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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第一話 盗賊はレベル1じゃなくなったんだけど、強敵ひしめく武闘大会は一筋縄ではいかない
165/234

155 準決勝進出者が出そろったんだけど、紛れ込んだモブ盗賊のゾンビ感が半端ない

 相手の魅力に惑わされることもなく、一歩も動かずに対戦相手を気絶させた開催国推薦枠選手(オスティン)

 二回戦に引き続き、圧倒的な格の違いを見せつける試合運びで危なげなく勝利を決めた。



 それから舞台の片づけと準備が行われ。

 舞台上の実況の前に、4人の選手が並び立つ。


「先ほどの開催国推薦枠選手の勝利により、三回戦の全試合が終了しました!


 シード選手をあわせ、全541名の参加選手の中から、準決勝に進出する4選手はこちらです!」


 実況の声にあわせて、フード付きローブをばっと脱ぎ捨て──


……脱ぎ捨てようとしたけど、引っかかった。これは恥ずかしい!

 他の三人が格好良く決めた中、オレ一人だけ慌ててローブをちゃんと脱ぎ、丸めて舞台の横に捨てた。


 観客席からも失笑が漏れ、貴賓席ではミリリアが楽しそうに微笑んでいた。美し過ぎて震えます。


 あと、ガンゼイオーを挟んで向こう側の開催国推薦枠選手が、すっごいぷるぷるしてるのが見えます。

 畜生オスティンめ、笑い転げてしまえ!




 そんなオレのミスには取り合わず、実況の女の子が選手を一人ずつ紹介する。


「一回戦で若き騎士隊長を下し、一番乗りで準決勝進出を決めたのはフェービン=アルメイダ選手!

 前回準優勝の雪辱を果たすため、火を噴く大剣が全ての敵を両断します!」


 荒々しい体躯に男臭い笑みを浮かべ、背負った大剣を構えて炎を纏わせるフェービン。

 一歩踏み出して空気を一閃すると、武器を掲げて観客席に己の姿を見せつける。


「御託はいらねぇ、優勝するのは俺だ!」


 シンプルゆえに力強い雄たけびに、観客はより一層沸き上がった。

 そんな様子を満足気に見回すと、フェービンは再度剣を振るって炎を消し、剣を背負った。

 それから、剣の柄を握りしめたままで、堂々とこちらに視線を向けてくる。

 この剣で、真っ二つにしてやるとばかりに。


……ところで実況さんや。

 対戦相手を両断したら、相手が死んじゃうから駄目なんじゃない?

 両断されても死なない選手は、ゾンビって異名になっちゃうらしいですよ?




「二回戦、まさかの生き別れ兄妹対決を制したのは、ゾンビの異名を持つ兄・ハルト選手!

 大会史上、最も低いレベルと最も高いレベルの記録を持つダークホースの存在に、試合の展開は全く読めなくなりました!」


 オレの内心の突っ込みが聞こえたかの如く、わざわざオレのことをゾンビ呼びしてくる実況。

 一瞬、ゾンビのモノマネでもしてやろうかと思ったが、滑ると痛々しいのでやめておく。


 ゾンビがんばれー、と観客から歓声があがった。

 応援……されてるんだよね、これ。いじめじゃないよね?

 あと、すけべとか変態とかも聞こえます。こっちは応援じゃないと思う!


 あ、今叫んだそこの観客!

 お前だよ、お前。アズサは嫁にやらんぞ、メイデンとしてオスティンと共に世界を救ってもらうんだからな!

 あとアズサのスリーサイズも教えません。と言うかどさくさに紛れて何を叫んでんだ、あの観客。


 アズサには聞こえてなかったようで良かった。こんなところで観客が真っ二つになっても困るからな。


「ハルト選手、コメント、コメント!」


 すすすと寄ってきた実況の子が、オレの肩をつつきつつ小声で囁く。

 せっかく小声で言ってくれたけど、その声は結界の力で会場中に響き渡ったようだ。

 再び観客席から失笑が漏れ、仲間達は笑ったりおでこを押さえたりしている。


 とりあえず、ごめんなさい。


「どこまでいけるか分かりませんが、精いっぱい頑張ります。

 あと、ゾンビじゃないです、人間です」


 無難に済ませたオレの言葉に、なぜか大歓声でゾンビーぞんびーと観客が盛り上がる。

 いや、だからゾンビじゃなくて人間だからね!


 何だか言う程に逆効果になりそうで肩をすくめつつ、軽く手を振ってみせた。

 笑顔で手を振り返してくれるミリリアだけが、オレの癒しでした。愛してます。


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