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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第二章・第二話 旅芸人と共に精霊の儀へ向かうんだけど、魔法使いだけはいつも通り残念でならない

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45 盗賊達は何度もステージを見たんだけど、お姫様はまだ一回も見ていない

「改めまして、こんにちはハルト様。お久しぶりですね」

「そう……ですね、ミリリア、様」


 隣り合って座り、ユティナさんが淹れたお茶を手に微笑むミリリア。

 全員がこの部屋に集まってテーブルについており、周りの目もあるのでちょっと悩みつつ敬語で返すと――


「数日お会いできないだけでハルト様は他の女の目を気にしてわたくし相手に慣れない敬語をまた使うようになってしまわれたのですね、これではハルト様にお城から屋移りしていただくには時期尚早であったと判断せざるを得ません。やはりしっかりと目の届く城内に監禁(居て)いただいてわたくし自らが毎日監視(お会い)しなければ……」

「ちょっ、怖い黒い何か漏れてるぅぅ!」


 少し俯いて早口で呟くミリリア。

 前髪に隠された表情が見たいような見たくないような、いやミリリアに限ってそんなことは!


「お願い正気に戻って、み、ミリリア!」

「はいっ、ハルト様のミリリアはここにおりますわ」


 呼び捨てにした途端、ぱぁぁぁっとばかりに顔を上げて満面の笑みを浮かべてくれるミリリア。

 腕をゆるく抱き、きらきらと嬉しそうな眼差しで見つめてくれる姿に何度見ても胸が高鳴る。

 ああ、可愛いなぁ……


 ちょっと前の様子?

 怖いことは何もなかった、うん。忘れました。


「でもハルト様、ちょっと酷いと思いますわ」

「ん、何が……かな?」


 ミリリアの可愛さににやけそうになるのを堪えつつ、出来るだけ真面目な顔で聞き返す。


「わたくしは毎日、いつハルト様がいらして下さるのか楽しみにお城で待っておりますのに。

 ハルト様は毎日、とっかえひっかえ別の女性と、時には何人も侍らせてデートに行かれてらっしゃるなんて!

 やはりお父様が何を言おうともお城から出さず監禁して毎日わたくしとデートを」

「ちょっ、ストップ、すとーっぷ!

 言い方酷いとか、なんで知ってるのとか疑問はあるけど、とりあえずストップ!」


 慌てたオレの様子に、視界の端に立っていたメイドがドヤ顔で自分をくいくい指さした。


 そうかお前さんか! だろうと思ったよ、この暗殺メイド!

 いつか絶対仕返ししてやるからなぁっ!


「わたくし自身、はしたないかしら?とは少し思いましたけれど。

 どうしても、ハルト様にお会いしたくて、当然!次はわたくしの番ですわよね!と直接お伝えしたかったのですわ」

「その次は、当然!私の番でございますよね?」


 なぜか便乗してくる暗殺メイドは完全に無視を決めつつ。


「別にみんなと行ったのはデートでも何でもないよ?

 それはそれとして、旅芸人の興行も行けるならミリリアと一緒に見に行きたいけど、流石にこの時間に急に行っても、もう入れないんじゃないかな」


 オレの言葉に、それぞれがそれぞれの反応を示した。


 ターシャは気にせず、さっきからぱくぱくとお菓子を食べてる。

 セーナは、ユティナさんが淹れたお茶には手をつけず、最初からじぃっとこちらを見続けている。怖い。

 ベルはなぜか、がんと頭をテーブルにぶつけた。痛そう。


 で、すぐ隣のミリリアはと言うと。


「そんなの問題ありません、ハルト様は預言者ですから!

 ハルト様がわたくしと行きたいと言って下さったから、それはもう大丈夫です!」


 無理じゃない?というオレの言葉に、ミリリアは立ち上がると、なぜか嬉しそうな顔をしてオレの腕を引いた。

 やめて、右腕がその大きな温もりに埋もれちゃう! もっとして!


「さ、ユティナ。参りますわよ」

「かしこまりました。

 ハルト様、今すぐ馬車で出ますよ。30秒で御支度なさって下さい」

「それはちょっと短くない?」


 淡々と無茶を言うユティナさんに対し、ミリリアに腕を抱かれて立ち上がりつつぼやく。

 オレのぼやきに、ユティナさんは分かっていますとばかりに頷くと。


「残り4秒です」

「はやっ!」


 このメイド、自分で言っておきながら最初から30秒待つつもりなんてないんじゃねぇかよ!



 こんなこともあろうかと、最終公演のチケットはしっかりと用意してあるらしい。さすが王族、無茶してそう。

 オレ一人だけのお誘いだったら流石に気まずい(断ったかは定かではない)んだが、ベル達みんなの分もあるということで安心。

 ミリリアとユティナさんとともに護衛に周囲を守られつつ馬車に揺られ、今日も道具屋に寄り道してから噴水広場へ向かった。


 受付で、ユティナさんより提示された輝く金色のチケット。

 その輝きにより、オレとミリリアだけがゲームにも存在しなかったVIP席へ案内される。


「あれ、みんなは……?」

「きちんと皆様の分の鑑賞チケットもございますから、ご安心下さいね。

 こちらの席は二人用でしたので、わたくしとハルト様だけしか入れませんでしたけれど」

 

 どう見ても10人くらい入れるスペースに、オレとミリリアだけが座っている。


「ねえミリリア、二人用というには広いんだけど?」

「まあ……本当ですわね。

 きっと他の席は、わたくし達とはまた別の招待客様なのでしょう」


 そういうこと、ありえる……のか?

 でも招待客って意味であれば、確かに王族なんか招待されてもおかしくない……のか?


 若干疑問の余地は残るけど……

 すぐ傍で腕を抱き肩に寄り添うミリリアの温もりがあれば、まぁいっか!


「夢のよう……嬉しいです、ハルト様」

「そうだね。誘ってくれて、ありがとうミリリア」

「ええ。

……でも、今度はきちんと、ハルト様からお誘い下さいましね?」


 うん、そうだな。気を付けよう。

 彼らがフェイルアードに来てから今日までの間は、珍しく予定のない時間だったんだし。ちゃんと、ミリリアの好感度上げもしておかないとね!



 オレにとっては何度も見たステージだが、ミリリアにとっては今日初めて見たもの。

 手を握ったまま楽しそうにはしゃぐ姿に、オレも思わず笑みを浮かべる。


 ありがとう、ミリリア。

 笑顔で居てくれて。

 笑顔を見せてくれて。


 その笑顔が曇らぬよう、これからもしっかりと頑張らなきゃな。



 そう、小さく決意を固めながら。

 ステージが終わった後、名残惜し気に馬車で城へと帰るミリリアを見送った。

 すぐにまた会おうと、小さな約束を交わして。





「ハルト一人だけVIP席とか、ずるいずるいずるーい!」

「ヨゲンシャさん、たーしゃ、キラいになった……?」

「国家権力を使って監視の目を免れいかがわしい事をなさっていたなど、本当に勇者の友としてあるまじき不潔です恥を知りなさいハルトさん」


 その後、一般席で見ていた三人から非難轟々だったことは言うまでもない。


 ごめん! 途中から、みんなのこと忘れて楽しんでました!!

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