164 女王の口調がですきゅんなんだけど、そんなもの気にならないくらいヤバさが止まらない
観客の反応は、概ね2つに割れたと言っていいだろう。
先ほどまでの熱気をそのままに、突然あらわれた同盟国の女王という展開やその美しさに歓喜するものと。
その美しい女王が、真顔で『女王なのですきゅん』とか言い出して、どうしたらいいかフリーズしているものと、だ。
そんな観客席の反応など知ったこともなく、ゼイニドラ女王カナミエは言葉を続けた。
「本来は開会式で挨拶すべきところでしたが、到着が遅れたために決勝直前での挨拶となりましたこと、まずは謝罪致しまですきゅん。
わらわも槍を握るものとして、本大会の観戦を心より楽しみにしておりまですきゅん。
本日行われた3試合、準決勝と3位決定戦も非常に素晴らしく、また手に汗握る想いで楽しませていただきまですきゅん」
語尾さえなければ、普通に来賓の挨拶と言っていいだろう。
だがその語尾が全てを台無しにしている。観客どころか、実況の女の子までちょっと目を反らし気味である。
あ、実況の子を見てること気づかれた。小さく手を振りにこっと笑ってくれるの可愛いです。
うん、お互いに現実逃避ですね!
なんて余計な事を考えていて、女王への反応が遅れた。
いや、相手は貴賓席にいる王族だし、反応が遅れなくてもオレにはどうすることもできなかったんだけど。
「この後行われるのは、決勝戦ですきゅん。
その決勝戦をより劇的で華々しく、また同盟国の女王として優勝者の健闘を最大限たたえるために。
ゼイニドラ女王として、わらわはここに宣言しまですきゅん!」
女王の突然の発言に、貴賓室から緊迫した空気が流れだす。
だが誰かに掴まり止められるより早く、女王は続く言葉を口に出してしまった。
「この大会の優勝者を、ゼイニドラ女王カナミエ=ファード=ゼイニドラの、婿として迎え入れまですきゅん!!」
一瞬の沈黙。
その後、困惑のざわめきが観客席に広がっていく。
(おい、今あの女王様なんつった? 婿って言ったよな)
(え、じゃあ優勝者は王様になれるってこと? なんだそりゃ、そんなの聞いたこともねーぞ!)
観客席からそんなざわめきが広がり始める中、女王カナミエは素早く次の行動にうつった。
「挨拶は終わりまですきゅん。
さあ実況の子、早く試合を始めてくださいですきゅん」
「え、あ、はい!?
ええっと、ご挨拶、ありがとうございました!」
急に振られて慌てつつ、実況の子が挨拶を締めて頭を下げた。
話が、そのまま進んでしまったのだ。
……え、これどうすんの?
ていうかどうなってんの、なんでおばちゃんがここにいるの?
大会で優勝したら、ガンゼイオーとおばちゃんが結婚しちゃうの?
そしたらオスティンが魔王倒せないんじゃないの、え、それほんとにどうなっちゃってんの!?
おうじょ「な、何なのですかあの宣言は! 駄目です! 絶っ対に、認められません!」
じょおう「うふふ、わらわの挨拶はもう終わったのですきゅん。さあ、一緒に試合を観戦しましょうですきゅん!」
おうじょ「きいいー、駄目ったら駄目なんです!
それならわたくしも挨拶します、勝敗とかどうでもいいのでハルト様と結婚します!」
殺メイド(万が一ハルト様が勝利すれば、ゼイニドラ女王の婿に……害虫が居なくなって喜ぶべきか、それとも一国があのような変態に乗っ取られて世界の危機を憂うべきか……悩みますね)
おうじょ「ううー、うううー! ハルト様、頑張って! でもわたくしのために、優勝しないでくださいませ!」
じょおう「うっふふふ、ゼイニドラを勝手に抜け出して良かったですきゅん、これでようやくわらわにも春が来るのですきゅん! るんるーん♪」