表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第一章・第二話 魔法使いは迂闊でちょろいんだけど、目的のためには勇者が四天王を倒さなきゃならない
19/234

18 ベルルーエ相手にジョーカーを切ったんだけど、主人公である勇者様には通用しない

「勇者の仲間になれば、ベルルーエの師匠が残した時空魔法だって覚えられるぞ!」

「ど……どうして知ってんのよ!」


 師匠の時空魔法を覚えられるというオレの言葉に、一瞬でそれまでの浮ついた雰囲気を消し飛ばして。

 真面目な顔で詰め寄ってくるベルルーエ。


「ハルトは、預言者なんだよ」

「はい。ハルト様がある程度先を見通していることは、私も保証しましょう。

 その力で二人の命を救っております」

「たーしゃもそれで、ヨゲンシャさん、イかされました」


 オレの胸元を掴んだベルルーエに、オスティンとユティナさんが少し小声で説明する。

 ミリリアとターシャ。この二人を不幸な運命(ストーリー)から助けたのは間違いない。

 オレが何もしなくても二人とも命は落とさなかったんだけど、そこまでは別に言わなくていいだろう。

 あとターシャ、多分「生かされ」ましたと言いたいんだろうけど、その発言すごく不穏なのでひっかき回すのヤメテ?


 オレにとっては幸運なことに、その前の発言の衝撃が強すぎてベルルーエはターシャの発言をちゃんと聞いてなかったらしい。

 先に二人の言った預言者発言を捉えて、オレに疑問を向けてきた。


「じゃあもしかして、あたしの事も?」

「いや、ベルルーエは違うけど――」

「そうだね。

 ハルトは否定するけど、その可能性は高いんじゃないかな?」


 ベルルーエの問いに、預言を否定するオレの言葉を笑顔でぶったぎってオスティンが答えた。

 その笑顔はいつもの人当たりの良いものではなく、友人をからかう悪友の笑みに見えたのはオレだけじゃないはずだ。


 おいこら、お前ほんと邪魔すんなよ! これは勇者の仲間加入イベントなんだから、勇者は黙ってAボタン連打しとけ!


「考えてみれば、突然オスティン様を連れて酒場へ行き、見知らぬ人間と組んでクエストに行く。勇者の仲間探しとは言え、あなた達に拘る必要も、一緒に森に行く必要もなかったはずです。

 もしかすると、私達が今日酒場へ来て無理やりでも同行しなければ、あなたは一人で森へ向かい焼け死んでいたのかもしれません」

「違う、違うから! そういうんじゃないから!」


 本気か嫌がらせか、ユティナさんまでベルルーエを預言で助けた説を後押しする。


 なんでみんなそういうことばっかり言うの、ねえ? オレの事嫌いなの? 

 お城のミリリアさーん! おたくのメイド、ちょっとオレのこと嫌い過ぎやしませんかねー!?


「命の恩人、でもあるんだ……

 だからいくら好みだからって初対面の相手の胸をいきなり揉むなんて犯罪的な事をしてあたしに殴られてまで、同行しようとしてくれたんだ……嫌われてでも、あたしを守りたくて」


 やばい、すでに都合よく解釈されてるぅぅ! あと冷静に解説されるととんでもなく犯罪臭がしてるぅぅ!


 それからあと、揉んでません! 揉むほどありませんでした!

 オレはもっとボリュームのある胸の方が大好きです!


……なぜか突然ターシャとユティナさんに蹴られた。この子達、鋭すぎません?


「それじゃあ、さっきの時空魔法の事も、預言で?」

「えっと、今までの部分もすっごい不服で間違いだらけだから! 今日ベルルーエが死ぬ預言なんてないから!


 という事は言わせてもらいつつ。魔導書については、まぁ」


──これ、どこまで話すべきなんだろう?

 時空魔法の覚え方も、何ならベルルーエの師匠の所在も知っている。

 だがあまり詳しい事を話し過ぎると、何かの際に一人でベルルーエが特攻して返り討ちに合うかもしれない。

 そうでなくても、未来を知って行動することで、今後のストーリーが大幅に狂ってしまう可能性がある。



 話す内容。どこまで話すか、どこはぼかすか。

 それを数秒、考えて。


「この先、まだずっと未来で確定した話ではないけれど。

 おそらく勇者が戦う事となる敵の一人が、時空魔法の魔導書を持っている」

「!」

「今、オレに見える範囲の話だから、絶対にそうなるとは限らない。この後の行動によっては変わるかもしれない。

 だけど、少なくとも現時点では、可能性は非常に高いと思う」


 なんせ相手は、三人目の四天王だからな。

 オスティンが魔王を目指して戦い続ける限り、いつかは必ずぶつかるはずだ。具体的には二年後に。


「そうなんだ?

 ハルトにしては珍しく、すごい具体的な事話してくれたね」

「色々、オレにも事情とか心配事があるんだよ。

 オスティンに話せる情報はちゃんと必要なタイミングで教えるから、ある程度の秘密は大目に見てくれ」


 あまり本来のストーリーから離れすぎると、オレの持ってる情報が役に立たなくなる。

 そのせいでミリリアや他のヒロイン達が予想外の不幸な目にあうのは避けたいからな。できるだけ、流れはコントロールしていきたい。


 オレの返事にちょっとだけ考えた後、小さく頷いたオスティン。オレの言い分に、ある程度は納得できたってことなんだろう。

 そんなオスティンはベルルーエの肩に手を乗せると、にっこりと微笑んだ。


「それじゃあ、ベルルーエさん」

「は、はい?」


 オレの言葉に考え込んでいたベルルーエ。

 肩を叩くオスティンに、どんな感情を向ければいいか分からぬのか、何とも言えない顔で問い返す。


 そんな戸惑いを爽やかな笑顔で受け止めて、オスティンはその美声でベルルーエに囁いた。


「ぼくから君に、一つ依頼したい。

 この先ずっと、誰かが魔王を倒すまで。ハルトの仲間となって、ハルトを守って欲しい。

 そのお礼に、もしも将来ぼくが時空魔法の魔導書を手に入れたら、ハルトの仲間である君に譲り渡そう」

「ちょぉぉオスティン、それは――」

「いいの!? あたしやるわ!」


 オレが口を挟む間もなく、ベルルーエが力強く即答。

 目の前で握手と共に交わされた依頼という名の口約束を前に、オレ一人が膝から崩れ落ちた。


 ちょっとあんた達、ほんと何てことしてくれんのー!?

 どうしてオスティン、メイデンを仲間に入れようとしねーんだよぉぉ!!


「ふふふ、いつもしてやられるばかりと思ったら大間違いだよ!

 これでベルルーエさんをぼくの仲間にさせたければ、ハルトも一緒にぼくの仲間になるしかないね!」


 うなだれたオレに投げかけられる、オスティンの勝ち誇った声。

 嫌味や悪意は感じないが、してやったり感が満載でちょっとむかつくなぁ! ドヤ顔してそう。


「依頼だし、命の恩人だし、あたしのことを、す、好きになっちゃった人なんだから、あたしがあんたのこと守ってあげるわ!

 世界一の魔法使い、ベルルーエ様が仲間になるんだから、大いに感謝しなさいよね!」


 いえーいとハイタッチするオスティンとベルルーエ。

 なんか君達、急激に仲いいね!


 それを見てうらやましかったのか、ターシャも背伸びして二人とハイタッチしてる。ちょっと和んだ。


第一章・第二話は明日で終了です。

なので、明日は本編とキャラ紹介の2本立て!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ