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03 プロローグ3

「そっ……

 そんなの、勝手過ぎます!


 勝手、過ぎますぅーーーっ!!」


「んぐ……っ!?」


 耳が、みみがぁ……っ!


 ミリリアが間近であげた絶叫、それによって俄かに騒がしくなる洞窟の方。

 洞窟での戦闘音が聞こえたくらいだ、大声を出せば騎士達にも声が聞こえるのは当たり前。


 胸元に、どんという衝撃とミリリアの重みと温もり、それに柔らかさ。

 輪郭が見えない程すぐ近くで、吐息の熱まで感じられる距離で。ミリリアの匂いに包まれて、心臓が跳ねる。


「あなたが、預言者様であり、誰かを助けたい、それは分かりました、分かりましたとも!


 ですが!

 これっきり二度と会えないなんてことになったら、わたくしは幸せになれないですからね!!」

「え、ええぇ……」


 思わず、困惑の声が漏れてしまう。


 でも自分でも分かってしまった。

 困惑だけじゃなくて……少しだけ、自分の声や表情に、喜びが混ざってしまっていることに。


「ですから、約束して下さい。

 必ず、生きて、またわたくしに会いに来て下さると。

 今日は黙って送り出します。ですから、出来る限り早く、わたくしの下に、必ず帰って来て下さい!」


「……ひめさまそれぷろぽーず……」

「ちっ、ちが、ちがいまっ……!」


 叩かれた。

 なんかもう、いっぱい叩かれた。



 最後まで『違います』とも『違いません』とも、ミリリアは言わなかった。

 その事に気付いちゃったもんだから、何だかすっごく、にやにやしてしまった。


 当然、さらにいっぱい叩かれました。なんだか、すっごく、幸せです……!!




□―――――――――――――――□


【 盗賊によるミリリア姫の救出 】


   ~ クエストクリア ~


●Result


・ スキルポイント獲得 ハルト/ミリリア +3

・ ミリリア ****


□―――――――――――――――□




 どこか遙か遠くで、鐘の音が聞こえた気がした──




    ★ ★ ★



「さて、と――」


 夕暮れの丘から眺める先には、一台の馬車。

 馬車のデザインも記憶通り。本当にぎりぎりだったが、何とか間に合ったようだ。

……これ、ミリリアに協力してもらわなかったら、早馬が手に入らなくて手遅れだったかも。あっぶねぇ。


「預言者様。あれがターゲットの馬車でよろしいでしょうか?」

「ええ。

 あの中に、助けるべき人がいます」


 走っているのは、数人の奴隷を乗せた商人の馬車だ。

 あの馬車に、二人目のメインヒロイン(メイデン)であるターシャが乗っている。


「あの馬車がモンスターの襲撃を受けたら、すぐさま助けに行きます。

 一人も死なせないように、頑張りましょう」


 奴隷商人の馬車がモンスターに襲われ、ターシャ以外の全員が目の前で食われ、ターシャ自身も片腕と片目を失うこととなる。

 黒の主人公の、導入直後のイベント……の前日談だ。

 これもゲームでは、黒の主人公がターシャと出会った時点で、すでに過去に済んだ話として扱われる出来事である。


「恐れながら預言者様。一つ確認してよろしいでしょうか」

「何ですか?」

「当初はお一人でこちらへ来る予定だったと伺っております。

 さほど戦闘力の高くない預言者様がお一人で来られて、どうなさるおつもりだったのでしょうか?」


「……」

「……」


 沈黙が二人の間を流れる。


 問い詰めるでも、非難するでもなく、ただ純粋に疑問を浮かべたちょっと冷たい視線が真っすぐに突き刺さってくる。

 その視線に耐えられず、そっと横を向いて。


「あ、あーっ、モンスターが来ました!

 行きます!」

「ちょっと預言者様!?

 一人で先行しないで下さい弱いのですから、って早い!?」


 ミリリアに無理やり押し付けられた茶色い髪のメイド、ユティナさん(護衛兼監視役、フェイルアード城の入場手形でもあると思う)を置き去りにし。

 今まさに走行を止められた馬車に向かって、自慢の俊足で駆け出す。



 振り上げた腕に、この世界に来た時につけていた緋色の(赤い)腕輪はなく。

 かわりに渡されたミリリアの刻印の指輪を、チェーンを通してネックレスのように首にぶら下げて。


 ディバイン・セイバー。

 白と黒の主人公が、時に純愛で、時に信頼で絆を結び、時には相手の意思を無視し力ずくで絆を奪って、来たるべき魔王を倒す世界。

 そんな世界で、けれど決められた運命(シナリオ)に逆らい、女性(ヒロイン)達を不幸から守るべく。



――さあ、始めよう。

 誰でもない、誰よりも早く死ぬ、ただの『盗賊A』が。


 ゲームでは絶対不可能だった、12人全員の不幸な運命(ストーリー)をぶち壊した『理想の未来』を手に入れてみせよう。


 例え絆は結べなくても、全員に幸せな未来を過ごさせる。そんな最難関の超絶縛りプレイを!



    - - -



 ハルトはまだ知らない、あるいは永遠に知る事はない。



 リメイク版タイトル『ディバインセイバー・トリニティ』


『白の勇者』『黒の魔剣士』と異なる、三つ目の物語。


 本編では鮮やかな明るい赤色に輝くコアの消失という半端な終わり方をした魔王との、真なる決着をつける第三の主人公。



 初めてメイデン全員の同時攻略を可能とした主人公の二つ名は『緋色の盗賊』


 またの名を『盗賊A(・・・)』ということを──

・ プロローグ後にハルトが目指すものを変更

 12人全員攻略 → 12人全員の不幸な未来をぶち壊す


 ハルトくぅん!

 君、今はプレイヤーじゃなく盗賊(モブ)なんだからさぁ。

 メインヒロイン全員の攻略とか、目指しちゃ駄目じゃんかよぉ……!!(大失態)




 はい、というわけで。

 短編をごりごりと加筆修正し、改めてプロローグとさせていただきました。

 変更点は一話目の前書きでご紹介の通りですが、特に大きなものは4点。


 タイトル変わりました

 ハルトは盗賊系技能がある

 ユティナがメイドになった

 全員攻略は目指しません!!


 これですね。

 特に4点目。大変失礼いたしました……

 これまでどう足掻いても為し得なかったミリリア救助成功でテンションあがってて、つい大口叩いちゃったんです(作者もハルトも)



 さて、そういうわけで。

 大っ変、長らくお待たせしました。


 分かたれし剣の物語、ディバイン・セイバー。

 これより、本編開幕です──!!!


 次話、本編は 本日21時頃 投稿予定です!

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