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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第三話 盗賊と巨漢が決勝戦を戦うんだけど、どいつもこいつも盗賊よりずっと強くて勝ち目がない
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173 盗賊の切り札が火を噴いたんだけど、挌闘家のとどめの一撃の前には一瞬の拮抗もできない

『とどめの一撃』


 フィニッシュブローとも呼ばれるとどめの一撃は、一部のボス戦で敵にダメージを与えてHPを削り切った後に開始される、必殺技の応酬により決着をつけるゲーム内のシステムだ。


 パーティ全員が攻撃を放ち、ボスの必殺技との力比べが実施される。

 力比べに競り勝てばボスにとどめをさすことが出来るが、ここで負ければ一発逆転で全滅、それまでの戦闘が全て水の泡。

 最後まで油断ならない、熱く激しい戦いを演出するシステムである。


 武闘大会の決勝戦は、この『一部のボス戦』に該当する。

 二周目オスティンが、聖剣を奪われてもレベルのごり押しパンチでガンゼイオーのHPを削り切ったとして。

 とどめの一撃にできるだけの強力な攻撃スキルが使えなくて、必殺技に競り負けて敗北するという悲しい(そして怒りの)結末を迎えさせた諸悪の根源でもあったりするのだ。


……ほんと、なんでエロゲーにこんな無駄に熱いシステムがあるんでしょうね?

 開発会社、拘り過ぎぃ!(大好きです)




 オレは盗賊であり、当然ながら武士ではない。

 だから、オレが使える職業スキルは、盗賊のものだけだ。

 前にも話したが、盗賊のスキルは探索が専門。戦闘で使うような必殺技は存在しない。


 なお、なぜかサブヒロインの盗賊とオレのスキルツリーが少し違う気がするんだけど……モブだからかな?

 あるいはただの記憶違いかもしれん。盗賊はセーナとどちらか片方しか仲間にできないからほとんど使う事なかったしね。

 まあそれは置いといて、オレが盗賊であり、盗賊スキルではとどめの一撃が撃てないことだけ分かってくれればいい。



 ディバイン・セイバーにおける武器分類として、刀は『特殊』に該当する。

 特殊武器の分類は、大きくわけて短剣と鞭、刀の3系統。

 使用者が少ないためか、一つ一つを分けるのが手間だったからか。

 開発がセットにした理由は分からないが、3つともが特殊武器であり、短剣を使う盗賊も、刀を使う武士(アズサ)も、ゲームにおける武器の素質としては同じ『特殊』となるわけだ。

 もっとも、アズサの場合はキャラとして『得意:刀(分類:刀の素質アップ)』という特殊能力があるんだけど、これは今はどうでもいい。



 盗賊スキルに必殺技はない。

 刀の武器スキルでは、必殺技になるほど大威力のものはない。

 じゃあどうするか?


 そうだ。

 盗賊が刀を握って、武士の職業スキルを使えばいいじゃないか!


――とまぁ、こう思ったわけだ。

 得意武器は、武士と同じ特殊武器()なんだからな。



 いやいや、そんなバカな。そんなこと、できるわけがない!

 ディバイン・セイバーというゲームのプレイヤーとしてのオレであれば、そう叫んだだろう。

 だが、オレはこの世界にきて。

 できるわけがない、という言葉を否定する存在を見出したのだ。



 ベルの専用スキル『撲殺魔導杖』

 オレは愛の神殿で、あろうことか、僧侶であるセーナがこのスキルを使うのを目撃した。

 目撃したというか、実際に撲殺された。超痛かった、間違いなくあの痛みは撲殺魔導杖だった!

 しかも、ほんの少しとは言えセーナの方がベルより筋力上なんだ。本家より痛い撲殺魔導杖、まさに撲殺されるかと思いました。

 今思い出しても背筋がぞくぞくしちゃうね。身代わりの指輪さんありがとう!(つまり撲殺された)


 こほん。話を戻そう。

 本来、ベルにしか使えないスキルを、セーナが使ったこと。

 それを不思議に思ったオレは、神殿からの帰りに質問したのだ。なんで使えたの?と。


 答えは単純明快。ベルから教わったから、ときたもんだ。

 いやぁ、びっくりしたね!

 さすがは現実となった世界と言うべきか。

 スキルとしてステータス欄に表示されていなくても、仲間から教わることで、セーナはスキルを身に着けたのだ。



 もう、お分かりだろう。

 オレは、アズサからの体罰…仕返し…厳しい鍛錬により、居合を教わったのだ。

 武士のスキルである居合は、オレの職業スキル欄には表示されなかったけれど。

 爆発的に引き上げられた身体能力によるごり押しで、なんとかオレは居合をものにしたのだった。


──あるいは。

 もとからこの身体(盗賊A)は、居合を使えたのかもしれない。

 それを、肉体が思い出したというだけなのかもしれない。


 理由は、なんでもいい。

 こうしてオレは、スキル欄に乗らない居合を引っ提げて、ガンゼイオー戦に臨んだのだった──



    - - -



 緋色の奔流を迎え撃つは、ただ一閃の斬撃。

 だが迸る力の濁流を相手取るには、刃のない木刀で放つ付け焼刃(・・・・)の居合は、あまりにもちっぽけであった。


「ああぁぁっとぉぉ!

 ガンゼイオー選手の放った光線とハルト選手の斬撃がぶつかりあい!!」


 互いに真正面からぶつかりあった、奔流と一閃。

 だが一閃は、一瞬の停滞さえなく、圧倒的な緋色の力に飲まれて姿を消す。


 互いの(・・・)攻撃は、そのまま相手へと向かって突き進み──




 直撃、爆音。


 轟音の中でハルトの身体が後方へすさまじい勢いで吹き飛ばされる。



「お、おいおいおい、あれ大丈夫なのか……?」


「互いの必殺技に、競り勝ったのはガンゼイオー選手だぁっ!


 光線が直撃したハルト選手、まるで自身の二回戦を再現するかの如く、結界の端まで跳ね飛ばされ壁に叩き付けられたぁぁーっ!!」



 その光景を見た観客の誰もが。

 ガンゼイオーの圧倒的な力が、ちっぽけな攻撃もろともに、ハルトを飲み込んで打ち砕いたのだと思った。


 実況の言う通り、ゆっくりと。

 壁に叩き付けられたハルトの身体が、地に落ちた……

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