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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第三話 盗賊と巨漢が決勝戦を戦うんだけど、どいつもこいつも盗賊よりずっと強くて勝ち目がない
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172 巨漢の格闘家は最強の一撃を繰り出すんだけど、盗賊にそんな必殺技は存在しない

 盗賊とは、ボスを中心とした戦闘よりも、そこに至るまでの道中、探索でこそ光る職業だ。

 鍵や罠の解除、敵の気配察知、お宝や素材の収集。

 他にも敵からアイテムを盗むなど、簡単に言えばパーティの懐を潤し、冒険を快適にする存在である。



「ガンゼイオー選手、古来より伝わる決闘の作法に則り、とどめの一撃を宣言。

 ゆっくりと身構える中、ハルト選手は誘いに乗るのかー!?」



 もちろん、戦闘に役立つ技能がないわけではない。

 罠を解除するだけでなく自ら設置することも出来るし、速度や回避力を伸ばしヒットアンドアウェイに徹することも可能だ。



「まあ、流石に乗るんじゃないか?

 あの坊主、ゾンビとかシスコンとか搦め手ばっかりな印象だが、流石に決勝戦の大舞台で、ここまでお膳立てが揃って逃げるような性格はしてねーからな」



 だが、それらは結局、どこまで行ってもパーティ内の主戦力となるものではない。

 パーティにおける役割は補助キャラ、あるいは稼ぎキャラであって、盗賊が単体で大ダメージを出す必要などないのだ。

 だって、RPGでは複数の職業の仲間たちがパーティを組んで行動をするのだから。



「(鎧姿のオスティンが、うんうんと頷いている)」



 なので、盗賊が戦闘でダメージを与える場合、攻撃手段については職業スキルよりも武器スキルが中心となる。

 勇者や魔剣士と違い、効果的な職業スキルがないんだから仕方ない。

 あるもので戦うしかないのだ。



「距離を離したガンゼイオー選手、ゆっくりと手を開いていきます。

 その手に、私でも目に見えるほどの濃密な力が集中しています!」



 武器スキルの習得には、キャラごとに設定された素質と、武器の熟練度が必要になる。

 アズサによる鬼のいたぶり……試合の報復行為……もとい、地獄の特訓のおかげで熟練度は結構上がったが、それでも『結構上がった』程度でしかない。

 少なくとも、強キャラによる必殺技を打ち破れるような大火力は、今の熟練度で覚えられる武器スキルには存在しない。



「ありゃぁ飛び切りの大技みたいだな。

 会場の結界、大丈夫か?」



 レベルだけは一気に上がったが、それに見合うだけの戦闘用スキルは習得不可能だし、そもそも汎用的な武器スキルは戦闘職の職業スキルより数段弱い。

 オレの攻撃スキルは、弱いままなのだ。

 だからこそ、戦闘中もほとんど一刀か刺突しか使ってなかったんだしな。


 だが──


「だっ、大丈夫だと思います!

 スタッフさーん、念のため結界の強化をお願いします!」



 ガンゼイオーを見据えて、こちらも数歩下がり。


 構えていた木刀()を、腰につけた鞘に納める(・・・・・)



「ハルトよ、準備は良いか!」



 静かに深く、目を閉じて息を吐き、吸う。

 ゆっくりと、数度の深呼吸を繰り返す。


 腰を落とし、地につけた足に力を込め。

 鞘を左手で握り。

 刀の柄を、右手で握りしめる。



 静かに目を開き、両手に溜めた力を解き放とうと構えるガンゼイオーを、真っ直ぐに見つめ返す。

 準備が整ったオレは、ゲームで『とどめの一撃』を放つ時に表示されていた、慣れ親しんだキーワードを叫ぶ!


「フィニッシュブロー、OK!」


「この一撃に全てを込め──ゆくぞ、ハルトよ!」


 オレよりよほど饒舌になったガンゼイオーに、心の中で小さく笑いながら。




 木刀の鞘と柄を握る両の拳に、力を込める。


 ガンゼイオーの両腕の筋肉が膨れ上がる。


 オレの両足が地を蹴り、瞬く間もなく眼前にガンゼイオーが迫り




雄闘心滅死(おとこめし)っ!」


 突き出されたガンゼイオーの両腕から放たれる『とどめの一撃(フィニッシュブロー)』、緋色の閃光の中、




「肆式・椿!」




 オレの鞘から迸った木刀による居合(・・)が、その閃光に真っ向からぶつかった――


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