知識という差はあるが、言ってる事は概ね間違っていない。


「ですからわたくしがハルト様と婚儀を結ぶ事は、ハルト様への褒美であると共に、我が国をより強く豊かにする国益となるのです。

 お父様。是非、お願い致します!」

ミリリア の ターン!

「パパ! わたし、ハルトさまと、けっこんする!」


王様 の ターン!

「ぐぶはぁぁっ!?」


王様 は 死んだ!!

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