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ディバイン・セイバー ~ゲーム開始時点で既に死んでいる盗賊Aだけど、ヒロイン達だけは不幸にさせない~  作者: 岸野 遙
第四章・第一話 盗賊はレベル1じゃなくなったんだけど、強敵ひしめく武闘大会は一筋縄ではいかない
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152 武士の居合は全ての物理攻撃を無効化するんだけど、盗賊は声を出しているだけなので音波は物理攻撃ではない

「十二歳の時、お化け屋敷で幽霊に脅かされておしっこ漏らしたーっ!」



 オレの声が、舞台を覆う結界の力で増幅され、観客席の隅々まで響き渡った。


 まあそうでなくても会場中に響くよう、大声を張り上げたわけなんだが。

 響き渡った言葉の内容に、観客席がしーんと静まり返る。


「……なっ、なななぁ!?」


 静かな会場に、狼狽するアズサの声が妙に反響して響き。

 その慌てた顔を見ながら、オレが再び口を開いた。



「その日の夜は怖くて一人で寝られなかったーっ!」


「やっ、やめて下され兄上!」



「夜中に怖くてトイレまで行けなくて、部屋の入口で泣きながらまた漏らしたーっ!」


「ぎゃっ、ぎゃあああ、もうやめてぇぇっ!」


 絶叫とともに、思わず鞘と刀から手を離し耳をふさぐアズサ。


 そんなアズサの様子を見て、観客達も叫ばれた内容が事実であると理解したのだろう、ざわざわと何とも言えない雰囲気に包まれた。



「うわぁ、流石にあれは可愛そうだわ」

「ま、またハルトさんは……」

「あずささん、モらしたの?」


 ちらりと見れば、仲間達はあきれ顔。

 オスティンに至っては、顔を赤くして横を向き、アズサを見ないようにしている。

 あれが、武士(へ)の情けか……



「アズサー、降参するかー?」

「う、ううう、あにうえぇ……」


 泣きそうな顔で、弱々しくこちらを見上げるアズサ。


 ちなみに情報源ソースは、スズナリの家の使用人である。

 ゲーム後半で一通りイベントが終わった後、酒を手土産に持っていくとアズサの昔話を色々してくれるのだ。

 主に、黒歴史。


「まだネタはあるから、大人しく降参してくれ。なっ?」

「こっ、こんなの、拙者が考えてた、兄上との試合じゃないでおりますうぅ!」


 そりゃぁ、まぁ。こんな試合、想像してるわけないよなぁ。


 仲間達からも、観客からも、比較的冷たい視線が降り注ぐ。

 できるだけそれらを気にしないようにしつつ、アズサのそばに歩いて近寄る。


「ちなみに、これで終わらないなら、次は十四歳の秋の話をするぞ」

「……?」


 年齢と季節を言われただけでは、何の話か分からないのだろう。

 仕方なく、オレは口を開いた。


「道場の隅で、誰も居ないと思って使い古した木刀を使っ」

「わあああああ、もうやめてぇぇっ!」


 耳を押さえるだけで済まず、とうとうアズサはしゃがみこんでしまった。


「うっ、うう……うえぇ……

 記憶喪失って言ったのに嘘じゃんっ。

 どうして、なんでお兄ちゃんが知らないはずなのに知ってるのぉ……もうやだぁ……」


 アズサの泣き顔に、流石にちょっと罪悪感が胸に刺さる。


 オレは、手にした木刀をしまうと、無防備なアズサの肩をそっと優しく押し――




 唐突に。


 今まで蹲って泣いていたアズサは、肩を押そうとしたオレの腕を握りつぶすかの如き力で、がっしりと掴んだ。


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― 新着の感想 ―
更新乙 おっ!! まだまだ終わらないやつだ!! 侍よ・・・盗賊は追い詰めればその分どんどん悪意の攻撃が鋭くなるぞwww  そして僧侶の御褒美(説教)ががが
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