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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第二話 武闘大会の準決勝まで勝ち進んだんだけど、参加者が濃すぎて美少女感が全く足りてない
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158 攻撃力のない木刀を装備した盗賊なんだけど、炎を纏った大剣相手にもけして折れることはない

 向かい合うことしばし。先に動き出したのは、対戦相手のフェービンだった。

 構えていた大剣を振り上げると、その剣が炎に包まれる。


 炎を纏った大剣を振り上げ、こちらに駆けこんでくるフェービン。

 小細工や工夫もなく、唸りをあげる大剣が最短距離で一直線に振り下ろされた。


 およそ、盾や鎧といった防御も意味をなさぬほどの一撃を、しかしただの木刀が正面から受け止める。


「な、なんだと!?」


 驚きの声をあげるフェービンだが、こちらからすれば当然のシステム処理。

 ゲームにおいて、戦闘中に武器や防具が壊れることはないのだ。もちろん、木製だからって燃えだすこともない。


 システムに保証された行動ならば、ゲーマーとして不安はない。

 木刀の耐久性など考えもせず、力任せに大剣の一撃を振り払って返す刀を横薙ぎに振るう。


 やや大げさに飛びのいたフェービンに、追撃はせず木刀を構え直した。


「なんだその木の刀、なんで俺の一撃を受け止められるんだよ!」

「きっと、最高性能なんじゃないか?」


 フェイルアードの武器屋で100Gで買える木刀です!


 分類としては、ファッション用の見た目装備。刀適性がなくても誰でも装備できるかわりに、攻撃力は驚きの1です。

 それでも武器としての分類はきちんと『刀』なので、刀スキルは発動できる。

 誰でも装備可能・分類は元の武器と同じ。見た目武器共通の設定だな。


 三馬鹿(サントス)が木刀を持ってたのも、特殊武器の適性のないあいつに装備できる刀が木刀しかないからだと思われます。

 いやほんと、あいつなんで木刀なんか装備するんだろうね?

 東方に修学旅行にいったチンピラかな。


「見た目で武器をあなどってたのはこっちか、すまんな」

「いえいえ、謝られると心苦しい」


 だって、攻撃力のない木刀だからね!

 もちろん木刀であれば全て攻撃力1なので、木刀の中で最高性能であることには変わりないけれども。一位タイということで、嘘はついていない。


「そう言えば、前の試合では相手の槍を斬り飛ばして勝ったんでしたっけ?」

「まあ、な。

 大量生産の支給品だったようだ。来年は私物を持ってくるって言っていたぞ」

「経費の問題か……世知辛いなぁ」


 モブ同士の戦いでは、システム的な武器の頑丈さよりも物理法則が有効ってことか。


……あれ?


「さあ、続けていくぜぇ!」


 かすめた疑問に考えを向ける暇もなく、フェービンが炎に包まれた大剣を振り回して襲い掛かってくる。


 一太刀、二太刀と剣と刀を打ちあわせ、数瞬のつばぜり合い。

 眼前に迫る大剣から発する熱に、額から汗が垂れる。


 至近距離でのにらみ合いから、互いに力を入れて間合いを離す。


 間合いを離して着地したフェービンは、その長大な剣のリーチを活かし、大剣を水平に構えて大きく横薙ぎに振り回してきた。

 それに対し、こちらは大きく一歩踏み込んで武器の振り始めを木刀による突きで止め、反発しあう力に跳ね上がった木刀をすぐさま相手の左腕に叩きつけた。


 痛みに息を漏らし大剣を握る腕が下がったところで、今度はフェービンの胴体を木刀で一閃。

 ステータス任せの怪力で鎧を力いっぱい叩き相手の体勢を崩したオレは、慌てず焦らず木刀を下段に構えた。

 体勢を崩されたまま、突っ込んでくるだろうオレを迎撃しようとして右手だけで振るわれた大剣は、しかし反撃を予測し直前で急停止したオレの目の前で空を斬り。

 大剣が通り過ぎた後の大きな大きな隙をつき、伸びきった右腕を握りしめた木刀で力いっぱい斬り上げる。


「ぐおっ……!」


 強く腕が跳ね上げられたが、そこで大剣を手放さなかったのは大したもんだ。


 いやでも、防御が間に合わないなら剣を手放して腕で防ぐべきだったのかな?

 そんな風に、相手の行動についてどうでもいい考えをよぎらせつつ──


 跳ね上げた腕をかいくぐって、オレの木刀の先端がフェービンの首に触れた。


「続けますか?」


「……はあ。

 いや、これで駄々をこねるほど落ちぶれちゃいねぇ。降参するよ」




「──あ、ああーっと!

 なんということでしょう、あのゾンビが!

 レベル1で予選を突破し、大衆の面前で妹のおねしょを暴露し、黒い馬王と呼ばれたゾンビがっ!!」


「悪意! 呼び方が悪意過ぎる!」


 あと観戦エリアで、アズサが顔を覆ってしゃがみこんでる!

 なんという酷い流れ弾、いったい誰のせいだ!(原因:兄……いや、実況のせいだ)



 居たたまれない空気のアズサから目を背けて突っ込みを入れたオレに対し、実況の女の子はこちらを向いてにこっとウインクを飛ばしてくる。


 オレに対する発言と裏腹な笑顔に、思わず言葉に詰まらされる。

 くっ……か、可愛いじゃないか……!?


 気勢を削がれて言葉に詰まったオレにもう一度微笑むと、再び観客に向けマイク(ただの棒)を振りかざす実況。


「前大会準優勝者にして第二シード、あの火剣のフェービンを下し!

 ゾンビのハルト選手の勝利です!


 決勝進出、決定ーーっ!!」



    - - -



【 武闘大会 試合結果 】


・ 準決勝 第一試合

 フェービン=アルメイダ VS ハルト


勝敗結果:フェービンの降参により、ハルトの勝ち

試合時間:6分53秒


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更新乙 盗賊はゾンビにクラスチェンジした!? つまり僧侶の天敵!!! お仕置き効率向上!特効効果付きwww
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